東4局、究極の条件戦を象徴するようなシーンがあった。小沼が三色赤赤ドラの満貫、ペン待ちテンパイを入れるも、友添から打たれたロン牌を見逃した。アガって友添の順位を落とすことは、松ヶ瀬・本田を押し上げることになる。それでは相対的に自身の逆転優勝の可能性を減らしてしまうためだった。直後にツモって3000-6000、小沼がトップに立つ。
南2局には友添がリーチのロン牌を本田から見逃し。こちらも、現状首位の松ヶ瀬を楽にするアガリはしたくなかった。
ツモでしかアガれなくなった友添を尻目に、本田がタンヤオドラ3赤のテンパイで追いつき、リーチをかけて友添からハネ満を直撃。本田がトップへと迫る。
南4局1本場、アガればトップの小沼が役なしペン待ちテンパイでツモ。しかし、アガリを宣言するまでに時間を要した。小沼はただトップを取ればいいわけでなく、少しでも点数を稼ぎたい。その状況が、トップ確定のアガリをためらわせた。
1位:小沼翔 +67.3pt
2位:本田朋広 +22.8pt
3位:松ヶ瀬隆弥 ▲17.8pt
4位:友添敏之 ▲72.3pt
最終戦を残し、小沼は10万点クラスのトップ、友添は20万点以上のトップが必須条件。実現の可能性は乏しいと言わざるを得ず、優勝争いの行方は松ヶ瀬と本田に絞られる形となった。松ヶ瀬は本田より上の順位で試合を終えればOK、仮に順位で下回ったとしても本田にトップを取られず、1順位差かつ12400点以内の点差であれば逃げ切って優勝となる。
■第6戦
最終戦、東場では友添の2度のアガリ以外は流局が続き、大きな点数の動きがないまま南場を迎えた。松ヶ瀬、本田の点差もそれほどついてはいない。
だが、南1局1本場では小沼の3巡目リーチに本田が放銃。打点こそ3900は4200だが、少し離れたラス目となってしまう。
さらに次局は小沼がハネ満をツモアガリ。これで自身がトップに立つと共に、本田の持ち点が1万点を割った。
南3局では親番の小沼がアガリを重ねて連荘、逆転優勝に向けて突き進む。しかし南3局2本場、本田と小沼がリーチでぶつかり、小沼が本田に満貫を放銃。これで小沼の条件はダブル役満直撃となり、可能性は事実上消滅した。
オーラス、本田の逆転条件はハネ満ツモ、あるいは松ヶ瀬からの満貫直撃。手の内はホンイツで、ドラなどを絡めれば条件はクリアできそうな形だ。
そこへ、逆転のために連荘するしかない友添が、
待ちリーチで先制する。
だが本田もロン牌を吸収しながら手を育て、満貫のイーシャンテンに。友添がリーチ棒を出したことで、友添からの直撃も条件クリアとなっている。
守り気味に打っていた松ヶ瀬も、ロン牌を重ねて雀頭にして追いついた。待ちはフリテンだが、それでもツモれば勝ち。無スジを押し、勝負にでる。
松ヶ瀬と友添、残るお互いのアガリ牌はが1枚きり。
決着はすぐに訪れた。松ヶ瀬隆弥が自らの手でアガリ牌を、そしてMリーグ入りのチケットを手繰り寄せた瞬間だった。
1位:小沼翔 +67.3pt
2位:友添敏之 +22.8pt
3位:松ヶ瀬隆弥 ▲17.8pt
4位:本田朋広 ▲72.3pt
EX風林火山ドラフト会議指名選手オーディション、優勝者は松ヶ瀬隆弥。貴重なチャンスをものにしたのは、RMUが誇る実力者だった。ドラフト指名をへて正式にEX風林火山の一員となった暁には、オーディションで示した力をMリーグでも存分に発揮してくれるはずだ。
松ヶ瀬プロ、優勝おめでとうございます!
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。