文・金本晃最強戦実行委員長
麻雀で1億円稼げ
春です。この春から麻雀プロという夢のスタート地点に立った報告をよく目にします。
では麻雀プロのゴール地点ってどこなんでしょう。タイトルをたくさん取って有名になる、Mリーガーになる、最強戦に出る。とにかくリーグ戦で強い人とやってみたい、そんな人もいるでしょう。
でもやっぱり多くの人は、好きな麻雀をとことん突き詰めて、たくさんの人が見ている大舞台で麻雀を打ちそこにファンが沸き、なおかつそれでお金も稼げたら最高なんじゃないでしょうか。
今の麻雀プロで最もそれを実現しているのが多井隆晴です。麻雀最強位でMリーグでも3年連続活躍、さらに麻雀以外でも多くの番組に出演し本も数多く出している、そして確実に麻雀で1億円以上稼いでいる。
そんな多井がどうやってここまでたどりついたのか。
麻雀最強戦という切り口で、ご紹介したいと思います。
最強戦に呼ばれていなかった
2011年、番組としての麻雀最強戦がスタートしました。今からちょうど10年前です。
しかしこのとき多井は出ていません。呼ばれてもいません。
当時すでに大きなタイトル戦でも優勝したりプロとしてはかなり有名だったにもかかわらず。
これは2011年のファイナルに残ったメンバーです。
今活躍していて当時出ていなかったのは多井隆晴と小林剛で、当時は連盟、最高位戦、協会という3団体が最強戦と協力関係にあり、そこに所属しているプロを呼ぶ方針から、RMUと麻将連合の選手は呼ばれていませんでした。また多井が代表を務めるRMUは、連盟を割って出たプロが多かったのもあり連盟のプロが一緒に番組の場で麻雀を打つというのが難しいムードだったのです。
最強戦メンバーのマンネリ化
しかし3団体だけではどうしても選手がマンネリ化してしまいます。
2012年、最強戦実行委員長金本は麻将連合の井出洋介を招聘。
鉄人プロ代表決定戦でヤミテン打法でファンを沸かせた井出はこんな打ち方もあるのかと最強戦に新たな風を吹き込みました。その2年後には小林剛も最強戦の男子プロ予選に出場。優勝しファイナルへ進みます。
この年のファイナルは決勝で小林剛と藤田晋がぶつかり藤田晋の優勝で幕を閉じました。2014年ファイナル。後列左から4番目が小林剛、5番目が優勝した藤田晋。
一方多井はまだこの場には呼ばれてもいませんでした。
2015年 初出場、ライバルに撃沈
しかし翌年の2015年、機は熟しました。
多くの人の尽力により麻雀番組を一緒にできる体制が整ったのです。
RMU多井隆晴、最強戦初出場です。
対戦相手は当時最強戦ファイナルの常連、絶好調の瀬戸熊直樹。決勝戦オーラス、勝てばファイナルというテンパイを鈴木優ふくめ三人とも入れ、バチバチにぶつかるのです。
去年の小林剛に続き、最強戦はどんどん面白くなっていきました。こういうのを待っていたのです。
ここでの結果は瀬戸熊の勝ち。最後に2連続一発ツモで大逆転優勝。
最強戦に何年ものブランクがあった多井、かつてのライバル瀬戸熊に最強戦では少し差をつけられた感がありました。(後列左から3番目が多井。観戦記事はここから読めます)
2016年 オーラス悪夢のドラ切り
翌2016年、最強戦実行委員会は団体間闘争を煽ります。
多井は男子プロ代表決定戦因縁の対決に出場。
RMUと連盟が4人ずつ出し合って麻雀で決闘しようじゃないかという大会。
ここでは予選敗退しましたが、同じRMUの阿部孝則が優勝しファイナルへ行ったことを大いに喜んでいました。控室から河野高志と二人で大声が聞こえてきたのを今でも覚えています。
小林剛や白鳥翔、村上淳、鈴木たろうなど多くの強豪プロがいる中で決勝に残ったのは多井隆晴、藤田晋、佐々木寿人、瀬戸熊直樹。
決勝は大変なことが起こりました。8半荘勝負の決勝で多井がいきなり6連勝。番組プロデューサーだったら泣きたくなるような容赦ない勝ち方ですがそれくらいこの時の多井は勝ちに飢えていました。
このルートで最強戦ファイナルD卓へ出場を決めると勢いそのままに勝ち上がり。決勝もオーラスまでトップ、親番なので流局さえすれば優勝というところまでこぎつけます。
しかしーーーーーー
ドラのの切り時が難しかった。
多井は自身で決着ができそうな手になった4巡目に切ったのですが、それが2巡前に北家の近藤千雄がを重ねた直後だったのです。これが敗因となった多井は目の前まで来た最強位という大魚を逃します。
多井「たくさんタイトルをとってきたけど…最強位だけはまだ届かいんだなと…」
2017年 去年の忘れ物を取りに
悔しいファイナルを終えた翌年、多井はさらに技に磨きをかけます。
男子プロ代表決定戦極限の攻戦、南3局で2万点以上の差をつけられたところからメンチンをトップ目から直取りし優勝。
先行リーチの森下は山に6枚残りの両面リーチだったのですがそこに残り1枚しかないカンで勝ったのもすごいですが、この時多井は視聴者への配慮をする余裕も持っていました。
多井「アガった直後カン待ちを全員に分かりやすくするため右の六七八九九の5枚を5ミリだけ下にずらしました。この5ミリってのがポイントです。これ以上ずらすと嫌味になるんですよ(笑)」
この年から多井はAbemaTV(現Abema)で麻雀以外の番組へも積極的に出演するようになり、物の見方が麻雀プロとしてではなく外の世界からどう見られるかを強く意識するようになります。そのことはこの年出した著書「多井熱」でも語ってます。
そしてこの年のファイナル、予選でまたも圧勝し決勝に。
今度こそ最強位を取る、去年の忘れ物をようやく取り返せる。