松ヶ瀬隆弥、
動かざるは山の如し__
文・江崎しんのすけ【月曜担当ライター】2024年10月14日
第2試合
東家:鈴木たろう(赤坂ドリブンズ)
南家:松ヶ瀬隆弥(EX風林火山)
西家:茅森早香(セガサミーフェニックス)
北家:白鳥翔(渋谷ABEMAS)
Mリーグのルールは、順位点の比率が高いと言われている。
1着:+50.0pt
2着:+10.0pt
3着:▲10.0pt
4着:▲30.0pt
1ptはスコアでいうと1,000点なので、トップになれば追加で5万点され、逆にラスになったら3万点失うということだ。
3万点はMリーグでの平均打点が約6,500点なのでアガリ約5回分で、子の役満に匹敵する。
仮にオーラス全員が僅差の状況で、1,000点アガれば1着だが1,000点放銃すると4着になるとする。
その場合、1,000点アガるか放銃するかどうかで、上下80pt、つまり8万点変わることになる。
それゆえMリーグでは1つでも上の順位で終了することが大事で、トップが取れなくても2着、3着を守ることが成績に直結してくる。
Mリーガーはリスクとリターンを常に想定しながら打牌を選択しているが、順位点が大きくのしかかる試合終盤は様々な要素が複雑に絡み合い、選手のスキル、そして胆力が求められる。
Mリーグ2024レギュラーシーズン34戦目。
南3局の時点で、たろうが大きくリードしていた。
持ち点は61,300点。東1局の親番で高打点を連発し、稼いだ持ち点をその後も減らさず、隙の無いゲームメイクでトップを維持していた。
たろう以外の3人はトップは難しいため何とか2着を持ち帰りたいところ。
ラス目の松ヶ瀬は7,000点で親番は残っていない。
2着目の白鳥とは12,100点差、3着目の茅森とは5,600点差だった。
満貫・跳満クラスの手を1回アガれば2着浮上まで見える点差ではあるものの、これ以上点差が離れるとオーラス満貫ツモでも着順アップができなくなる可能性もあるため、白鳥・茅森のアガリは歓迎できない。
アガれそうなまとまった配牌だったが、ドラもなく打点が見込めないためタンヤオを目指しを切っていく。
5巡目イーシャンテンに。
受けが狭いがを払ってタンヤオを確定させる。
を引いて受け入れが広くなる。
とドラが使えるようにを残す。
そして12巡目、いよいよテンパイ。
が暗刻になってのテンパイ。
かにくっついてくれれば簡単なのに、あまり嬉しくない形でテンパイする。
形は不十分だが、12巡目ということを考えれば単騎でリーチをかけてしまう手もある。
先ほど書いたように白鳥・茅森のアガリは阻止したいため、2人に自由に打たせないためにもリーチをかけ、その間にをツモりにいく作戦だ。ツモって裏が乗れば茅森を逆転することもできる。
ただ単騎は1枚切れで、山に残っているかどうかは分からない。
実際には白鳥の手の中に2枚あり、山には残っていなかった。
松ヶ瀬の選択は…
単騎のダマテンだった。
単騎を最終系とはせず、あくまでアガれる形を求めていく。周りを引いてマンズのリャンメンになるか、ピンズの2~7を引けばフリテンだが多面張になる。
タンヤオがついているため、が出ればアガることができる。
直後、茅森からが放たれる。
松ヶ瀬は…
微動だにしなかった。
1,000点ではあるものの、3着目茅森からの直撃なので、アガれば点差は2,000点縮まり3,600点差でオーラスに進むことができる。
ただオーラスどんな手がくるか分からない以上、松ヶ瀬はここで勝負を決める決断をする。
仮に流局したとしても松ヶ瀬的には悪くない。茅森がテンパイしておらず一人テンパイなら4,000点差が縮まるので1,600点差とほぼ並びになり、茅森がテンパイしていた場合は2着白鳥と3,000点差を詰めてもう1局行うことができるからだ。