そういって、勝者は笑った。
「鈴木大介さんと、近藤誠一さん。すごく戦いたかった相手が2人いるので、すごく楽しみにしています」
そういって、堀プロは舞台裏へ向かった。
■決勝卓
A卓勝者 鈴木大介
B卓勝者 金子正輝
C卓勝者 近藤誠一
D卓勝者 堀慎吾
決勝の舞台裏で、写真を撮る。
薄暗く、ケーブル類も気にしなければいけない環境で、画角を作るのにもピントを合わせるのにも苦労をする。
しかし、その生々しさが現場にいる雰囲気を感じさせてくれる。
選手たちは、シャッターを切ってもこちらを気にする様子はない。
この雰囲気を少しでも、写真から感じとってもらえたなら幸いである。
近藤プロは、敗れた鈴木大介さんを称賛していた。
「もう、やられましたね。大介さんが強すぎて、完敗でした。トップ目だからといって、大介さんは南家だし、とあるわけじゃないですか。簡単に引いていたら危うかったと思うんですよ。それをきっちり押し切った感じですよね」
金子プロは、自身の判断を
「焦ったかもしれない」
と振り返った。
「単騎とか単騎、チートイツの待ちどりあたりを。単騎は3巡目にリーチを打たなくても、もうちょっと待ち選択をしてから打てばよかったと思いますね。ここは勝負かけてみようという感じでした」
堀プロには、D卓の激闘の影響があったのかを尋ねてみた。
「それはないですね。むしろ本当に楽しみにして、決勝に臨みました。やれることは自分なりには全部できたと思うので、そこは全く後悔とかは何もないです」
「いつかまたこの場に帰ってきて、最強位になれたら─そのためにもこれから、日々麻雀を磨いて、頑張っていきます」
堀プロの言葉は、この日この場にいた全ての選手の思いを代弁したものだと思う。
そして、第30代最強位となった鈴木大介さん。
「楽しく打てました。見ている人も強引だとは思ったでしょうけど、これが自分の麻雀なので。これで、将棋の方で鈴木九段と打ってみたいという人が増えて、仕事につながればさらにいいですね(笑)」
トップ目での驚異的な押しについては、興味深いことを語っていた。
「流れ論者なので、親番が流れたときも手が落ちないようにという意味合いでした。放銃する形で次の局に行きたいな、と思っていたくらいです。オリてハネ満ツモられるくらいなら、満貫打っちゃった方がいいかな、くらいの感じでした」
このあたりの感覚は、なんともアナログな思考だとは思う。
ただ、一発勝負で頂点まで駆け上がるには、こうした割り切り、そして思い切りの良さも大事なのかもしれない。
「まさか将棋より先にタイトル取るとは思わなかったですね。本当は将棋でタイトル取らなくちゃいけないのに」
試合後には早速、新最強位へのインタビューが行われた
鈴木大介。
最強の麻雀打ちとなった将棋指しである。
この日の舞台裏では、いろいろな場所を撮影させていただいた。
試合中は、関係者や選手がロビーで中継を見つめている。
放送でも話題になった。勝ち上がり部屋。
放送ブースは、実際の対局場とは少し離れた場所にある。
解説を務めた魚谷侑未プロ。
「名勝負がいっぱいで、すごくドラマがあると思いました。毎年言っているんですけど、解説は3年か4年連続呼んでいただいていて、とてもありがたいんですけど、私も来年はこの舞台に立てるように頑張りたいと思います」
1年間アシスタントを務めた、鈴木ふみ奈さんにもお話を伺った。
「本当に一瞬で終わっちゃった感じです。麻雀を始めてすぐにアシスタントになったので不安だらけだったんですけど、いろいろな方の試合を見て、最強戦にかける思いが伝わってきて、麻雀がより好きになりました。グラビア仲間でも麻雀を打てる仲間がいるので、みんなでまた打っていきたいなと思います」
試合後の打ち上げは、中華料理店を貸し切って行われ、選手をはじめ関係者各位がそろって麻雀談義に花を咲かせていた。
戦いが終わればノーサイド、ここにいるのは麻雀を愛する仲間たちだ。
筆者が最強戦ファイナルの現場を取材させていただいて感じたのは、まず、各選手の素晴らしい人柄だ。
試合前、そして試合後と、場合によってはナーバスになっていても仕方のない中で、快くご対応いただいた。