高宮まり、可憐な右手に握りしめるは紅蓮の大太刀『四暗刻』【 #役満 】【Mリーグ2022-23観戦記3/2】担当記者:東川亮

高宮まり
可憐な右手に握りしめるは
紅蓮の大太刀『四暗刻

文・東川亮【木曜担当ライター】2023年3月2日

開幕当初は長く思えた大和証券Mリーグ2022-23レギュラーシーズンも、気付けば3月、いよいよ終わりが見えてきている。シーズン後に1年の名場面を振り返ったとき。

きっと、3月2日第2試合のオーラスを挙げる人も、少なくはないと思う。

第2試合
東家:園田賢(赤坂ドリブンズ)
南家:魚谷侑未セガサミーフェニックス
西家:高宮まりKONAMI麻雀格闘倶楽部
北家:白鳥翔(渋谷ABEMAS)

白鳥翔、盤石だったはずのゲームメーク

僕ら観戦記ライターは、記事の構成を考えながら担当試合を観ている(たぶん他の人もそうだと思う)。メモを取りながら、僕はこの試合は白鳥メインで書くつもりでいた。展開、チーム状況、そして何より麻雀の内容がすごく面白いと思ったからだ。

「冥府の先導者」はいったん置いておくとして、「麻雀ハイブリッド」と称される彼の麻雀には多様な引き出しがあり、それらを的確に使い分ける状況判断も非常に巧みである。

東2局を見てみよう。この局、白鳥の配牌はかなり良かった。最初のツモで【2ピン】を埋めてメンツが完成、役牌【發】がトイツで、うまくまとまれば【赤5ピン】こそ出ていくもののチャンタ三色まで見えそう。

しかし、ここから全く手が動かない。7巡連続ツモ切りの後に引いてきた【5ソウ】はドラ、白鳥はここで【赤5ピン】を離した。どちらもドラ含みの578という形だが、【5ソウ】の方が重なると高くなる・・・という楽観的な考えがあったかは分からないものの、どちらかというと守りに重きを置いた選択だと思われる。

全体牌譜を見ると、魚谷の河が不自然だ。第1打【5マン】から、【2ピン】【3ピン】ツモ切りの後に【4ピン】【6ピン】を手出ししており、【2ピン】【4ピン】【6ピン】の形の残さなかったことが分かる。そのあとに【9ソウ】手出し、これが最初のソーズで、字牌も1枚も切っていない。典型的なホンイツっぽい捨て牌、しかもドラ色ということで、白鳥はソーズを受け入れられる形を残そうとしたのだろう。

【9ソウ】切り時点での、魚谷の手牌。まだまだ遠いが案の定、ゴリッとホンイツである。

赤を切った白鳥だが、もちろん自分のアガリは見ている。【發】が出たのでポン、【9マン】を切って1シャンテンに。魚谷はソーズを1枚余らせただけで、まだテンパイと断定できる要素はない。すぐに自分がリャンメン待ちでテンパイできるなら勝負の構えだ。それにドラを残したことでソーズはかなりの牌を吸収でき、切り返せそう。

【7ソウ】を引いてピンズのリャンメンターツ払い。1シャンテンは狭くなるが、【5ソウ】を残したことでソーズを使ってのアガリルートが残せている。

さらに、事情が変わる【赤5ソウ】を引いた。ドラドラ赤の満貫と、打点が一気にアップ。1000点2000点ならこの先のオリも考えられたが、8000点なら押す価値はある。

園田から【7マン】が鳴けて、【7ソウ】をプッシュ。

ホンイツ1シャンテンの魚谷は、ツモってきた不要な【9ソウ】をいぶかしげに見つめながらもツモ切り。

白鳥の攻撃と守備のバランスを取った手組みと進行が見事な一局となった。

その後はやや点数を減らしていたものの、南2局で園田から5200を出アガリし、失点を回復する。迎えた南3局はいまいちの手牌、安全牌を残してスリムに進行する打【5ソウ】を、園田がカンチャンでチーした。

次巡、白鳥はメンツから【6マン】を抜き、

さらに打【7マン】

園田は急所が鳴けた。タンヤオドラ赤赤、満貫テンパイ。

もちろん、一連の打牌は意図的なものだ。仕掛けの打点は分からないが、ここは自分が前に出るより園田を頑張らせて高宮の親を蹴ってもらおうという作戦。もちろん園田の手が高くてオーラスの点差が縮まる可能性はあるが、それよりも【1ピン】【2ピン】ターツを払って速度感のある高宮に連荘されるほうがトップ率は下がりそう。自分がやれないなら相手を利用するという、クレバーな立ち回りである。

白鳥としては、園田の満貫までは許容範囲だっただろう。しかし結果は高宮ノーテンでの流局。決着の仕方としてはベストに近い。

迎えたオーラス、白鳥は1枚目の自風【東】はスルーするも、次の【南】はポンした。直前にカン【2マン】が埋まったことが大きいが、この時点ですでに1シャンテンだし、攻撃を受けても【東】【1マン】【2ピン】といった安パイを使ってしのぐことが可能。アガれれば園田の満貫ツモ条件、高宮の満貫出アガリ条件を消してさらなる加点を目指せるし、流局ならノーテンでトップを確定させればいい。

道中でドラの【北】を格納、ホンイツが見える手牌になるも目いっぱいには受けず。相手に打点を作らせる隙は見せない。

試合の主役は最後まで、白鳥・・・のはずだった。

そのリーチがかかるまでは。
その刃が振りかぶられるまでは。

高宮まり、鋭く攻め抜くベルセルク

高宮はこの試合、随所で鋭さを見せていた。

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