を引いて中スジを切り、フリテンのない待ちになる。
最終盤につかんだで手が止まった。
ここで安全牌を手から切れば、ノーテンで堀のトップはおそらく手を伏せる。
近藤としては、最後までテンパイ維持の姿勢を見せなければならない。
ゆえにをプッシュ、アガリの可能性も残す。
近藤の粘りと押しが最後の最後に瀬戸熊のを捉え、
堀に追い詰められながらもトップを奪い返した。
■第2試合「天真爛漫・山脇千文美」
ここまでMトーナメントに参戦している招待選手たちは、程度の差はあれど、みなどこか緊張しているように見えた。
それだけに、対局場に笑顔で現れる山脇千文美は、特に印象に残った。
彼女は、対局中に笑うのだ。
麻雀において表情を崩すことはあまりよくないとされているが、楽しそうに麻雀を打っている様子を見ると、こちらも少し楽しい気分になってくる。
第2試合は、そんな山脇が主導権を握った。まずは東3局、親番でダブ東ドラ3の4000オールをツモ、抜けたトップ目に立つ。
次局には1シャンテンからを暗槓。ソーズ周りで良い待ちを作るルートもあったが、ここはシンプルにツモ番を一回増やしにいく。
意図を持って残したにがくっついた十分形のテンパイでリーチ。
瀬戸熊の追っかけリーチを受けるもツモって2600は2700オール、さらにリードを広げた。
山脇はただ笑顔なだけでなく、攻めるときは気持ち良く攻めた。
親番が落ちた東4局では、カン3s待ちテンパイで即リーチを敢行。
ダマテンでの手変わり待ちやマンズ・ピンズを生かした好形変化も選択肢に入りそうだったが、
この素直さが一発ツモを呼び込んで2000-4000、トップ目からさらなる加点に成功。
山脇は第1試合でもダマテン5200で手変わりがありそうな役ありカン待ちをリーチしてツモアガリ。この日は積極策を採ることが多く、それが実るシーンも少なからずあった。
今日は何でもリーチをしようと決めていたそうだが、その思い切りの良さも、山脇の魅力の一つなのだろう。
一方で、堀のダマテンでの単騎待ちに対し、つかんだをビタ止めする、というシーンもあった。相手との距離感や気配も、この慣れない舞台でしっかりとつかめていたのだと思う。
初めての試みであるMトーナメント、選手はそれぞれに楽しみな気持ちを抱いていると思うが、この大会を楽しもうとしている点においては、山脇が一番なのではないだろうか。その姿は、見ている側にとっても非常に気持ちがいいものがあると感じた。
第2戦のオーラスでは、ハネ満ツモで山脇を逆転できる堀が、条件を満たすタンヤオイーペーコー赤赤のリーチをかける。
親番の瀬戸熊は、を鳴いてなんと小四喜の1シャンテン。
山にはがそれぞれ1枚ずつ残っており、堀が全てツモ切ることから、テンパイはもちろんアガリの可能性すらあった。
しかし、それらは全て王牌のなかだった。
堀もツモれず流局で試合は終了、近藤も初戦のリードをしっかりと保ち、山脇・近藤の2人が2ndステージ進出を決めた。
近藤のMリーガーとしての完全引退は、少し先延ばしになった。
Mトーナメントの決勝は8月6日、その5日前に、近藤は60歳の誕生日を迎える。60歳を迎えて最初の対局がMリーガー・近藤誠一最後の戦いとなれば、これ以上ない締めくくりである。
夢芝居最終公演は、はたしてここからどんな展開を迎えるのであろうか。
■余談「卓外のニューフェイス」
最後に、少し卓外の話題を。今回のMトーナメントには、選手以外にもニューフェイスが多数登場することになっている。
6月19日の放送では、E卓の実況を日本プロ麻雀連盟の古橋崇志(ふるはし たかし)、F卓の実況を最高位戦日本プロ麻雀協会の浅見真紀(あさみ まき)が務めた。
いずれもMリーグ関連の対局放送には初登場だが、自団体では主戦を担う実況者であり、この日もそれぞれに個性や特長を発揮しながら楽しく分かりやすい放送を届けてくれていた。