魔術師の技をとくと見よ 園田賢の『魔術の麻雀』【Mリーグ2021観戦記12/16】担当記者:東川亮

魔術師の技をとくと見よ
園田賢の『魔術の麻雀』

文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2021年12月16日

麻雀プロとして、誇れるステータスは何か。
タイトルを獲るのはもちろん、今ならMリーガーとなるのも非常に大きい。また、自身の店を持つことも一つのステータスだろうし、それを目標に掲げるプロも、以前から多かったと聞く。

加えて挙げるとするならば、やはり「自身の戦術書を出す」ことではないだろうか。自らが長年にわたって培ってきた戦術や思考をまとめた戦術書は、プロとして他者に誇れるスキルを身につけた証と言ってもいいかもしれない。最近では自身の麻雀検証配信をするプロも多いが、短時間でコンパクトに要点をつかめる戦術書のニーズは、まだまだ大きいはずだ。

12月22日、赤坂ドリブンズ園田賢による初めての戦術書「魔術の麻雀」が彩図社より発売される。内容はまだ一般には明らかになっていないが、4年の月日を費やした一冊とのこと、園田の魔術が存分に詰まっているに違いない。

第2回戦
東家:高宮まり(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
南家:勝又健志EX風林火山
西家:本田朋広TEAM雷電
北家:園田賢(赤坂ドリブンズ)

東1局1本場
園田はターツ選択の場面で、3枚切れの【9ピン】受けを残し、【8ソウ】切り。枚数は少ないが、残る1枚が狙えそうな感触があったか。

次巡、すぐに裏目の【7ソウ】を引いてしまうが、これをキープして【6ピン】の2度受けを解消。フリテンはテンパイまでに引き戻せばフリテンではない。

【8ピン】を引いて再び【6ピン】【9ピン】二度受けができたところにリーチが来るが、【7ピン】が暗刻になって【3ピン】を勝負の追っかけリーチ。待ちはそれほど良いわけではないためリスクはあるが、さらなる変化も厳しそう、それよりもここでアガリを取るメリットを重く見たのだろう。

【8ピン】を先行の勝又から仕留め、裏ドラを乗せて5200は5500。まずは一つアガリを決める。

だが、その後は他者の大きなアガリが続き、園田は放銃こそないものの、3番手に後退して南場を迎えることになる。さらに、南1局には親の高宮がリーチツモピンフ三色ドラ裏の6000オールを決め、大きく抜け出されてしまう。

南1局1本場、園田の手は赤赤のチャンス手。567の三色がくっきり見え、形もいいことから、打点的にも形的にも価値の低いカン【2ピン】受けターツを払い、一撃を狙う。

ここから【5ソウ】【6マン】と絶好の引きが続き、タンヤオピンフ三色赤赤ドラ、【7ピン】ならイーペーコーもつくという強烈な【4ピン】【7ピン】待ちテンパイが入る。仕掛けても打点が十分なことから【4ピン】【7ピン】のリャンメンチーにも備えた理牌をしていたが、それも不要になった。

安目でもツモれば8翻、4000-8000は4100-8100。園田が高宮を猛追する。

一度は高宮をかわした園田だったが、南3局では高宮が勝又から8000を出アガリして再逆転。園田は2番手でオーラスを迎える。だが、こういう接戦でこそ、園田の魔術が生きる。

高宮が切った1枚目の【白】に、高速でポン。指が離れるかどうかというタイミング、鳴くと決めているときの園田のポン発声はとてつもなく早い。

仕掛けたときの形はこんな感じ。愚形ターツばかりでバラバラだが、この手で【白】を鳴いていかなければ、アガリは相当厳しそうである。もう少し手が整ってから、なんて言ってはいられない。

その後、ツモや仕掛けで愚形ターツが解消でき、ドラ【7ソウ】単騎のテンパイ。ここはアガりやすい1500よりも、アガれば次局にノーテン宣言ができる5800を作りにいく。

終盤、本田は【7マン】を鳴けば形式テンパイが取れたが、スルーした。鳴いたときに出ていくのは生牌【東】、これで放銃となれば満貫クラスの失点もあり得る。点数状況的に園田が1500点の仕掛けとは考えにくく、それゆえ切りきれなかったところもあるだろう。これが、アガりにくいドラを切らずに単騎で受ける、もう一つの効果でもある。

アガれればベストだったが、一人テンパイでの流局もベターな結果。テンパイ料で、園田が高宮を逆転した。

南4局1本場、園田は2枚切れの【發】を残してトイツの【2ソウ】を切った。ドラがトイツではあるが、ここは少し守備を考えた選択。勝又が既に【白】を仕掛けており、任せておけばアガってトップが確定できそう、と考えたか。園田は勝又がハネ満以上をツモらなければトップ、自身がドラ2枚を持っており、勝又が仕掛けてハネ満を作れるとは考えにくい。

1枚切れの【北】を引いて少考し、残して【6マン】切り。既に【8マン】が3枚切れていて使いにくいこともあり、後の守備に備える。やはり、ここは少し引き気味に見える。

【南】が重なり、【2ピン】切り。2巡前に本田が【5ピン】を切っていて、今ならまだ切りやすいと考えたか。

一方、逆転トップには倍満ツモが必要な本田には、それをなし得そうな手が入っていた。【1ピン】を引いて三色に振り替われば、リーチツモ三色赤赤ドラ、ツモって一発か裏で条件をクリアできる。

そこへ引いた【4ソウ】は、234三色の種となる牌。その場合、高目ツモならピンフもついて一発や裏に頼らずとも条件クリアだが、自身で【5ソウ】を切っていてフリテンである。【4マン】は場ゼロだが、【2ソウ】は2枚見えている。

少考し、本田は【4ソウ】をツモ切った。

次巡、本田が【南】をツモ切り。

「ポン」

園田が仕掛けた。アガリまで遠いかと思えたが、前巡に【6ピン】を引いてメンツが完成、鳴いて1シャンテンのところまできている。勝又が早そうに見えたが、もし流局した場合、高宮にテンパイノーテンで再逆転を許す可能性がある。アガれれば12000と打点も大きいことから、自身のテンパイやアガリも見て前に出た。おそらく、逆転条件が厳しい本田が【4ソウ】ツモ切りで少考したことで、まだ納得のいくテンパイが組めておらず、時間はあるとも読めたのだろう。切っていく發も、場に2枚切れている安全牌。攻守兼用の構えができている。

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