ジャイアントキリング
はならずとも
高宮まりが示した
未来への可能性
文・東川亮【木曜担当ライター】2022年11月24日
11月23日、サッカーワールドカップ・カタール大会で、日本代表が強豪ドイツ代表を破る大金星を挙げた。ドイツ代表は過去に優勝4回で実績の差は明白、有力選手が多く、今大会も優勝候補に挙げられている。そんな相手を逆転で下した「ジャイアントキリング」に、日本中が熱狂に包まれた。ABEMAの視聴数は1300万越えと桁違いの注目を集めており、麻雀ファンの中にもこの試合を観戦した方は多いだろう。
翌11月24日、大和証券Mリーグ2022-23の第2試合。他チームの3選手と比べると、KONAMI麻雀格闘倶楽部・高宮まりが現時点で、麻雀プロ・Mリーガーとして残した実績で見劣りするのは事実だ。だが、同じ卓につく以上、条件は互角。勝負を決めるのは過去の実績ではなく、今の打牌である。
第2試合
東家:小林剛(U-NEXT Pirates)
南家:鈴木たろう(赤坂ドリブンズ)
西家:高宮まり(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
北家:勝又健志(赤坂ドリブンズ)
序盤は高宮に厳しい展開が続いた。東1局、わずか3巡で先制リーチをかけるも、すぐに小林の追っかけリーチを受けて、放銃決着。
東2局2本場には4巡目の勝又のリーチに対し、リーチ後にスジになったで振り込んでしまう。
東3局、最初の親番を迎えたときには、持ち点を大きく減らしていた。
そしてこの局でも、小林の4巡目リーチが飛んでくる。ドラが雀頭で打点十分、端にかかった待ちは、すでにが2枚切られているとは言え、まずまず良さげに見える。実際、リーチ時には山に5枚残りだった。
親の高宮の手も、悪くはなかった。だが、リーチと言われてしまった時点で明確に遅れを取っている。
手に現物はなく、何を切ってもロンと言われる可能性はある。だったら何を切るか。
ストレートに、などを切っていく選択もあっただろう。しかし高宮が選んだのは。小林の第1打がで、と持っていたらを先に切る、つまりは持っている牌なので当たりにくい、と読むセオリーはある。実際、小林は第1打でマンズからを切っていた。まずは理で、現状の最悪を回避するルートを導き出す。
この局のポイントになったのは10巡目の東ツモ切りだった。直前に小林が高宮の持つを切っており、他家の攻撃に備えて守備的に構えるなら、ここでを合わせて場に4枚目となる安全牌の東を抱える手もあった。しかしその場合、アガリはほぼ絶望的になる。
アガリを諦めなかった高宮の元にと入り、テンパイまでたどり着く。
高宮はを縦に置いた。タンヤオで、ダマテンでも出アガリできることは大きいが・・・
手牌はソーズ・ピンズとも連続形で、好形に変化する手変わりの種類が多かった。終盤のテンパイでも焦らずに構えたことが、引きによる理想的な待ちへの変化を捉えた。これが最終形、ならば当然のリーチ。
一発ツモ、裏ドラを乗せて6000オール。もちろん、点数を失っていたこともあっただろう。しかしそれ以上に、高宮の攻め返す気持ちを切らさない姿勢が、逆襲の大物手を生んだ。
その後、高宮はさらに加点し、迎えた東4局では7巡目でタンヤオドラ赤のテンパイを入れる。当然のリーチかと思われたが、
ここもダマテンに構えた。このままでも5200、ツモれば2000-4000、打点は十分。ここでリーチと出るよりも、ダマテンでアガリ率を高め、局を進める選択をした。
そこに小林のリーチがかかる。チートイツ、を切って、4巡目のスジになっている待ち。
一発目、高宮が引いた牌は通っていない。オリないなら、ここで追っかけリーチに行く選択をする打ち手も多いだろう。
だが、高宮はダマテンでプッシュ。切りの小林がいることで、ダマテンならが拾える可能性を見たか。
その後、危険牌を引くことなくツモって2000-4000。この場面でリーチと行かず選択の余地を残したところに、強敵相手に持てる引き出しを全て使ってぶつかっていこうとする、高宮の意志を感じた気がした。
しかし、ここから高宮は猛追を受ける。南1局は勝又がとんでもない配牌から、四暗刻にこそならなかったもののわずか6巡でツモホンイツ三暗刻の3000-6000。
南2局は高宮以外の3者が待ちという珍しい一局となり、小林が一発でツモって2000-4000。小林はを切っての待ちとしたが、もし打点を見てを切っての待ちにしていたら、アガリを逃した上に親のたろうへの放銃となっていた。やはり、一筋縄では終わらない。
南4局1本場、高宮はリードこそしているものの、背後に勝又が迫ってきている状況、小林にも射程圏内に捉えられている。手の内はバラバラだが、それでも自風を鳴き、アガリへと向かった。点数状況的にも、自分でどうにかするしかない。
そこに、畳みかけるかのような勝又のリーチ。待ちは単騎と最悪の部類だが、親リーチの効果は絶大。これで高宮も自分都合だけでは打てなくなってしまった。