字牌のドラをどう扱うか
多井隆晴から勉強しよう
文・東川亮【金曜担当ライター】2024年2月2日
第1試合
西家:鈴木大介(BEAST Japanext)
大和証券Mリーグ2023-24、2月2日の第1試合。
東1局に先制リーチをかけた多井は終局間際に8枚目の待ちをツモ、リーチツモピンフイーペーコードラの4000オールを決めてリードを作る。
その後は放銃なく試合を進め、終わってみれば危なげなくトップを獲得。攻守両面で安定感抜群、できるだけリスクを回避しつつしっかりとリターンを獲得した、多井隆晴らしい一戦だった。
そんな多井のバランスが表れていたのが、字牌のドラの扱い。この試合であった、3局を取り上げてみる。
東4局2本場。
手牌はタンヤオピンフ形で1メンツに両面も雀頭もあり、かなりまとまりやすそうな形。これだけいい手ならばと第1打にドラのを切り出しそうな打ち手もいそうだが、多井はタンヤオに不要なから処理した。
次巡、を引いて良い形が増えたところで2枚切れた切り。多井は特に守備力に定評のある打ち手だが、ここは攻め寄りにシフトしていく。
を引いてさらに手がまとまり打点もアップしたが、ここではを切って少しスリムに構えた。ドラを切れば広さにさらなる好形も期待できるが、を切って鳴かれてしまった場合、ノーガードの打ち合いのような状況にもなりかねない。もちろん自身で重ねてもうれしい牌ということで、ここは手に残した。
こう受けるならギリギリまで引っ張ることも辞さない構えだっただろうが、重なったなら話は別。
1シャンテンの黒沢がをツモ切り、これは当然のポン。
黒沢のリーチ宣言牌を捉え、満貫の加点。を軽々に切らない進行が最高の結果を呼び込み、持ち点を5万点台まで乗せた。
迎えた南1局の親番でも多井の手は序盤にしてかなりまとまっていて、アガれそうではあった。
しかし次巡、多井がツモりながら怪訝そうな表情で卓の様子をうかがう。
黒沢が3巡目にしてポンをしていたからだ。
鳴いたのは場に切られた2枚目の。手の内を見ればホンイツ一直線、アガリを目指すならのポンはごくノーマルなことに思えるが、鳴いたのが黒沢というのが重い。Mリーグファンの間ではもはや常識、黒沢は鳴かずに門前で高打点を作ることに定評のある打ち手だからだ。この仕掛けは、我々視聴者側からすればうまくいって満貫という感じではあるものの、同卓者からはそうは見えていないだろう。
そして多井が引き入れたのは役牌でありドラの。黒沢が高打点を目指しているならば、最も欲しいと思われる牌である。一方で、多井にとって現状では全くの不要牌。
多井も、鳴いたのが別の打ち手だったら切りも考えたという。
しかし、ここはを抑えつつマンズを切っていない黒沢に対して、先にマンズを処理していく。点数を持っているから、親だから、形がいいからとやみくもに攻めるのではなく、守備のバランスも取っていく。
この局は一足先にテンパイを入れていた黒沢が太から出アガリ。多井の手も好形の1シャンテンまで育ってきており、テンパイならも勝負する構えだったそうだが、引かされたの扱いについては、相手までしっかりと見て対応する多井らしい打ち回しだった。
ここまで紹介した2局は字牌のドラを丁寧に抱えていったが、南4局1本場は逆に、第1打で場風のドラを手放した。この局はアガリトップでがトイツ、他の形もそこそこまとまっていて、自力決着も十分に狙える。そういう状況では重視すべきは何よりもアガリ。そしてドラを切るならトイツになっている可能性が最も低い1打目、ということになる。
2打目にドラがかぶってしまったが、これはこれでOK。むしろドラが2枚見えたことで、他家の高打点の確率が下がっているのはむしろ朗報と言える。
、とポンして、真っすぐ1シャンテンまで進む。
次巡、を引いてテンパイ。カン待ちはすでに2枚切られていて目に見えて薄いが、ここはテンパイを取った。アガれる形を維持しておくのは大きい。
トップには満貫ツモ条件の太は、打点も安く待ちも悪い形ながら、何とかテンパイまでたどり着いた。カン待ちは決して良いとは言えず、さらなる変化を探ったかもしれないが、ここはそのままリーチを選択して裏ドラに期待をかける。なお、河にはドラのが2枚並んでしまっているが、多井が序盤に切っていなければ、おそらく手に残っていた牌だった。
多井としては、太への放銃だけは避けなければならない。リーチ宣言牌に合わせる形でを切り、いったんはテンパイを外す。
だが、と引いて、待ちでテンパイ復活。は直前に後がない大介が通しており、安全に切ることができた。