元KADOKAWAサクラナイツ「マムシの沢崎」こと沢崎誠。
12月23日の2試合は、マムシの目にどう映ったのか?
1試合目
以前、下石さんについて一回コメントして、そのときはキツいことを言ったんだけど、今日の麻雀の内容は良かったと思う。場をよく見てるし、対応も良かった。今日のトップは滝沢君だったけど、滝沢君が良かったと言うより、HIRO君が悪かったよね。
⬛︎本当に強い人は、他家に考えさせる
HIRO君中盤までは良かったんだけど、点数をどんどん少なくしてから悪かった。
南3局1本場、役牌を鳴いている親の下石さんに対して、ドラの
を外したんだよね。それをポンされてテンパイ。アレを外しちゃダメよね。自分がホンイツ系の手だったんだけど、欲がありすぎるんだよ。雑念がある。
なんでダメかと言うとね、あの時点でトップの滝沢さんとは1万点とちょっとしか差がないのよ。供託も2本あったし、だからHIRO君からすれば、2000点をアガればオーラスに満貫ツモでトップなのよ。ラス前のこの局で、一生懸命高い手を作りに行くのは無茶があるよね。その条件を本人が分かっていなくて、高い手をアガればいいと思っているなら、それはプロじゃないよ、質が悪い。視野が狭くなってる。
親が役牌を仕掛けたところにドラを切って鳴かれて、そこからいろいろ考えて。確かにあの河だと
は少し出そうだったけど、出したら笑えるよね。引退だよ。だから、放銃する価値のある手牌になってないと、あの
は外しちゃダメよ。放銃をしなかったのはまあまあだけど、あんなのは止めて当たり前。外しても、この手はまだぐちゃぐちゃだよ。自分がどっかで遊ぶだけならいいけど、それはMリーグでやっちゃダメだよね。
あの
が通っているところに
を切ったところは、
くっつき聴牌があるからね。そっちのほうが聴牌チャンスがあるってこと。
ポンできれば
単騎の仮テンにもできる。そう言う意味では
切りは
切りよりも質が良いということになるね。そういうところでは頭がいいんだけど、そういうところに思考を使っているから疲れちゃって、変な放銃しちゃうわけよ。この局で
を止めるのにいろいろ頭を使ってるから、脳が疲れるわけよ。それじゃダメなんだよ。麻雀は考えるゲームだけど、考えさせるゲームでもあるわけ。本当に強い人は、他家に考えさせるんだよ。
自分で考えるってのは、楽しくて考えるのはいいんだよ。僕なんかも打牌は全部違うでしょ。意味が違うわけよ。みんなに僕の麻雀は不純だとか言われるけど、でもいろいろな状況があるから、打牌の制約があるわけ。プロとして、考えた方がいいのか、考えさせたほうがいいのか。僕らは普段4回とか6回とか長くやるから、やっぱり考えさせてるほうが得だよなと思うわけ。半荘1回にしても、みんなが迷うほうが自分にはチャンスができると思う。それがプロの思考よ。2000点でOKだって条件は忘れていなかったかもしれないけど、それが選択肢にないってことが良くないんだよ。
⬛︎Mリーガーにはカッコいい麻雀をファンに見せてほしい
滝沢さんはラッキーだったよね。数字を持ってない人が2人いたから下石さんマークで、どっちが上に行くかってことだよね。だから3人全員を見る必要がなかった。
徹底的にマークするのは下石さん一人。下石さんも滝沢さんマーク。そうやってゲームを作っていったから、そんなに考えることはなくて、普段通りの麻雀を打ったんじゃないかなと思う。2人とも麻雀は良かったと思うよ。やっぱり、質が高い麻雀を見るのは楽しいよね。阿久津さんは、麻雀の内容自体はそんなには悪くなかった。悪くないというか、普通だったよね。僕の言う普通とは、プロとしての普通のレベルだよなってこと。だけど成績が出ていなくて、なんでこんなにツイてないんだって思うだろうけど、それは本人が考えて直さないといけないよね。
僕が前回下石さんにキツくいったのは、鳴きの安い手から入ったからかもしれないね。僕自身が嫌いというか、本人が好きだったらしょうがないことなんだけど、Mリーグでね、これから首位争いすると言う人間がやってることとは違うかな。今よりも一回りも二回り上手くならないと、そして麻雀の楽しさをみんなに伝えていく、そういう立場になっていかないと困るよね。
僕なんかはさ、連盟にいるから色んな先輩がいて、いっぱい教えてくれたわけよ。これから言うことは昔話ね。オーラスに平和のみの手をロンって言うとタイトル取れる、そんな状況があったわけ。でも、その人が言うわけよ。「俺、ロンって言えない」って。「天下の小島武夫が『ロンです、平和です、1000点です』って言えない」って言うのよ。だから無冠の帝王なの。タイトルよりも、自分のスタイルを貫くことの方が大事なわけだ。考え方によって違うし、それがいいとも言わないけど、そう言う人もいるわけ。
