卓上に 高らかに響く 牌の音
MVP挑戦権を手繰り寄せた
沢崎誠の剛腕
文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2022年3月7日
大和証券Mリーグ2021-22、レギュラーシーズンは最後の1週間に突入した。セミファイナル進出争いの大勢が決しつつあるなか、注目が集まるのは最終順位、そして個人タイトル争いとなる。
この日の第1試合には、開始時点で個人ランキング2位の沢崎誠、5位の松ヶ瀬隆弥が出場。どちらもMVPは射程圏内であり、ここでのトップはチームのため、そして自分のために、是が非でもほしい。そして朝倉康心としては、自身の勝利で2人を食い止め、個人首位のチームメート・瑞原明奈のために最高のアシストをしたいところだ。
第1試合
東家:朝倉康心(U-NEXT Pirates)
南家:日向藍子(渋谷ABEMAS)
西家:沢崎誠(KADOKAWAサクラナイツ)
北家:松ヶ瀬隆弥(EX風林火山)
東1局、突風が吹いた。親番の朝倉が字牌2枚を切ってリーチ、2巡後にツモアガる。リーチツモピンフドラ赤裏裏の6000オールは、あまりにもイージーで、あまりにも強烈。他3者にとってはいきなりハンデを背負わされたようなものだが、こういうことが起きるのも麻雀である。
次局、沢崎は3巡目にドラのを切った。手の形はまだそれほどよくはないが、引きでターツの種は足りたという判断だろうか。は場風のドラだけに、まだ引っ張る、あるいは絞る形で進行する打ち手も少なくないのでは。
そこから3巡続けて有効牌を引き入れてテンパイ。もしではなくを切っていたら、この最速テンパイにはたどり着いていない。
・・・ッターン!
「リーチ!」
リーチ宣言牌を一度手牌の横でワンバウンドさせる、沢崎特有のリーチモーション。心なしか、音も高く強く響いている。
これに対し、1シャンテンで粘った日向がワンチャンスので放銃。リーチピンフ赤裏の8000は8300で、朝倉追撃の一番手に躍り出た。
東3局1本場、親番の沢崎が先制リーチをかける。待ちはペンと決してよくは見えないが、ここは打点で勝負だ。
これに待ったをかけたい松ヶ瀬。
沢崎の切ったは自身の急所。少考の後、チー。考えていたのは、ここで何を切るかだ。切りならの片アガリで三色ドラ赤の8000、アガれないはすでに3枚切れ。一方のシャンポン待ちはどちらでもアガれるものの打点は3900になる。
見た目枚数が五分なら高い方。松ヶ瀬の選択は切り、待ちで受ける。
だが、結果は痛恨のアガリ逃し。
最後は沢崎がツモって4000は4100オール。これで東3局にして、朝倉を逆転した。
松ヶ瀬の選択が裏目になったのは、結果論でしかない。ただ、この最終盤で必要なのは、なによりもその結果なのだ。上下の結果の差はあまりに大きい。
東4局は松ヶ瀬に門前チンイツのテンパイが入る。待ちはカン。劣勢を一気に巻き返せる大物手だった。
沢崎はリャンメン3メンチャンの好形1シャンテンが長く続いていたがなかなかテンパイせず、最終盤で渋々といった感じでをチー、片アガリのタンヤオテンパイを取る。待ちのは、松ヶ瀬に入ると待ちが一気に強力になる牌。
2人がほしかったは、沢崎があっさりとツモった。打点は300-500と低いが、アガリそのものの意味がとてつもなく大きい局面だった。
南2局3本場。沢崎は3枚目のが場に放たれるや否や、受けのターツをあっさりと外した。手には受けターツもあるので、純粋なロスは1枚だけ。ただ、それをノータイムで外すのが面白い。
その後、親番・日向の先制リーチを受けるも、ドラを重ねたなら途端に勝負手、無スジのをバシッと押していく。
そしてを引いたならば、宣言牌が高らかに響く。その音、そしてリーチの発声に、自信がみなぎる。このリーチがアガれないはずがない、そんな声が聞こえてきそうだ。
日向の待ちは、山に1枚残りのカン待ちだった。それをツモって見せる沢崎。同卓の3人の心を折るかのような、強烈な一撃である。
南4局、松ヶ瀬の親番も、沢崎の300-500ツモで決着。3着キープで試合を終えたい日向からアシスト気味に牌が打たれていたこともあり、1対2では松ヶ瀬もどうしようもなかった。