危険牌の先切りが呼び込んだ
勝利の一打
【A卓】担当記者:喜多剛士 2025年10月11日(土)
気がつけば、麻雀最強戦もグループリーグ第9戦。最初に発表されたカードのうち、今回の対局で4分の3が消化されることになる。長い戦いの中盤を越え、今週も、卓上に火花が散る熱戦を期待したい。

「東大式麻雀」井出洋介
春先の入院で一時は体調が心配されたが、9月の「世界ウェルネスマージャン大会 in 広島」では元気な姿を見せてくれた。理論と経験を武器に、冷静な打ち回しで知られる井出。無事の出場に安堵しつつも、勝利でファイナルへの道を切り拓きたいところだ。

「麻雀サイボーグ」小林剛
Mトーナメントでは、麻将連合の代表として奮闘。「自分が勝つことで、団体からの出場枠を広げたい」と語っていた。今年の麻雀最強戦は同団体からの出場者も増え、心強い布陣となった。冷静沈着な打牌と精密な読みで知られる小林。団体の誇りを背負い、結果でその存在感を示したい。

「卓上の暴君」瀬戸熊直樹
麻雀最強戦2連覇の実績を誇る瀬戸熊直樹。今回の師弟対決にあたり、「伊藤さんとは鳳凰戦で戦いたい」と語るなど、大舞台での再会を強く望んでいた。その願いは、麻雀最強戦の舞台でついに実現。圧倒的な打点力と勝負勘を武器に、卓上でその実力を示せるか注目が集まる。

「死神の優」伊藤優孝
「確率通りに打っていれば勝てるというものではない」そう語る伊藤の打ち筋は、常に相手の裏をかく。冷静さの中に潜む大胆さが、試合中に驚きの選択を生むことも。今回もその“死神の一打”が炸裂するか、注目だ。
東1局

井出は第1ツモでを引き、いきなりイーシャンテン。静かに始まった局面だが、すでに勝負の香りが漂う。ダマテンで構える井出が、もし平和ドラ1を聴牌したらどう動くか?その選択に注目が集まる。

4巡目に三色同順の変化で残していたに
を引いて678に照準を絞る打
。
が先に埋まって役無しのカン
待ちでの立直を嫌い、手役を育てる構え。井出らしい、勝負と美学の両立を目指す手組が光る。

しかし、先制したのは親の瀬戸熊。を引きれてカン
聴牌。 役無し愚形はダマテンに構える印象のある瀬戸熊だが、今回はドラ1。ドラ搭子が残る形に迷いはなく、力強く立直を宣言。

次巡、瀬戸熊がを暗槓。新ドラが
となり、出アガリなら9600点に打点が跳ね上がる。場の緊張が高まり、誰もが息を呑む。

追い付いたのが井出。を引いて三色同順にはならず
待ちの聴牌。
ならタンヤオ、
なら役無し。役ありならダマテンに構えたはずだが、ここは勝負所。役無しのあがり逃しを嫌い、井出も立直に踏み切る。

そして、瀬戸熊がを掴み、放銃。井出の手には裏ドラが3枚乗り、立直裏3の8000点。井出にとって幸先のいいスタートとなった。
東2局1本場

3巡目に瀬戸熊がを引き入れて両面4つで平和ドラ1から三色同順まで見えるチャンスが訪れる。

ここで二度受けのを引いて安牌の
を残すかの判断。 打
で5~8の三色同順を見ながら両面3つの5ブロックに構える事もできるが、ドラ
引きの平和ドラ2の形も逃したくない。瀬戸熊は攻めの姿勢を貫き、打
で目一杯に構える。

瀬戸熊がを引いて打
で567、678の三色両天秤のイーシャンテン。 手役の可能性が大きく広がる。

そして次巡、ツモ切りで三色両天秤の満貫のイーシャンテンをとるか、打
または
の危険牌の先切りで三色同順が不確定になるが受け入れ枚数をMAXにして最低打点立直ドラ1の2600を受け入れるか。 瀬戸熊は打
を選択。負けている状況で打点が欲しい中で安全度とアガリ率を重視したその一打に、瀬戸熊の我慢強さを感じる。

親の小林が立直ドラ1の先制聴牌。待ちは待ち。 場が一気に緊迫する。親の先制に、卓上の空気がピリリと引き締まる。

瀬戸熊も高目で三色同順の聴牌。三色同順の両天秤を維持する
選択をしていたら、この聴牌時に
が放銃する事になっており、瀬戸熊の好判断が光る。 一歩間違えば放銃。だが、瀬戸熊はその一歩を踏み外さなかった。冷静な選択が、勝利への道を切り開く。

瀬戸熊が高目を一発ツモ。立直・ツモ・一発・平和・三色同順・ドラ1・裏1で倍満。
の先切りがなければ3900の放銃が、瀬戸熊の危険牌先切りが成功して倍満ツモとなった。 一瞬の判断が、倍満という大波を呼び込む。瀬戸熊の読みと胆力が、卓上に鮮やかな軌跡を描いた。