文・江嵜晋之介【火曜担当ライター】2022年1月25日
第2回戦
東家:二階堂亜樹(EX風林火山)
南家:小林剛(U-NEXT Pirates)
西家:黒沢咲(TEAM雷電)
北家:魚谷侑未(セガサミーフェニックス)
スポーツの大逆転劇と言われて、何を思い浮かべるだろうか?
近年ではラグビーワールドカップ日本vsアイルランド戦での大逆転劇を皮切りに、国内でラグビーブームが巻き起こったのは記憶に新しい。日本代表の試合がある日は、町の至る所でパブリックビューイングが開催されていた。
少し昔の話になるが、野球ファンであれば「メークドラマ」を思い浮かべる人も少なくないはずだ。
1996年、当時プロ野球読売ジャイアンツの監督だった長嶋茂雄が作った造語で、首位だった広島カープと大差の最下位だったジャイアンツが奇跡の逆転優勝を成し遂げた現象を指して使われた言葉だった。
当時小学生で野球にあまり興味のなかった私でさえ、周りの大人たち・野球少年がよく話題にしていたのを覚えている。この言葉はのちに流行語大賞にも入選することになる。
どんな競技・ゲームでも、逆転劇は見ていて心を打つものがある。
それは競技の理解が深くなくとも、プレイヤー・応援しているファンの姿を見れば競技やその試合にかける気持ちが伝わるからだと思う。
レギュラーシーズンの3分の2が消化され、かつてないほど追い詰められている雷電。
先発を任された本田が16戦ぶりのトップを勝ち取り、
是が非でも連対したい局面で登板を任されたのは黒沢だった。
毎シーズン3桁のプラスを記録していた黒沢だが、
今シーズンは3桁のマイナスに沈み、苦境に立たされている。
しかし今回の登板で、復活の兆しを感じられるシーンがいくつもあった。
東1局
黒沢は先制に成功する。10巡目、待ちでテンパイ。
リーチ平和赤ドラでアガれば満貫スタートの手。
黒沢は道中、自風の(1枚目をスルー)とペン(ドラ)ターツの選択で、ペン残しを選択した。
直後に裏目のを引いてしまうも、その後急所のを引き入れ好形テンパイ。気持ちよく先制リーチに踏み込むことができた。
このリーチに放銃となってしまったのが魚谷。
ペン待ちで追いつき追いかけリーチをかけるも宣言牌ので放銃となってしまう。
魚谷としては愚形残りのやや不満なテンパイではあるものの、手牌に黒沢の現物がほとんどなく、渋々前に出たといったところだろう。
仮に黒沢がを残してペンターツを払っていた場合、黒沢の河にが並ぶため魚谷もリーチはせず落としになっていたかと思われる。
瞬間的に痛い裏目を引いたかに思われたが、結果として残しがアガりへの最短ルートとなった。
魚谷から満貫を出アガり、黒沢が先制する。
そんな黒沢を追撃したのが亜樹。東2局1本場にリーチ一発ツモ平和一盃口赤の跳満を成就させる。
プレイヤー解説として参加した渋谷ABEMASの松本吉弘に「お手本のような手順」と評されたこのアガリにより、黒沢を抜いてトップとなる。
次局、東3局では親番となった黒沢がツモ三暗刻の2,600オールを決め再びトップに返り咲く。
そして東3局1本場、黒沢のファインプレーが光る。
黒沢の配牌。
魚谷の配牌。
亜樹の配牌。
小林の配牌。
黒沢・魚谷・小林はテンパイが早そうな手で、亜樹は愚形が目立つがドラ4の手。
全員が平均以上の配牌をもらっているため攻め合いになる可能性が高く、誰かが放銃し誰かが出アガる展開が予測された。
一番にテンパイを入れたのは小林だった。