「AIそのもの」渡辺太が祈る、その先にあるもの【Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 観戦記 10/28 第2試合】担当記者 カイエ

接戦のラス前。
親の中田が、嬉しいリャンメン替わりの【6ピン】【9ピン】待ちで先制リーチ。
前巡ドラの【9マン】を切りダマテンとした。
【8ピン】が場に2枚切られており、一通含みのドラくっつきを残す打ち手も多そうだが、薄い【8ピン】を引き入れ、功を奏した。

8山スタートの【6ピン】【9ピン】を無事にツモあがり、リーチ・ツモ・ピンフに、裏1が大きい2600オール。

この日の中田はリーチ判断がうまくいき、押し引きのバランスも比較的しっかりしていたように思う。手組みにおいて一貫性がなかった局もあったが(東1局3本場のドラ切りなど)、全体的には攻めるべきを攻めるBEASTな姿勢が現れていたのではないだろうか。

南3局1本場

本局はHIRO柴田。仕掛けて3900のところを自力で【白】を暗刻にすると、

ケイテンを目指す太から【5ソウ】が出てデバサイ。【白】・赤・ドラのテンパネは6400点。
トップ目でオーラスの親を迎える。
微差ながらトップだった太は、痛恨のダマテン放銃。ただこの局のケイテンに向かう思考は面白かったので、ぜひ、ないおトンの検討配信を見ていただきたい。
3着でオーラスを迎える。

南4局

いきなりクライマックスにも近い局面から、状況を確認しておこう。

ラス目の小林にさえハネ満のツモ直条件でトップまである接戦。
いま、和了の形から三色ツモを狙って【5ソウ】【8ソウ】待ちのフリテンリーチを敢行したところ。一発ツモや裏が乗れば、大逆転。

3着目の太はドラの【9マン】を鳴いて、チンイツトイトイの両天秤。満貫以上は確定しており、成就すれば文句なしのトップ。

2着目の中田はテンパイ・ノーテンでも柴田をまくれる2200点差。チートイツのイーシャンテンから、テンパイしてフィニッシュしたい。

トップの柴田はラス親だが、中田次第で伏せられない。小林の満貫ツモは耐えるが、ハネ満ツモなら親かぶりで3着落ち。チャンタのイーシャンテン。

チンイツを本線で狙いつつも、残す孤立牌を慎重に選んだ結果、【8ソウ】を見事に重ねた太。最後にして最大の分岐点に立つ。

いま、リーチの小林に【4マン】を切られた直後に、最後の【4マン】をツモ。
【8ソウ】を落とせば【6マン】のくっつきチンイツの形だが、すでに【8マン】はドラ表示牌合わせて3枚見え。
運命の選択は…

手出しの【4マン】切りとした。
チンイツに見えていそうな自身の手において、【8ソウ】が盲点となり悪くないこと。何より小林のリーチに【4マン】は現物だが、【8ソウ】は通っていないことが大きかった。実際、【8ソウ】は小林の高目!
…フリテンだが。

さらに、敢えて手出しの【4マン】は、次にもう一度【4マン】の手出しを見せ、【2マン】をノーチャンスにしてテンパイにしたい中田から【2マン】を釣り出そうという深謀遠慮な読みもあった。

まさにこれこそが、相手の手の内・肚の内の読み合い=メタゲームだ!

なんと、すぐに小林から僥倖の【5マン】がツモ切られ、発声大きくポン!
狙いの【8ソウ】は中田の手に2枚内蔵されて無いものの、片割れの【2マン】は2山だ。

2分の1枚がここに来た!!
これで【2マン】はラスト1枚。太はハイテイの手番。

対局中は常にポーカーフェイスで、感情を表に出さない太には珍しく、ギュッと目を瞑った。
ここに座っているのは麻雀AIではない。ひとりの戦士であり、人間だ。

ツモりたい、
ハイテイにいてくれ、
頼む!

AIが決してしない「祈り」を、
太は、祈る

それは、人の弱さなのだろうか
無意味な行為なのだろうか

この手順が、果たしてAIに踏めただろうか。
AI超えの一手は、神の一手とさえ称される。
AIそのものである男は、

震える声で、3000・6000と申告した。

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