打倒、軍師
ルーキーたちがMリーグの猛者に
宣戦布告
文・虫かご【金曜担当ライター】2025年10月10日
Mリーグ 2025-26シーズン開催16日目。麻雀LIVEチャンネルではこの4チームによる対局が組まれた。
第1試合

東家:下石戟(BEAST X)
南家:勝又健志(EX風林火山)
西家:逢川恵夢(EARTH JETS)
北家:阿久津翔太(KADOKAWAサクラナイツ)
風林火山、そしてMリーグを初年度から牽引してきた勝又に、今シーズンから新加入したルーキー3選手が挑む構図。スタートダッシュに成功し、トップに君臨し続けている風林火山だが、直近3戦はいずれも4着。チームの大黒柱で嫌な流れを断ち切りたいところだ。
また、サクラナイツはこの日チームPV(パブリックビューイング)を開催。チームメイトの岡田に加え、サクラナイツの黎明期を支えた沢崎誠プロも見守る。日本プロ麻雀連盟の大先輩でもある沢崎に、良い報告を届けたい。
いよいよ選手入場、と思った矢先、珍しい場面が訪れる。
Mリーグアンセムのなか登場してきた勝又。いつものように浅めのお辞儀を済ませてそそくさと卓へ……と思ったら、いきなり右方向へ歩きだしたではないか。

今季から導入された2卓同時開催日では、LIVEチャンネル、いわゆる「黒卓」の選手は入場して左に進むことになっている。Mリーグも8年目になる最古参の勝又。確かに従来の「白卓」であれば、南家の選手は右に進むのが常だ。染みついた癖に体が従ってしまったか。
結果的に、一度カメラの画角から完全に外れて、大回りでまた戻ってくるというシュールな入場になった。

的確な読みが光った下石
気を取り直して、対局を振り返っていこう。
序盤は細かい和了の応酬が続いた中で、大きく局面が動いたのが東3局。逢川がのポンに続き、
もポン。トイトイやホンイツを見据えた思い切りの良い進行で、前に出る。

これを受けた下石。を持ってきた場面で、ドラの
を先に処理した。試合後のインタビューでは、四暗刻や
を使ったリーチに向けて育てていく構想だったと振り返った。

その後、逢川はもポンして
と
待ちのテンパイ。

下石も一度待ちのチートイツでテンパイしたが、次巡ツモってきた
と入れ替えてリーチを敢行した。

これをしっかりとツモって2000-4000。的確な読みで競り合いを制し、大きな和了となった。

勝負所で屈しなかった逢川
下石が一歩リードするも全員にトップの可能性がある状況で迎えた南1局。逢川が第一ツモで役牌のトイツ3つを手中に収める。

親番の下石が早々にを仕掛け、連荘にむかう中、逢川は軽快に
をポン。さらには、2巡目にリーチを敢行した阿久津の宣言牌である
も仕掛け、
と
待ちのテンパイをとる。

リーチをかけた阿久津ものカン。一気に場が沸騰する。

阿久津に和了が生まれれば、裏ドラが2枚めくれる状況。高打点の和了が生まれかねない中で、逢川が強烈な押し返しを見せる。
巡目の早いリーチで情報量が少なかったことも理由となったか。に続き、
もプッシュ。

最終的にはをツモって2000-4000は2100-4100の和了を決めた。

シーズン序盤から三浦、HIRO柴田が思うように波に乗れないなかで、ここまで全連対とチームを牽引する逢川。後方から追いかける試合展開でも、チャンスの場面で見せる鋭い攻撃がここまでの好成績につながっているのだろう。
冷静な2mチー、価値ある1500
他方、冷静な副露判断が光ったのが阿久津だ。3着目で迎えたオーラス南4局。上を見据えて、連荘が最低条件として課される場面だ。ただ、開かれた手牌は決して良いとは言えない。

そんな中、阿久津は7巡目に逢川が打ったを両面でチー。

場に一枚目のだったが、間髪入れずに声をかけた。巡目に対する手牌の完成度が、ほか3者に比べて後手を踏んでいると見たか。解説の朝倉康心プロも、速度感の見極めを賞賛した。

たしかにこの場面を俯瞰で見ると、ほか3者の手が整っている。実際この後も、逢川、下石と連続してイーシャンテンになり、勝又も順調に手が伸びていく。さらに、勝又が第一打にを打っているとは言え、萬子が高い場況だったことを考えると、あの速度で「チー」の発声を出した阿久津がかなり冷静に打てていることが分かる。
この鳴きから順調に手が伸び、最終的には下石から1500を直撃した。他家に先手を打たれてもおかしくなかったことを考えると、点数以上の価値がある和了だ。

そして、この連荘がきっかけとなり、次局には逢川から12000を直撃。一気にトップ目まで見える位置まで上昇したのだった。