もう裏3が出ないなんて……
文・渡邉浩史郎【火曜臨時ライター】2025年1月21日
(余韻)
完
と、ここで終わってしまうことはさすがにできないので、以下が本観戦記の正しいタイトルとなります。
「途切れた記録のその裏で、さらに積み上げられた二つの記録」
第1試合
東家:伊達朱里紗(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
南家:萩原聖人(TEAM RAIDEN / 雷電)
西家:渋川難波(KADOKAWAサクラナイツ)
北家:園田賢(赤坂ドリブンズ)
さて、7年という驚異的な長さで閉じられることとなった園田の裏3初和了りまでの記録。裏裏でも打点的には変わらなかったというのは触れないでおくこととして、目下首位を突っ走るドリブンズはここをトップで終えることができればレギュラーシーズン瞬間最高得点を迎えることができる。
さらには園田自身としても個人MVPへの挑戦権獲得と、天からの授かりものである裏3を和了れた以上、この半荘はぜひともトップを取って、ついでにインタビュー台に立ち上がる権利も得たいはずだ。
【東3局1本場】、裏3を和了って気分はノリノリの園田だが、ここは冷静に愚形リーチのみの聴牌取らず。役アリにいくらでも変化する形であれば、こんなところでリスクは取りにいかない。
そこに飛んできたのはこちらも10連対への記録に挑戦する萩原のリーチ。
形が整っている園田は当然今渋川が切ったに合わせる。
特に違和感のない打牌だが、園田の目はある一点を捉えていた。
(黄色はツモ切り)
親の渋川の両面落としである。見た目良さそうなを払っているように見えるこの河。スライドで偶然そう見えただけというケースもあるが、一応渋川のダマテンのケースもケアしていたという。
「特に行かなくてもいい立場なので、普段だったら渋川さんの押し返しに備えて、萩原さんの現物で渋川さんの無筋を切る選択もありました。」
インタビューで園田はそう語った。その結果がこの渋川の7700への放銃回避である。
ツモ切りリーチが来て小さく頷く。
”ついにノリにノッた男”園田のパーフェクトな半荘であった。
その裏で苦しんだのは10連対チャレンジの萩原。渋川の親マンツモ、伊達の跳満ツモとじわじわと素点を削られて行き……
【東4局】、ドラを使い切るための意志ある手順がツモにマッチしてこの聴牌を入れるものの……
まさかのドラであれば放銃回避。園田の親ダマテンマンガンに呼び込まれてしまう。
さすがに厳しい萩原。そのうえ、こういう時に限って来る手来る手が選択の連続なのだ。
特に顕著だったのは【東4局4本場】。
一気通貫がほんのり見える手牌。萩原の選択は瞬間の間口を広くとる切り。
瞬間に二枚落として安全牌やフォロー牌を持てるピンズのペンチャン・マンズのカンチャン落としもあるが、これが一番普通な一打であろう。
ただし、唯一欠点があるとすればそれは……
ドラ引きの時の形が若干弱いことだ。こういう微妙な裏目を引かされるのが今日の萩原の辛さを物語っている。
ここでの萩原の選択は。から下に伸びればと払っていこうという算段だろう。もちろんから入ればシャンポンリーチだ。
伊達のリーチを受けてもまた選択。伊達は→生牌の→と全て手出し。
が安全度で残された牌なのか、重ね違った牌なのか、はたまたスライドか。どれかは断定できないが、萩原は七対子ドラ単騎の可能性も感じ取ったのだろう。中筋のドラではなくを切ってのイーシャンテンとした。