魂揺さぶる4連闘
松本吉弘がその眼光の先に
臨む景色とは
文・黒田瑛太郎【木曜担当ライター】2026年10月29日
第2試合
東家:鈴木優(U-NEXT Pirates)
南家:尻無濱航(KADOKAWAサクラナイツ)
西家:松本吉弘(渋谷ABEMAS)
北家:渡辺太(赤坂ドリブンズ)
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」
かの有名な川端康成の「雪国」で、主人公の島村は長く続くトンネルの先に一面の雪景色を見た。今シーズンのMリーグは皆さんご存知の通り、渋谷ABEMASがレギュラーシーズンを突破しなければレギュレーションに引っかかってしまうという前代未聞の状況で幕を開けている。
しかし、ファンの心配をよそにシーズン序盤は多井隆晴が個人成績1位をマークし、チームスコアもトップを独走する快進撃であった。間違いなく強いアベマズを思い出させる走り出しであったと言える。
しかしMリーグの悪魔は顔を出した。みるみる間にポイントは削られ、来る10/15第2試合、惨劇はそこから始まった。怒涛の7連続逆連対。着順は4433444。チームスコアはあっという間に-255.9ptに達し、もがいてももがいても先の見えないトンネルへと足を踏み入れてしまった。
そんな苦しい状況の中、静かにただ牙を研ぎ続けた松本吉弘が立ち上がった。3連闘3連続2着。僅かながら、少しずつ光が差し始めたのである。そして迎えるは本対局、鬼気迫る4連闘である。狙いすましたヒットマンはチームに何を持ち帰るのか、アベマズの長い夜が今日も始まる。
東4局。3連闘の結果とチームやファンの期待を背に卓に向かう男の持ち点は4着に沈んでいた。
久々の連対で風向きを変えたとはいえ、全てを吹っ切るようなトップはまだない。向かぬ展開、ゆっくりと蝕まれる点棒に「またか」と肩を落とすファンの姿が浮かぶ。それでも卓で1人前を向き続ける不屈の男には手牌に燦然と輝くドラの
の暗刻に照準を合わせていた。少しずつ、少しずつだが確実に一つ一つ手を進めていく。
そして河も3段目に差し掛かったところで、ついに絶対に逃せないこの手に聴牌が入る。

待ちはカン
だ。瞬間親の太に一気通貫の片アガリの聴牌が入る。
しかし、危険牌の
を掴み撤退。

残るは山との勝負となった。
はあと2枚。思い出すはあの日負けた7対1の捲り合い。またか、まただめなのか。これもだめか、これでもだめなのか。
それはまるで、俯くファンの手を取り「大丈夫」と笑って見せたようだった。会心、不屈の2000-4000だ。それでもやはり試練は終わらない。次局、このまま突き放しにかかりたい松本の前に親の優の仕掛けと太のリーチが行く手を阻む。
待ちは
–
だ。しかし
–
–
の絶好の聴牌で松本も追いつく。
ドラの
を掴んでの放銃。打点こそ2600で済んだものの、地震もアガりたかっただけに痛い放銃だ。1人20000点を割り、再び4着に沈むが、それでも顔を上げファイティングポーズを崩さない。
続く南2局絶好の
を引き入れ、赤赤の平和聴牌。待ちは
–
だ。手応え十分の聴牌に思わずリーチの声が先走る。

そして先に聴牌を入れていたトップ目の優から
を討ち取り、8000点の直撃に成功する。
何度打ち負かされても立ち上がり、食らいつき、ついにはトップが見える立ち位置に辿り着いた。もう彼を見て「まただめなのか」とため息を漏らす者はいなくなっていただろう。親番こそ優に流されたものの、トップまで実に2300点という僅差でオーラスを迎えた。もはやそこに不安や心配の声はなく、チームやファンからの期待だけを一身に受け配牌を開く。
端に寄った手牌を貰い、チャンタを念頭に手を進める。

重なる
。しかし
を鳴いて聴牌を取っては打点が足りない。場に
が放たれるよりも先に何としてもリーチと言いたいところだ。そして遂に念願の
を引き入れ、トップへと繋がる渾身のリーチへと踏み出す。
思えば、松本吉弘と言えば、目を覆いたくなるような逆境から立ち上がり大逆転を決めるような姿が印象的だった。実際何度もそんな逆転劇を目の当たりにしてきた。かつての渋谷アベマズMリーグ優勝の功労者の圧倒的なその力は、昨今の不調を前に息を潜めてしまったのだろうか。














