どれだけ逆風が吹き荒れようと
渡辺太の心は折れない
文・東川亮【月曜臨時担当ライター】2025年10月20日
渡辺太の成績が振るわない。
ネット麻雀界での抜きんでた実績を引っさげて赤坂ドリブンズ入りした彼は、加入から2シーズンにわたり、前評判通りの活躍を見せてきた。2年連続でポイントをプラスし、特に昨シーズンは個人9位の199.3ptという好成績。安定した打ち回しと鋭い押し引きから、彼が大敗するような姿は、あまり想像ができなかった。
しかし記録をさかのぼると、太が最後にトップを取ったのは、昨シーズンのセミファイナル、4月29日。そこからファイナルで大敗を喫し、今シーズンも5戦して43333、プラスポイントを持ち帰れていない。

しかし、それでもチームの、ファンの信頼は揺るがない。
大和証券Mリーグ2025-26、10月20日の第2試合、太は自身6戦目の卓についた。目指すものは、勝利のみ。

第2試合
東家:石井一馬(EARTH JETS)
南家:渋川難波(KADOKAWAサクラナイツ)
西家:渡辺太(赤坂ドリブンズ)
北家:浅井堂岐(セガサミーフェニックス)
麻雀は何が起こるか分からないが、そうは言ってもこの試合展開を予測できた人はあまりいないのではないだろうか。

小さいアガリを重ねて迎えた東3局。
太はチートイツドラドラの1シャンテンからを暗刻にすると、
ポンから動いた。ドラのダブ
を鳴ければよし、それでなくともトイトイになれば満貫からの大物手になる。

すぐにトイトイのテンパイとなり、安目ながら渋川の追っかけリーチの待ちになっていたをツモってトイトイ三暗刻ドラドラの6000オール、序盤に大きなリードを手にする。

さらに南1局には、この冴えない配牌が、

ズバズバと有効牌を引いてピンフドラ赤の先制リーチとなり、

これを一発でツモって裏裏、4000-8000。トップ目からの大量加点を決める。

さすがにこれは太がトップか─

そんなふうに思ったファンもいたかもしれないが、そこに立ち塞がったのが『魔神』渋川難波だった。

南2局にホンイツ赤の4000オールをツモると、

次局には雀頭なしテンパイから、単騎待ちで即リーチを敢行。

これを受けての堂岐、現物はない。スジもが1枚だけだが、
切りリーチのそばとはいえ、カン
待ちは
からの先切りとは考えにくく、ペン
待ちも自身に
が暗刻なだけに可能性は低くなっている。そして、
を打っても形が完全に崩れるわけではない。

堂岐には、を選びたくなる理由がいくつもあった。

「ストライク!」
堂岐には、渋川の発声がそう聞こえたという。
アガリ形を見て、思わず崩れ落ちる。

リーチ一発タンヤオイーペーコー赤、12000は12300。渋川、2局連続の満貫。

渋川の猛攻は、さらに続いた。
南2局2本場、太は678の三色が崩れたカン待ちで即リーチ。いい加減、この親を止めなければならない。

渋川もフリテン待ちでテンパイ。
ツモならタンヤオに三色もついてハネ満という大物手。

そしてを引くと、タンヤオの役ありテンパイにもかかわらず、
シャンポン待ちで追っかけリーチを敢行した。出アガリ3900は4500では直撃して逆転したとて微差、だったらリーチでマックス打点を狙ったほうがいい、ということか。なんと、こんな中張牌同士のシャンポン待ちが、リーチ時で山に2枚残り。一方で太の待ちはゼロ。

それでも流局の可能性が高かったリーチ対決は、渋川のツモによって決着。裏ドラ表示牌がということで、
はラス牌。リーチツモタンヤオ赤の4000は4200オール。渋川は親番で3局連続の満貫、太との37500点差をあっという間にひっくり返した。

太にとってあまりに厳しい展開。自身は放銃しておらずツモと横移動による結果であり、なすすべがなかったようにも見えるが、太としてはこの一連の流れにおいて、それを阻止できる余地があったのではないかと振り返る。

その場面とは、渋川がマンズのホンイツをツモった南2局。