Mリーガーに協会選手が少ないのはなぜ?【文・黒木真生】

連盟ばっかり

8月2日にMリーグ2021のドラフト会議が行われ、以下5名の新Mリーガーが誕生した。
 あと1人「EX風林火山」と契約しなかった滝沢和典プロが「KONAMI麻雀格闘倶楽部」から指名された。
 ちなみに、なぜこんなに多数のMリーガーが誕生したかというと、以下の3名が自由契約となったからである。
 この3人が抜けた分に加え、所属選手3人体制を敷いていた「EX風林火山」と「TEAM RAIDEN / 雷電」が4人体制にするため新たに選手を1名ずつ指名した。
 「EX風林火山は滝沢プロが辞めたので2名を指名することになった。
 というドラフト会議があったのだが、一部のファンから「連盟ばっかり」だというコメントが発せられている。
 ここまでに登場した人物の中で松ヶ瀬プロ以外は全員「日本プロ麻雀連盟」に所属するプロなので、確かに登場人物は「連盟ばっかり」である。
 連盟プロが3人クビになって連盟プロが4人増えたので差し引き1名増えた。RMU所属のプロは1人増えた。それだけなのである。
 で「だから何なの?」という話なのだが、「連盟ばっかり」と言っている人たちとしては「連盟プロがクビになったところに違う団体の人を入れたら気が済む」ということらしい。特に、現状で人数が少ない日本プロ麻雀協会のプロを入れてほしいという意見が多かった。
 その気持ちはよくわかる。私もオリンピックの野球日本代表が発表された際に「阪神から青柳と岩崎の2人だけかよ」と思ったからだ。「広島カープばっかり」とも思った。だから協会ファンの人たちがやるせない気持ちになるのも理解できる。
 が、そもそも前原さんは前原さんであって、藤崎さんは藤崎さんなのである。和久津プロの代わりに東城プロが入ったら、それは連盟1名OUT、連盟1名INかもしれないが、個々人にとってはまったく関係ない。Mリーグの舞台から離れる者と、新たに参加する者。それだけの話なのである。
 和久津プロにとって、自分の代わりに同じ連盟の人が入るから救われるという気持ちはほとんどないだろう。ただ明日以降の(Mリーグ以外の)試合をプロとして頑張る。それだけなのである。
 Mリーグは団体同士の「国盗りゲーム」ではないから、連盟が何人いるから多すぎるとか、どこそこが少ないからおかしいとか、そういった視点で見る必要はまったくない。

連盟が多いチーム

 とはいえ「連盟ばっかり」なのは事実だ。なぜそうなるかというと「そういうチームの選手がクビになったから」である。
 「KONAMI麻雀格闘倶楽部は同タイトルのゲームがあるため、普通に考えたらそのゲームの出演プロと契約するだろう。
 「TEAM RAIDEN / 雷電」もMリーグ発足前から連盟と付き合いがあるだけでなく、監督の高柳さんも連盟プロになっている。
 この2チームは連盟の人を指名するのが普通だろう。
 ただ、同じように監督が連盟に所属する藤沢監督率いる「EX風林火山」は、全員が連盟プロじゃなくなるかもしれないシステムを採用した。成績が悪ければ3名とも自由契約となり、オーディションの上位4名が新たに所属選手となっていたかもしれないのだ。
 今回はオーディションで優勝した松ヶ瀬プロが選ばれたが、本当に1牌の後先が違っただけで、監督のみ連盟員で、選手は全員協会プロということもありえたのだ。
 だからどうということもないのである。
 もちろん、連盟員からすれば「同じ連盟員なのだから、連盟の選手をとってほしいなー」と思うのが普通だろう。互助組織というのはそういうものだからだ。プロ団体というものは、試合をする時は敵で、事業をする時は仲間になるためにある組織である。
 しかし、藤沢監督には連盟所属よりも、はるかに巨大な「テレビ朝日」という所属先がある。そちらの事情を優先しなければならない局面だってあるだろう。
 つまり、世の中そういうものなのである。
 学校の算数みたいに「1+1=2」ばかりではなくて、偶然と必然が折り重なって答えが全然違ったりもする。
 今回だって「EX風林火山」が「負けたら自由契約」のレギュレーションを採用していなければ、たぶん松ヶ瀬プロが指名されることはなかっただろう。連盟プロがMリーガーとして増えただけだったと思う。
 逆に「赤坂ドリブンズ」と「U-NEXT Pirates」が誰かを自由契約にしていたら「最高位戦ばっかり」のドラフト会議になっていただろう。
 ただ、それはあくまでも「だろう」であって絶対ではない。
 何かしら事情があったら、簡単に変わってしまう。その時に、また「連盟ばっかり」になるのか「協会ばっかり」になるのかは、ぜんぜん分からないのだ。

