奈良圭純の悪夢再び
麻雀最強戦との間に生まれた
新たな因縁
【A卓】担当記者:東川亮 2023年4月16日(日)
麻雀最強戦2023「因縁の決着」。
A卓では、昨年の麻雀最強戦で因縁が生まれたメンバーが集められた。
岡田紗佳と瑞原明奈。
麻雀の放送対局史上に燦然と輝く国士無双十三面待ちを、アガった者と、打ち込んだ者。どちらもMリーグで活躍しており、自信に加えて風格すら漂わせている。
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渋川難波と奈良圭純。
激闘の末、第三者の望まぬ選択によって、勝った者と敗れた者。渋川はわざわざ利き手と逆の左手でメガネの位置を直し、結婚指輪を見せつけて新婚アピール。対する奈良はG1タイトル4つをアピールする。
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それぞれに思うところはあるだろうが、いずれにせよ、最強戦で生まれた因縁の決着は最強戦でつけるしかない。
対局は序盤から大きく動いた。東1局、瑞原が渋川のリーチに対して高目三色の追っかけリーチをかけると、高目をハイテイでツモって3000-6000。
次局はまたも渋川のリーチに対し、まわりながら3メンチャンテンパイを入れた岡田が追っかけリーチをかけ、一発でツモって2000-4000。
東4局では岡田がリーチツモ三色の4000オール。序盤から女性陣が快調に加点を続けていく。
置いていかれた男性陣2名。ただ、奈良については気になるシーンがあった。
東3局、自風のをポンして、を捨てればの2600テンパイだったが、右端に置いていた發を切ってしまったのだ。左にはがもう2枚、つまり暗刻だった牌である。
直後に瑞原がリーチをかけるが、宣言牌はテンパイをとっていればアガれた牌。
その後、ポンから1000点のアガリ。ミスからうまくリカバリーしたかのように見えたが、本人いわく、暗刻からを切ったことに気がついていなかったという。奈良は昨年もテンパイしていたのにノーテンを宣言し、その失点が響いて敗れている。麻雀最強戦という舞台の重圧がこのようなミスを誘発する、というのは言い過ぎだろうか。
その奈良は東4局1本場、4巡目にやを切っての1シャンテンをとらなかった。最速テンパイを逃すかもしれないが、それよりもしっかりと良い待ち、高い手をつくって押し返していこうという構え。
時間はかかったが、テンパイ一番のり。待ちのは、直前に渋川が切っている牌。ダマテンに構えれば出アガリもかなり期待できただろう。
しかし、ここはリーチ。ダマテンでのアガリではなく、リーチでの大量打点を狙った。1000点2000点で泣かないようにするには、相手を大きく突き放せばいい。おそらくこの試合で最大の大物手、ここを勝負どころと見たか。
どちらがいい、という正確な答えはない。実際には山に残っていた。しかし、瑞原、岡田と立て続けにロン牌を引いて対応する様子を見ると、視聴者としては「ダマテンにしておけば」というifを想像したくなってしまう。特に瑞原からの直撃であれば、奈良は微差とは言え2着目に浮上して南場を迎えられていた。
奈良の勝負手は実らず、渋川との2人テンパイで流局。挽回のチャンスを逃す結果となった。
局は進み、南3局4本場。渋川はテンパイこそすれどアガリが遠く、ラス目に沈んでいた。親番もすでになく、残り2局で逆転をしなければならない。
渋川の手は決してまとまっているとは言えないが、この手を仕上げ切らなければ価値はない。直前に切られたは当然のスルー、を引き入れてメンツが一つ完成する。
を暗刻にして一歩前進。終盤ではあるが、徐々に高打点の気配が漂ってきた。
一方の奈良も、かなりまとまった形ではあったが、焦れるツモが続いていた。局は既に終盤、岡田から切られたはポンして広い1シャンテンに取れる牌。1000点でもアガれば、あるいは瑞原とテンパイノーテンにできればオーラスに満貫ツモ、あるいはそれより軽い条件が生まれるので、極めて不服ではあるが、テンパイを取っておく価値は高い。
一瞬手が止まったが、それでも奈良は鳴かなかった。ギリギリまで門前で高くアガることを目指す。