今、自分にできることを
丸山奏子
決意の闘牌
文・東川亮【代打ライター】2023年3月17日
大和証券Mリーグ2022-23、レギュラーシーズンは残すところ、3月17日の対戦を含めてあと3日、6試合。下位2チームは6位ボーダーまで400ポイント以上離されており、セミファイナル進出争いは、ほぼ大勢が決した。赤坂ドリブンズが自力で可能性をつなぐには4連勝が実質的な絶対条件、さらに他チームの結果も大きく関わってくる。
それはもはや、条件ではないのかもしれない。しかし、初戦を任された丸山奏子は、胸を張って対局に臨む。赤坂ドリブンズの一員として、今、成すべきことを成すために。
仲間と共に、奇跡を起こすために。
第1試合
東家:伊達朱里紗(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
南家:丸山奏子(赤坂ドリブンズ)
西家:多井隆晴(渋谷ABEMAS)
北家:内川幸太郎(KADOKAWAサクラナイツ)
東1局、丸山は先制テンパイから2軒リーチに挟まれるも、無スジを押してテンパイをキープした。ここでオリたところで、アガられてしまってはトップを取ることはできない。
押し切って700-1300のツモアガリ。決して打点的価値の高い手ではない。しかしそれでも、丸山は手持ちの武器で闘い、勝つしかない。この試合における丸山の姿勢が伝わる1局となった。
迎えた親番では、を鳴いて早々にテンパイ。もちろん打点は欲しいが、アガって連荘できるならそれでよし。丸山としては、この親番をどれだけ続けられるかが勝負だ。
だが、そこに内川のリーチが襲いかかる。待ちピンフ赤赤は手応えも打点も十分。
テンパイの丸山が押したに、多井が食いついた。カンチャンで鳴いて赤をさらし、待ちテンパイ。門前なら高打点になる手だが、テンパイしなければどうしたって失点してしまう。ここは妥協し、リーチをかわしにかかった。
次巡、丸山が内川のロン牌をつかむ。
押す理由はある。
大トップに向けてどこまでも加点したい状況で、この親番をみすみす手放してよいものか。
引く理由はある。
先ほどと違い、今回の待ちはペン、決していいとは言えない。そして、親の多井が鳴いて無スジを押しており、おそらくテンパイ、ある程度勝負できる形なのだろう。
丸山の決断は中抜きによる撤退。まず、押したところでアガリの期待度はそれほど高くない。また、ここをしのげばまだトップは十分狙えるが、下手に放銃して大きく失点してしまえば、それも難しくなる。さらに、多井が内川に放銃すれば、ターゲットであるABEMASとのトップラスを作りやすくなる。がむしゃらにアガリへと向かいたくなる局面で、それでも丸山は冷静だった。
決着は内川が多井に2000点の放銃。丸山は無失点でこの局を切り抜ける。
東3局にはとポンして、テンパイではなく単騎に。ホンイツに小三元をつけて自身の打点をマックスまでつり上げにかかる。アガれたときのリターンはもちろん、ツモって多井に親かぶりさせられればベスト。この局は伊達にアガリきられてしまったが、意志のある選択を見せる。
東4局では伊達の先制リーチに3メンチャンで追っかけ、ツモって2000-4000。ついに大物手を仕上げて、大きなリードを奪った。
押すのも引くのも、いずれも覚悟のいる局面。一つ間違えれば手痛いダメージを被りかねないなかで、丸山は東場をトップで終えた。しかしもちろん、このまますんなり行くような相手ではない。
南1局は内川と伊達がリーチでぶつかり、内川が伊達から8000を出アガリ。
個人3連勝中の内川は、後半戦のMリーグにおける主役の一人だ。このままやすやすと終わるような打ち手ではなく、特に北家を残しているのが怖い。直近での急浮上によってMVPが狙えるところまで来ているだけに、チーム状況、個人ポイントの両面において、勝利を強く意識しているはずだ。
次局、親番の丸山としては何が何でも連荘したいところだったが、伊達からわずか6巡目でリーチが飛んで来る。愚形だらけの1メンツでは戦えず、苦渋のオリ。
フリテンテンパイの内川も粘っていたが、ここは伊達がツモって2000-4000、失点を回復する。
伊達は試合開始時点で、個人ランキング首位。いわば、今シーズンのMリーグにおける主役の一人だ。先行逃げ切り、追い込み逆転、さまざまな形で勝ち星を積み重ねており、最重要警戒人物の一人であるのは間違いない。トップ目からわざわざ首位陥落のリスクを冒してまで出場してきたのは、強気の表れとも言える。
南3局は、微差とは言えラス目で親番を迎えた多井が3メンチャンの先制リーチを高目でツモり、2600オール。一気に2着目まで浮上した。
例年200ポイント以上勝つ多井は今シーズン、まさかの大不振に陥った。特に、2023年に入ってからはトップがなく、この時点で3桁のマイナスを記録。この日は自身初のバースデー出場で気分も一新、かつての自分を取り戻そうと意気込んでいる。
残り2局、リードはわずか、相手は強い。それでも今、できることを。