圧力wwwww

 私が毎回笑ってしまうのは「連盟が企業に圧力をかけて」という発言である。本当に圧力がかけられるぐらいに「力」があるなら、私たちはもっと色々な夢を実現している。藤田晋社長にここまでお世話にならなくても、自分たちでちゃんとした世界を作っているはずだ。
 ただ麻雀のことしかできない、いや、それすらもままならないプロ団体が、テレビ局や広告代理店に圧力って…。
 いったいどういう思考回路をしているのかと思ってしまう。
 もしかしたら私の想像力が足りなさすぎかもしれないので、どんな圧力を企業に対してかけたら連盟は優位になれるか、皆さんから募集してみたいと思う。
 誰も応募してくれないとは思うけれど。

もし私が協会員だったなら

 ここから先は本当に協会の人たちに失礼なので、あんまり言いたくはないのだが、何か言わないと無意味な文章になってしまうので、勇気を出して書くことにする。
 Mリーグのドラフト会議があるたびに、連盟のプロが目立ち、協会プロの指名が少ないので「連盟の運営が優秀で協会は無能」みたいなコメントを発する人がいるが、それは違う。ぜんぜん違う。
 別にプロ連盟の会長とか私とかがMリーグのチーム担当者に対して営業をかけたりしているわけではない。こちらから「ええ選手いまっせ」みたいな営業電話の1本もかけたことはないのである。
 なぜなら、そんなことをしてもほとんど無意味だし、ロクなことにならないと経験上分かっているからだ。そもそも、自分が売りたいタイミングになったからといって、急に「買ってくれ」と言い出すのは失礼だし迷惑である。
 ただ、候補に挙がっている選手について相談を受けることはある。それに対して誠実に対応するだけの話で、結果、その選手ではなく、他団体の選手が指名されたということだってあった。
 じゃあどうしたら協会のプロがMリーガーになれるのか?
 普通に、地道に日々の活動をしていても、なる人はいるだろう。すでに魅力的な選手が何人もいるのは周知の事実。さらに麻雀界で目立った活躍をすれば、ほしがるチームが現れるかもしれない。
 ただ、数に限りがある。その分の椅子が空かなければ誰も座れないという問題がある。
 もし、私が協会員だったらどうするか。
 椅子を増やすことを考える。
 団体の中で結託して、Mリーグの輪に入れそうな企業を持ってきて、機構にプレゼンする。そうすれば、おそらく4人とも協会の選手で構成してくれるだろう。
 もちろん、8チームを9チームにするのは中途半端で気持ち悪いから、10にしなければならないかもしれない。
 4年前なら不可能だったが、藤田社長が切り拓いてくれたおかげで、かなりハードルは下がっている。絶対に無理ということはないだろう。
 これが一番手っ取り早いのだが、難しいミッションであることは間違いない。せっかく企業に話をつけても、機構側が「しばらくは8チームです」と言うかもしれないのだ。
 もしトライしてもダメだったら、コツコツ作戦しかない。
・プロ団体日本一決定戦を仕掛ける(俺たちは連盟や最高位戦より圧倒的に強いぜ! ということを証明する)
・自力で何とかなるものにもっと参加する(夕刊フジ杯に多数チームを出すなど)
・「Mリーグ浪人隊」を結成し、Mリーグチームに果たし状を叩きつける
・対局ルールを変える
・勉強会の趣旨を変える
 あんまりよそ様のことにごちゃごちゃ言いたくはないけど、何か提示しないとノーアイデアの揚げ足取り野郎と思われるので、ぱっと思いついたことを箇条書きにした。詳細は質問されたら答える程度にしておく。
 もちろん、私などから言われるまでもなく、協会は協会で面白いことを仕掛けてくれるはずである。別に麻雀プロにとってMリーグがすべてではないだろうし、独自路線をとるのも全然良いと思う。ただ「連盟ばっかりで協会が少ない」というファンの方々へのアンサーとして、私なりに誤解を解いておきたかったので、こんな失礼なものを書いてしまった。
『麻雀番組が10倍楽しくなる本』発売中
  • この記事が気に入ったら
    フォローをお願いいたします!
    最新の麻雀・Mリーグ情報をお届けします!

  • \近代麻雀戦術シリーズ 新刊情報/