名もなき最終局
──茅森早香と萩原聖人、
最後に語った想い──
文・小林正和【金曜担当ライター】2025年11月21日
南4局
これが麻雀。
それを改めて思い出させてくれるオーラスだった。
鋭い読みも…
膨大なデータも、ここではただの参考書の一部にすぎず。
麻雀って、いつも怖くて…
苦しい存在。そして…

最後はいつだって、たった一牌。
無機質なその一枚に、願いを込め、信じて、そして…自分の思いを託すしかない。
茅森の手に握られているのは、
なのか、
なのか──。
第2試合
東家:渡辺太(赤坂ドリブンズ)
南家:萩原聖人(TEAM RAIDEN / 雷電)
西家:鈴木優(U-NEXT Pirates)
北家:茅森早香(セガサミーフェニックス)
跳ねさせない──茅森早香のもう一つの麻雀──
この試合は、最短の8局で終了。
おそらく、今シーズンのミニマム半荘だ。
さらに驚いたのは、南3局でマンガンツモが出るその瞬間までの平均打点が2,050点という低さ。
ちなみに、同時進行していたもう一方の卓は平均打点9,364点。その差を見れば、この卓がどれだけ小場で進んでいたか一目瞭然だろう。
数字だけ並べると「西暦かな!?」と思うくらい、とにかく小さなアガリの連続であった。
東1局
仕掛けてタンヤオの1,000点。
捨て牌一段目であっけなく決着した。アガリをものにしたのは
セガサミーフェニックスの茅森早香であった。
1日に1回はハネマンをベースとした「一日一跳」という高打点スタイルが特徴。しかし、今季は監督兼選手という采配も担う中で
6戦中、未だ連対はなし。あまりにも苦しすぎるスタートである。自ら出番を抑えながらも、チーム状況を見て卓に向かう茅森。
(今日こそは… 自分の色を出して勝ちたい。)
そう思えば思うほど大振りになりがちな場面だが、焦らない。Mリーグ発足時のオリジナルメンバーの経験を生かし、感情を抑えて最善だけを選びにいく。
実はこのアガリ、ただの1,000点ではなかった。
一戦目4着となった瑞原の想いを背負った優の希望も砕く。
そして、親・太の超弩級のイーシャンテンも止めて見せた。
麻雀とは、「誰よりも速く、そしてより高くアガるゲーム」。
その一方で、それを阻止することもまた麻雀なのだ。
その培われた長い経験からくる危険察知は、続く東2局でも発揮される。