だから、かっこいい麻雀をファンに見せたい、見せてほしいなと僕は思う。もう自分ではできないから、若い人たちにやってほしい。Mリーグで強い人たちが、色んなスタイルで、色んな勝ち方をしてくれると、見る人が増えてくるよなと思うわけよ。それがあるから僕はキツく言うわけ。だって他に言う人がいないから。だから僕は、麻雀界の悪役だもんなあ。まあそう言うのも好きなんだけどね。
2試合目
この試合は渋川さんがかわいそうだったね。僕が渋川さんのとこにいたら絶対ラスだと思う。久々に女性3人の麻雀を見たけど、やっぱり怖いね。何を考えてるか、あんまりよくわかんなかった。
⬛︎数字を持っている伊達だからできる選択
東1局、伊達さんはカン
待ちのリーチに行ってたけど、今まで数字を持ってる人だからできることだよね。悪い人はできないよね、普通は仮テンだから。最終形とは違うなって印象。
他に気になったのは、
を切って
単騎の即リーチ。これは、
単騎は仮テンとして、2巡くらいすると
引きで、高目
で567の三色への変化があった。ツモ
→打
で三色を確定して待ち変えをするとか、![]()
待ちでダマテンにするか、リーチとするか、またはさらに待ちを変えるか、その後の選択が色々ありそうだったよね。
そこで逢川さんにカン
待ちで追っかけリーチされて一発で引かれたけど、普通だったら![]()
待ちになるところがカン
になって、
持ってきてたら放銃だからね。そこで
を引けたのは、逢川さんがツイてるんだよなあと思ったね。
⬛︎渋川、カッコいいぞ
渋川さんもしっかりしてたね。南2局、ドラの
を切ってリーチって言ったときね。
16700点持ちのラス目、![]()
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![]()
の形で
がフリテン、雀頭になった
もフリテンなんだよね。他家の待ちをマンズの下、5までの待ちだと思っていて、6が当たる可能性はなくはないんだけどすごく少ないと思ってたんじゃないかな。それが計算できてるから、あれはリーチできるんだよね。
あれをリーチして、結果は負けたけども「渋川、カッコいいぞ」と思うわけよ。大したもんだなって。プロは、勝てば「わーすげー」ってなるけど、負け方も大事。渋川さんの負け方は、今日はすごく良かったなと思うし、勝てるチャンスもこれからいっぱい増えてくると思う。今日はたまたま歯車が合わなかった。
⬛︎逢川は女性版多井?
逢川さんは良かったね、最後結果につながったのも良かった。
オーラスの選択は、同じ進め方になってると思う。結果的に、![]()
![]()
はあんまり山にはなかったんだよね。
を暗刻で持たれてて、
も持たれてて。
雀頭が發だったから、ポンして3面張から3面張に渡りができるし、オリることもできて、攻めることもできるからダマテン。
リーチを受けたことで、チャンスを見切ったんだろうね。1巡回してリーチとか、僕はよくやるじゃない?そういう間合いみたいなのも見てるんだよね。だから、逢川さんはいい感覚してるんじゃないかなと思う。
逢川さんはMリーガーになった後に、世界麻雀で会ったんだよね。そのときに、一瞬多井君だなって思ったんだよな。麻雀ではないんだけど。なんでだろう。
あんまよくわかんないんだけど。女性版多井君だなと思った。
⬛︎前回の記事についての訂正
前回の記事について、瑞原さんがチーしてハイテイずらしをしなかったところでツキを手にした、という感じで書いてあるんだけど、そうは言ってないんだよね。
褒めたけどね、あれは違うんだよ。ツキを離した人ってのはわかるのよ。アガリに行かなくなったから「この人はツキを離したな」ってわかるんだけど、誰が拾うかってのはわからないわけ。
どうやってツキを自分に寄せていくんだろうって時に、寄せる方法ってのは基本的には放銃しないこととか、喰わないこととか、そう言うんじゃないのよ。基本的にはアガることなのよ。
僕は「ツキの寄せ合い」って言ってるんだけど、ツキをどうやって自分に寄せようかってことなんだよね。前の記事の訂正は、喰わなかったことがツキを寄せたわけじゃないんだよってこと。あの記事を読むと僕のファンの人たちが「沢崎また変なこと言ってんな」ってなっちゃうけど、僕はそうは言ってないからね(笑)。
ちょっと僕が褒めすぎちゃったんだよね。みんな一発消しとかハイテイずらしとかするから。僕に言わせれば、喰わないなんて普通のことなんだよ。親だったら喰わなくちゃならないけど。親だったら親被りしちゃうから、その差で着順が変わったり条件が楽になってしまうこともあるんで。そういう時は消したほうがいいってことはあると思うけど、通常は食わないから。
Mリーグではそういうのを見すぎてるから、それで褒めすぎたねって思う。だから勘違いさせちゃったかもしれないね。

日本プロ麻雀連盟所属。
2019年、Mリーグに新規参入するKADOKAWAサクラナイツより指名を受けてMリーガーとなり、円熟味のある独創的な打牌の数々でファンを沸かせた。
2022年に大病を患い契約満了となったが、現在も精力的にプロ活動を行っている。














