あの局をやり直したい──
それまでの道程も、
この思いも、
きっと北陸の星の糧となる
文・須田良規 【週刊Мリーグセレクト】2021年11月22日~26日
11月25日(木)の第2試合、TEAM雷電からは、今期新規加入の本田朋広が出場した。
ここまでチームの成績は-473.2p。
雷電は今日までの不振の状況を打開するために、
初戦はレギュラーシーズン3期連続プラスのポイントゲッター黒沢咲を投入するも、
勝負手のあと1枚がことごとく届かず、痛恨のラス。
ルーキーの若武者の双肩に、浮上のきっかけが委ねられたのである。
雷電は、ここまで萩原聖人・瀬戸熊直樹・黒沢咲の3人だけで戦ってきたチームだ。
本田は「北陸の役満プリンス」というキャッチフレーズはあるものの、
もちろん無理に大物手を狙うタイプではない。
無難な言い方をすればバランス型と表されることも多いが、
それは自身が地元富山から10年、対局のために東京に通い続け、
競技麻雀の礎を築き上げた結果であると思う。
本田は東場、攻め手も受け手も正に慎重なバランスで、無理なく局を進めていった。
そして東4局、北家の赤坂ドリブンズ・鈴木たろうの先制リーチを受け、
この手で真っ向勝負。
そして折り返しの南入。
本田が悔やんでも悔み切れない、運命の局が訪れる。
点棒状況は東家から、
朝倉康心 26600
本田朋広 39300
鈴木たろう 10100
高宮まり 24000
このとき解説の渋川難波が、
「本田選手は以前、『リードした後に縮こまり過ぎてしまう』と自身のことを語っていましたが、
果たして今日は、ここからもまだ攻めていくのでしょうか」
と話している。
奇しくもそれが、この局の展開を予見する言葉になるのである。
本田の手牌は4巡目に
実況の日吉辰哉は
「攻めるにはおあつらえ向きの手ではないですか?」
と気がはやる。
「そうですねえ──。怖いですけど、ね」
渋川は、本田の心情をなぞるように言った。
そして10巡目、である。
をツモった本田の手が止まる。
全体牌図を見てみよう。
敢えて神の視点で、全員の手牌も公開しておく。
本田は前巡にドラのも切り飛ばしており、東家朝倉と北家高宮に安全なを残している。
ここに持ってきたは、今朝倉が上家で切った牌だ。
ここでを切る人が多いのは当然だと思う。
ただ本田はのシャンポン形でイーシャンテンだが、高宮が今を切ったところ。
そして朝倉の手を見ると、の二度受けがあるリャンシャンテンなのである。
10巡目──。
どこまでこのの形を、引っ張ってよいものだろうか?