ドリブンズの麻雀も意外と面白い 鈴木たろう、広告宣伝費を回収するホンイツ【Mリーグ2021観戦記10/18】担当記者:東川亮

ドリブンズの麻雀も
意外と面白い
鈴木たろう
広告宣伝費を
回収するホンイツ

文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2020年10月18日

ちまたのフリー麻雀は毎回別の人と対局することが多いが、麻雀プロのリーグ戦では同一の相手と何度も対戦をする。そしてトッププロであれば対局が映像として残り、他の選手からの研究対象となる。大和証券Mリーグの選手たちは、そうしたなかで結果を残さなければいけない。プレッシャーや難しさは、我々一般の麻雀ファンには想像すらできないものがあるはずだ。

第1試合
東家:小林剛(U-NEXT Pirates)
南家:伊達朱里紗KONAMI麻雀格闘倶楽部
西家:茅森早香セガサミーフェニックス
北家:鈴木たろう赤坂ドリブンズ

 

東2局、たろうは2巡目にこの形から【3マン】切り。瞬間的なテンパイまでの効率では少しロスがあるが、浮いた【5ソウ】はドラ【4ソウ】受けのためにキープ、また後の【1マン】【4マン】受けを強くする意図があっただろう。

ドラメンツこそできなかったものの、【8ソウ】暗刻からの【1マン】【4マン】待ちリーチは2巡目【3マン】切りの布石が生きており、ベストに近い。

このリーチに手詰まったのが小林。手の内に安全牌はなく、一方である程度まとまった形に。押し返すとして、何を切るか。

小林が選んだのは【4マン】。少し前に茅森が【7マン】を通していて【4マン】【7マン】待ちがないこと、そして早い【3マン】切りで、【1マン】【4マン】が当たる可能性は【8マン】【3ソウ】【7ソウ】【7ピン】などと比べて低いと読んだと思われる。

だが、それこそたろうの狙い。意図がばっちりハマってのアガリは、打点こそ2600とは言え感触は十分だったはずだ。

東4局1本場、伊達が【2ソウ】ポン、【5ピン】チーと仕掛けて【3マン】【6マン】待ちタンヤオテンパイ。【赤5マン】がダブドラで、【6マン】なら三色がついて満貫になる、意外に高い仕掛けだ。

直後、たろうは【3マン】を引いてくるが、さほど時間を使わずに【8マン】を切った。前巡に【2マン】を切っていて自らの手には不要だが、ソーズピンズと鳴いたタンヤオ仕掛けっぽい伊達に、ドラ跨ぎの【3マン】【6マン】はいかにも危ないと踏んだのだろう。とは言え親番で形もそこそこ、遅れを取ったとは言え2枚切れの【南】で粘りたくもなりそうなところ。それを使わず伊達の現物を外していく見切り、しかもそれをスッと選べるところはさすがだ。ここは伊達が【3マン】ツモで1000-2000は1100-2100をアガった。

南1局、たろうが3巡目に【南】を仕掛けた。前巡から【5ピン】【3ピン】とターツ払いをしており、マンズのホンイツによる高打点を見た仕掛けだ。

たろうはMリーガーの中でも、比較的アグレッシブに鳴いていくタイプ。時には、かなりアガリが遠いところから鳴くこともある。

たとえばこんな仕掛け。厳しい配牌から国士無双に向かうも【發】を鳴かれて望みはほぼ潰えた。あわよくばのチートイツに向かう打ち手が多いと思われるが、ここから仕掛けることでがむしゃらにアガリに向かいつつ、相手に圧をかけて真っすぐ打たせない、あるいは読みをずらそうというのがたろうの麻雀だ。

また、こういう鳴きによって、相手に「たろうの仕掛けには何でもある」と考えさせる狙いもある。本人は、それを「広告宣伝費を使う」と表現しているという。同じ相手と何度も戦うリーグ戦では、相手の読みをずらす意味で有効になる考え方とアクションと言える。

茅森の【7マン】をチー、これで【1マン】【4マン】待ちホンイツテンパイ。なお、この日の放送で採用されていたマルチアングルなら、2人の対比を確認できる。

だが、そこに小林や茅森がマンズを切っていく。マンズがまだ余っておらず、今ならまだ切れるという判断。そしてたろうの仕掛けにはいろいろなパターンがあることから、もう一つ手出しが入るまでは押そうということだったのだろう。

「広告宣伝費」は、こうした大物手を決めるためのもの。ここはたろうが伊達から【1マン】を討ち取って8000のアガリを決めた。

たとえば、同じ仕掛けをしたのが黒沢咲滝沢和典など安くて遠い仕掛けを使わない打ち手なら、他のメンバーは同じように打てただろうか。これは、たろうの長期にわたるブランド戦略が生んだアガリと言えるかもしれない。

南4局1本場。トップのたろうと2番手の茅森の点差は3800。供託リーチ棒が1本あるため、茅森のトップ条件は2600出アガリから。そこへ茅森にチートイツの早いテンパイが入り、【赤5マン】待ちから【中】に待ちを変えてリーチを打った。ツモはもちろん、全員が誰かと競っている状態のため、【中】くらいは打ってくることが十分期待できる。実際、この時点で伊達に【中】が1枚浮いており、アガリに向かえばかなり打たれそうだった。

宣言牌【赤5マン】をたろうがチー。カン【5ソウ】待ちテンパイ。

そこへ【8ソウ】を引き、【4ソウ】を切ってカン【7ソウ】待ちへ。リーチ2巡前の手出しが【3ソウ】なので【8ソウ】よりも【4ソウ】の方が危なく見えるが、通ればスジの【7ソウ】は盲点になりやすい。たろうはリスクを取ってアガリを見た。

伊達がかなり放銃しそうな状況だったが、苦しいのは小林も一緒だ。茅森や伊達にアガられればラス、流局時にノーテンなら、たろうが伏せればやはりラス。たろうが明確に押してきているなか、小林は放銃せずにアガリ、あるいはテンパイにたどり着かなければならない。

リーチを受けて手牌がこれ。浮いている【3ピン】はあまりに危険、とは言え現物を抜いて形を崩したくはない。

選んだのは、たろうが通した【4ソウ】のスジ【7ソウ】。たろうに対し、【4ソウ】【6ソウ】【8ソウ】からの【4ソウ】切り【7ソウ】待ちがあり得るのは百も承知だが、ロンと言われたとしても自身がドラ【7ピン】を2枚持っており、打点的にはそれほど高いとは見込んでいなかったと思われる。2900、あるいは5800でもまだ3着フィニッシュは十分狙える点差だ。

しかし、たろうの手はタンヤオドラ赤赤の12000。これでたろうが茅森以下を突き放し、最後は小林のリーチに放銃するもトップで試合終了。自身2勝目を手にした。

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