Mリーグいくさ物語
萩原聖人が背負うもの
文・東川亮【木曜臨時ライター】2025年10月9日
大和証券Mリーグも2卓開催がはじまって3週目、ファンのみなさまにおかれましては、もうそろそろ木曜金曜の新たな楽しみ方が定まりましたでしょうか。
あっちでハネ満が決まったと思えば、こっちの卓では倍満が炸裂。見どころを求めてお互いの卓を行き来するもよし、必死に戦う推しの姿に集中するもよし、見方は人それぞれ

2卓開催で注目ポイントは数あれど、試合に出ればいつだって注目を集めるのが、TEAM雷電・萩原聖人。10月9日第2試合、その背中には、右腕には、多くの人の思いが宿っているものでございます。
第2試合

東家:萩原聖人(TEAM雷電)
南家:白鳥翔(渋谷ABEMAS)
西家:鈴木たろう(赤坂ドリブンズ)
北家:堀慎吾(KADOKAWAサクラナイツ)
東1局1本場。

3巡目、萩原は堀の切ったを鳴かなかった。前局は堀と萩原の2軒リーチが流局、場には自分で出した分も含め、2000点の供託が落ちている。雀頭はなくなるものの4メンツの候補は十分、まずは鳴いて役を確定させ、さっさとアガって供託を回収したくなりそうなところですが、「ケチな点棒拾う気なし」、チャンスと見れば大きく狙うのがこの人の麻雀でございます。

目先で見れば、役がついて手も進むなら、鳴いたほうがいいのかもしれません。しかし、目指すのはテンパイではなくアガリであり、できることなら高く高くアガりたい。ドラのを重ねて打点がアップすると、

最後のを重ねてテンパイ、リーチ
ドラドラは満貫スタートの大物手だ。
さあさあどうなる、雷電ユニバースはアガリの成就を願い、そうではない麻雀ファンも、一見損に見えた選択の行く末を見守る。

しかし敵もさるもの、一発目に安全牌がなかった白鳥は、ドラそばで孤立のを打ち出した!手の内全部が危険牌、だったら真っすぐアガリに向かう。赤だからって、ひよっているやつはいねえよなあ!?

そして白鳥テンパイ、しかし
はすでに山になく、アガリは萩原と
のめくり合いだ!その数、実に全山の4枚。どちらがアガってもおかしくない、まずは一つの山が来た。この戦いの行く末やいかに・・・

勝ったのは萩原だ!
パチンと小気味よい音を立て、萩原がツモ牌を手繰り寄せた。裏ドラはサービスの4000は4100オール。仕掛けたとて、果たして2900をアガれたかどうか。そう考えると、最高の結果に結びついた中スルーだったと言ってもよいのでしょう。
そして東2局は、萩原のハートを感じた1局に。

親番・白鳥がをポン。手の内は
待ちのテンパイだが、それが分かるのは神の目線の視聴者のみ。
トイツの堀はともかく、たろうと萩原にはこの手に幻影が見えてしまう。そう、役満・大三元。
もしでロンと言われたら、最悪48000点。
いち早くこの試合からの脱落を宣告されてしまうようなものだ。

それが分かっているからこそ、萩原はこのテンパイをダマテンにした。タンヤオ赤ドラの待ち、普通だったらリーチをかけていそうだが、しかし今は普通ではない。

次巡、そんな萩原の手に鬼の子の。
これを止めるためのダマテン、と言えば聞こえはいいが、果たしてこれを止めてもトップを取れるのか。

萩原の耳にはこのとき、仲間の声が聞こえたと言います。Mリーグスタジオは試合会場と控え室で階層が違い、防音もバッチリですから普通は声など届きません。しかし、仲間の思いは壁をも貫く。そしてなにより、ファンが見たい萩原聖人は、ここで賢く立ち回るより、強く激しく前に出るんじゃないのかい!?

これを蛮勇と笑うならば笑えばいい。そもそも、こんな1枚切れのがどれくらい当たるっていうんだ?萩原の
切りリーチからは、そんな声なき声が闘志となって立ち上っているかのよう。

このリーチは白鳥のアガリにかわされてしまいますが、それでもユニバースにとっては胸のすく攻めだったはず。こうした姿勢が、ファンの胸を打つものです。

しかし、萩原の行く手は決して順風満帆ではなかった。東2局1本場で2600は2900をアガったものの、その後はたろうや白鳥、堀の攻勢を受ける展開が続き、オーラスでは2着目に後退していた。ただしその差はわずか、萩原が狙うのはもちろんトップ。

この局で先制をしたのは白鳥。タンヤオチートイツでテンパイし、一発ツモか裏ドラ、あるいは赤をツモればハネ満、ラス目から逆転トップということで、思い切っての待ちリーチだ!

白鳥に打ち込めば、誰もがラスを覚悟の状況。特にトップ目のたろうは無理をしません。こっそりテンパイしていたがすぐに現物を打つと、

堀がチー。堀としてはこの局、オリてはいられない。

そして最終盤、萩原もテンパイします。待ちは自分の目から3枚見えの、役はなく、巡目も少なく、出ていくのは無スジの
。たとえ通ったとて、リーチをしたら親の堀も連荘を諦めて無理して前に出て来なくなることも考えられ、そうなれば構図は白鳥と一騎打ち。そして流局しても、3100点差のたろうとは2人テンパイでは逆転しません。ここでの勝負はトップ率とラス率、はたしてどちらが上がるのか。

萩原の決断は、テンパイ取らずの暗刻落とし。親の堀がまだ粘っていることから、次局の可能性に懸けます。もしかしたら、この決断がこの試合最大のポイントだったのかもしれません。

実際、萩原の待ちのは全部持たれていて山に残っていなかった。