理が結果に結びつくとは
限らない世界で
魚谷侑未、苦悩の一戦
文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2021年11月11日
大和証券Mリーグ、11月も中旬を迎え、セガサミーフェニックスが苦しんでいる。23戦を終え、トップが4回に対してラスが9回。11月11日の第1試合では苦戦が続いていた近藤誠一に復調の兆しが見えたが、勝又健志を捉えきれず2着に終わった。
チームが厳しい状況にある中で仕事をするのがエース。第2試合に登場したのはチームのドラフト1位、魚谷侑未。果たして、チームを救うことはできたのか。
第2試合
東家:魚谷侑未(セガサミーフェニックス)
北家:沢崎誠(KADOKAWAサクラナイツ)
東1局、親の魚谷は3巡目で字牌整理が終了。親番でドラもあり、ダブも処理して目いっぱいに受けた。この局は完全にアガリに行く局面だ。
終盤までかかったが、タンヤオピンフ赤、高目三色をテンパイ。巡目が深いため、ダマテンに構えてより確実なアガリを狙う。
ただ、本田・沢崎からリーチが来たら話は別だ。元よりオリる手ではない以上、ツモ切り追っかけリーチで打点をつり上げにかかる。
しかし、ツモ切ったが本田への一発放銃となったのはアンラッキーだった。リーチ一発ピンフドラで8000の失点。試合の入りでビハインドを背負うことになった。
魚谷は次局も生牌のを打ってまで1シャンテンを維持するものの、で亜樹に3900を放銃。オリようと思えば亜樹の最終手出し後に通ったを抜く手もあったが、強く打っていった結果、さらに点数を減らしてしまう。
東4局、親の沢崎のリーチを受けた一発目でこの形。沢崎の捨て牌はほとんど端牌で現物はゼロ。自身の手も整っているだけに、魚谷は1シャンテンにとるを打った。はドラ跨ぎでリスクが高く、は赤の受け入れや手役・好形変化の種、はのワンチャンスで通れば2枚打てる、という理由だろうか。
だが、これが沢崎への一発放銃、リーチ一発の9600という手痛い一撃をくらった。沢崎は次局にダブルリーチピンフドラ赤という幸運な12000を亜樹から出アガリ、悠々とリードを広げていく。
南場の親番を迎えたとき、魚谷の持ち点は900点まで減っていた。もちろん、このままでいいはずがない。順位を上げるためには、ここで大きく加点しなければならない。
魚谷は3巡目にをポンして1シャンテン。ドラと赤が1枚ずつあり、5800をアガれれば次につなげられる。
ただ、まずは連荘優先。もちろんを切っての2900に満足はしていないだろうが、アガれなければ元も子もない。それに、ドラを重ねての打点アップなどのルートもある。
引きで待ちを単騎へ。これで出アガリ5800、ツモれば2600オールの手になった。
さらにを大明カン。打点を出アガリ7700まで引き上げる。新ドラで打点を満貫以上にすることも狙っただろう。もちろんリーチを受けるリスクもあるが、さらなる失点よりも打点を限界まで追求する攻撃的な選択だ。
この試合の劣勢を、そしてチームの苦境を打破するために、魚谷はもがいていた。しかし、結果にはつながらない。
南1局1本場、魚谷はをポンしてテンパイ。待ちをかか選べるところで、自身の目から5枚見えの待ちではなく、2枚しか見えていない待ちに受けた。理屈で言えば正しかったと思うし、実際に待ちの枚数はこちらの方が1枚多かった。
しかし、そこで薄いの方を持ってくるのも、麻雀ではよくある話である。直後、沢崎にという一番よくない部類に入るシャンポン待ちをツモられ、親が落ちた。
魚谷は南2局にペン待ちリーチを一発でツモって2000-4000、持ち点を1万点台に戻した。迎えた南3局、親番の亜樹との点差は1万点を切っており、逆転は十分に可能。その状況で1巡目からオタ風のをポン、仕掛けで主導権を握りにいく。この後ですぐに引いた4枚目のを加カン、新ドラがダブってとなり、満貫の材料はそろった。
一気に手をマンズに寄せる魚谷。しかし、そこに亜樹からリーチが入る。
これはピンチであり、直撃を取るチャンスでもある。魚谷は通っていない字牌やワンチャンスとはいえドラ跨ぎのなど、強い牌を打って押し返していく。
しかしテンパイは入らない。そして終盤、新たな無スジをつかむ。はワンチャンスとはいえ、とのどちらにも通っていない、極めて危険な牌だ。
魚谷は苦悩する。もちろん、を打たずに流局で粘ることも考えたはずだ。流局すれば点差は広がるが、放銃よりはマシ。とは言え現状、手の内に安全牌はない。強いて言えば亜樹が2巡目に切っているが場に3枚見え、はワンチャンスになっているが、それも絶対ではない。
魚谷はを打った。
結果は12000の放銃。この試合を、そして苦戦する11月のセガサミーフェニックスを象徴するようなシーンだった。