後がないABEMAS、
初登板、初勝利の
多井隆晴「相手3人を侮るな」
文・中野巧【月曜担当ライター】2026年9月21日
のドラのバック仕掛け、明らかに変則手の河で字牌のドラ単騎など、麻雀には一見相手を軽んじているような打ち方がある。レベル差がバラバラな不特定多数相手に打つ麻雀ではそれでも成功する例があるだろう。しかし、Mリーグの限られたメンツで、高レベルが保証されている場合、相手にスキを与えることにもなりかねない。
昨年はMリーグが始まって以来、初のレギュラーシーズン敗退とメンバー入れ替えのレギュレーションを前に、後がないABEMAS。エースの多井が、侮らない麻雀で魅せた一打とは。
第2試合
東家:堀慎吾(KADOKAWAサクラナイツ)
南家:園田賢(赤坂ドリブンズ)
西家:多井隆晴(渋谷ABEMAS)
北家:下石戟(BEAST X)
■東2局2本場 多井のリーチ史上最も悪い待ち
まだ序盤も点数に差がなく、供託2本というアガリに付加価値がある局面。下石はターツが揃っていることもあり、1枚目の
を鳴いて手を進めていく。
堀もタンヤオがメイン、
や
を引いた場合だけ一色手に向かうような
をポン、打
。

最初にテンパイをしたのは下石、![]()
待ちも山に1枚。
下石がアガれずにいると、親の園田がきた。河には
が切ってあり、引っかけの
.
のシャンポン待ち。すでに下石のアガリ牌はなく、園田の待ちは山に2枚。
仕掛けていた堀が
の中ぶくれ待ちでテンパイ。ただ山には1枚残っている。堀はこういう待ちをスッとアガるイメージがある。
多井もテンパイ。小考を挟んでのリーチ。3人がテンパイ模様で、ドラ表示牌の
待ち。これは多井のリーチ史上、最も悪い待ちだろう。ただ、山には1枚いる。
この局面について、多井は「オリようと思えば、オリられるかもしれないけど、勝負しちゃった」とのちに振り返っていた。
エース4人のテンパイ勝負を制したのは多井。2000・4000のツモアガリ。「あ~よかった、運がよかった」と心の声を振り返りでは口に出していた。
■東3局1本場 多井の思考
前局は2000オールをツモった親の多井の連荘中。ここで大きいアガリを決められるとトップが決まりかねないと、下石が仕掛けるも手が進まず。多井が
–
での先制テンパイを入れる、ピンフ・ドラドラをダマテン。
「麻雀教室でピンフ・ドラドラは打点上昇の効率が良いから即リーチだと教わったのですが」と思ったそこのあなた。あなたの先生は間違っていません。ではなぜ多井はリーチをしなかったのか。
一言でいえば、トップ率を上げるためだ。「リーチして、ツモってマンガン、裏ドラや一発でハネマンを狙うほうがいいのでは」という考えもあるだろうが、多井の言葉を思い出してほしい。「相手を侮るな」。多井の河は
を赤含みでトイツ落としと、かなり濃い。かつ、
–
は場に5枚見えており、巡目も11巡目。そんな場面で多井の親リーチに対して
–
を押してくる相手は役満テンパイでも入らない限り、いないのだ。
あとは大事なのはこの点数状況だ。仮に堀から5800は6100を直撃した場合、堀は12200点持ちのラス目になる。では12200点持ちで、堀の立場になって考えてほしい。トップ目の多井は46200点、無謀にトップを狙うより、着実に2着を狙いに切り替えるだろう。これが多井にとっては、2着、3着目の園田・下石の局を一緒に流してくれる仲間を作ることができ、自身のトップ率を上げることにつながるのだ。
実際、オリていた堀から直撃。「多井さんは相手の思考を汲んで、自分に有利な展開を作るのが上手」と、昔から多井を見てきた人は言っていたのを思い出した。聞くところによると、多井のこの考えは20年以上前には完成していたのだとか。
結果、多井がこのリードを守り切ってのトップ、3人のエースたちには影すら踏ませない、逃げ切り勝ちとなった。麻雀に絶対はないのだが、かつてこの展開から多井がトップを逃したことがあるのだろうか、という展開だった。
多井が登板する直前、奇しくも別卓では、昔からのライバル関係にあるTEAM雷電 瀬戸熊直樹が大連荘し、7万点近く稼いでいた。チームの状況だけでなく、こういったライバルの活躍が多井のメンタルにいい影響を与えたのかもしれないと、サムネ画像を撮影していて思った次第である。

日本プロ麻雀連盟所属、プロ歴3年目。
「麻雀あるある」の集積が雀力向上につながると信じ、日々あるあるを探している。
いつか自分が主役の観戦記を書かれることを願って。











