持てる者と持たざる者の明暗 緊迫の一戦を制した松本吉弘のベストバランス【Mリーグ2020セミファイナル観戦記4/26】担当記者:東川亮

オーラス、親番は勝又。

アガリはもちろんできるだけ高打点がほしい局面にあって、ジュンチャンが見える手牌をもらう。

4巡目にしてすでにイーシャンテンだ。

しかし、先手を取ったのは内川。

【1マン】待ちの七対子で、リーチを打つ。

アガれば2着以上の手で、風林火山はもちろん、雷電としても寒い。

勝又は瀬戸熊の切った【1ソウ】をチー、【1ピン】片アガリのジュンチャンテンパイを取る。

苦しくても、とにかくテンパイしなければ始まらない。

 

ツモ【7ピン】で選択。

【1ピン】待ち続行か、

【8ピン】でのみアガれる【7ピン】【8ピン】待ちへの変化か。

見た目枚数は【8ピン】の方が多いが、リーチに対して打たれる可能性は現状【1ピン】の方が上。

おそらくそのような判断で、【1ピン】待ちを続行したのだろう。

その後は無スジを連打するが、無情にもアガれない【4ピン】を引いてしまう。

これでフリテンになり、出アガリはできなくなった。

しかも【1ピン】は松本・瀬戸熊に1枚ずつあり、このままではアガリがない。

そこへ引いてきた【1マン】

これで出アガリ可能なテンパイに組み替えられた上、内川の待ちを吸収できるようになった。

勝又はこのテンパイで最後まで戦う腹だろう。

あの牌を引かない限りは。

実況の日吉辰哉、解説の土田浩翔も、その可能性に言及していた。

そして勝又は、待ちを変える唯一とも言える牌を持って来てしまった。

【中】

生牌のドラ。

そもそも打ちにくい上、残せばジュンチャンのみの2900からチャンタドラドラ、符ハネして7700へと打点がアップする。

もちろん、テンパイを崩す選択肢などない。

偶然とは恐ろしい。

勝又の打った【1マン】が裏ドラとなり、内川への12000放銃。

 

勝負事の常とはいえ、最後は持てる者が持たざる者からさらに奪う、そんな残酷な結末となった。

セミファイナル終盤戦、それぞれの思惑が絡み合う一戦を制したのは、攻守にバランスを保ち続けた松本だった。

冷静な押し引きによってアガリをもぎ取り、失点を防ぐ打ち回しは、レギュラーシーズンの活躍をほうふつとさせる。

もちろん、チーム状況が松本を楽にしている部分もある。

その上で、彼自身も自らの置かれている立場や果たすべき役割を理解し、それをベースに戦えているのだろう。

セミファイナルで苦戦していたABEMASだが、金曜日の多井隆晴に続く2連勝を決めたことで、3年連続のファイナル進出へと大きく近づいた。

やはり、このチームは今シーズンのMリーグにおいて、最後まで主役の一角を務めそうだ。

そして、下位2チームの命運や、いかに。

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