フェニックスの翼は最強戦を優雅に舞う
【A卓】担当記者:虫かご 2025年9月6日(土)
羽ばたけ、セガサミーフェニックス
麻雀最強戦2025、グループステージ4「卓上大乱闘」。A卓に集ったのは、昨シーズンのMリーグ覇者「セガサミーフェニックス」の過去、そして現在を知る4名だった。

はじめに入場してきたのは、日本プロ麻雀連盟の和久津晶。フェニックスには2019-20、20-21シーズンに所属していた。事前インタビューでは近藤誠一の名を挙げ、「現役続行してくれてうれしい。倒してファイナルに行く」と意気込む。

浅井堂岐(日本プロ麻雀協会)は、昨季からフェニックスの一員になった。チームメイトの元太、醍醐も口をそろえて「一半荘の勝負に強い」と評価する中で、期待に応えられるか。

フェニックスカラーのネクタイを締めて登場したのは、竹内元太(最高位戦日本プロ麻雀協会)。一回転して、Mリーグのシーズン中にも見せなかったお茶目なピースサインで登場。月に2回の登山で得たパワーを卓上で発揮したいところだ。

最後に登場したのは、昨季かぎりでフェニックスを離れた近藤誠一(最高位戦日本プロ麻雀協会)。いまやおなじみとなった夢芝居の法被をまとっての入場。昨年の最強戦では、裏ドラ1枚に涙をのみ優勝を逃した。「最高で最強」を再び目指す戦いが始まる。
予想外のトラブル、静かな立ち上がり
対局はやや拍子抜けしたような展開で幕を開けた。親番の元太が牌をあげようとしたところで、卓トラブルが起こったのだ。

実況の日吉さん、解説の梶本さんも「初めて見る光景」と驚きを隠せない。これから始まる戦いに、何かを暗示する布石か、それとも。
「卓上大乱闘」と銘打たれた今回の対局。ただ、その幕開けは静かなものだった。
東1局0本場。改めて積まれた牌の恩恵を受けたのは元太。イーシャンテンの配牌から2巡目でテンパイ。のリーチを敢行し、近藤から2900の和了となった。

放銃となった近藤も負けてはいない。東2局0本場、堂岐が国士無双のイーシャンテンとなったなか、自身から3枚見えていたをダマテンに構え、1000点を和了る。点数こそ低いものの、周囲の大物手を着実に流した。

流局をはさんで迎えた東4局1本場。好配牌をひいた元太が、9巡目にの先制リーチ。第1打で
を切って3面待ちを固定した進行は、解説席に座る醍醐へのリスペクトか。

2巡目でを暗槓し、押し返したい近藤だったが、
を引き入れて筒子の形が広がったところで
が出てしまった。元太が2600の和了となる。

東場が終了した時点で、満貫以上の和了が生まれない静かな展開。4着目の堂岐も通過ポジションまで6200点と、全員に十分な可能性が残された中、勝負は南場に預けられた。
フェニックスの黎明期を支えた和久津の意地
南1局0本場は元太が和久津から1500を和了り、迎えた南1局1本場。和久津が意地を見せる。元太と近藤の和了に挟まれる形で、東場は我慢の時間が続いたが、持ち点は減らしていない。解説席の醍醐も「配牌が悪いときに失点が少ないと、いけるのでは?という気になる」と評した。

ダブが対子の配牌から、早々に
を鳴いて仕掛ける。

さらに、あまりにも嬉しいを引き入れ、
もポン。
のテンパイを入れた。

これをきっちりとツモり、1300-2600は1400-2700の和了となった。

平たかった点棒状況にわずかばかりのほころびが生まれ、トップ目の元太(32,100点)、2着目の和久津(29,500点)の共闘も考えられる状況となった。
最強戦の猛者、近藤の逆襲
しかし、南3局1本場。形勢をガラリと変える和了が生まれる。親番を続行していた近藤。一面子だった手牌が順調に伸び、萬子でイーペーコーや一気通貫も見える手となる。

一方の堂岐も、ドラのを重ねて臨戦態勢。「大乱闘」の名にふさわしいぶつかり合いの匂いが漂う。

先手を取ったのは近藤だった。絶好のを引き入れて、イーペーコー確定で
待ちの先制リーチを敢行する。

対して、・
・
とテンパイする牌は豊富な堂岐だが、思うようにツモが効かない。

その間に近藤がをツモ。この対局でなかなか乗らなかった裏ドラも味方し、4000は4100オールの和了となった。この日初めてと言ってもいい大物手。「やっぱりこういう牌を引きますよね」と、醍醐も漏らす。一発勝負での強さを見せた近藤が、一気にトップ目に立った。
オーラスで光った元太の選択
その後、南3局2本場で和久津が元太から5200は5800を直撃し、南4局0本場では堂岐が小三元のテンパイを入れるも流局。
元太は8000の出和了、堂岐は親番での和了にかける展開となり、南4局1本場へと突入した。

ここで光ったのが元太の選択である。2段目を終えた堂岐の手牌がこちら。薄くなっていたの塔子を壊し、
が対子になった場面である。なんとしてもテンパイを入れたいが、その道のりは苦しく見える。

そこで元太から打ち出されたのがだ。鳴き仕掛けを入れている近藤の現物も抱えていた中で、リスクを承知で生牌の
打ち。試合後のインタビューで堂岐を「僕のポケモンのようなもの」と例えたように、この局面で連荘することの利害が一致している。「鳴かせた」一打と言えるだろう。堂岐が手から
を打った仕草に、
が対子の気配を感じたか。最終的に、堂岐と近藤の二人テンパイとなった。
