親の加藤がこの一向聴取らず。38000点持っている親番で安い愚形のリーチを打ちたくないという意思が伝わる一打だ。
この聴牌も曲げず。が二枚切れなこともあるがそれ以上に前巡ドラを打ってきたモトに対するケアもあるだろう。徹底した打ち方である。やはり30年目の今年にかける思いは人一倍か。
ドラ打ったモトの手牌はこう。非常に受け入れの広い一向聴である。一方でモトも技を見せてくる。
ここから打。アタマを固定する打牌だ。もちろんこれには理由がある。ポイントは加藤の打である。現在トップ目で守備的に局を回したいはずの加藤が全員の現物であるを切ってきた。これはかなりの危険信号である。加藤のダマテンが入っていておかしくない状況であり、そう考えるとは相当危険な牌だ。22年ぶりの最強戦の舞台でこの冷静な判断を行えるモトの雀力の高さが伺える。
結局この局は加藤のツモ上がり。さらに点数を伸ばすことになった。
東3局2本場
本郷がドラドラの勝負手で自風のをポン。ここは打とした。くっつきの枚数では切りが有利に見えるがこのを残すことで……
この引き!ドラののポンに頼らずして自風・チャンタ・ドラドラの満貫が見える。非常にクレバーな打ち筋だ。これには解説の片山、馬場も絶賛。
狙い通りをチーしてカンの満貫聴牌を果たすも…
飛んできたのは矢野のリーチ。が自分の目から3枚見えているノベタンだがここはリーチに踏み切った。多面張になる待ちは自分が切っていてフリテンになってしまうため、本郷の仕掛けのスピードも考えて止む無しといったところだろうか。
これに押し返すのは本郷。ドラも全部見え、矢野の打点が高くなさそうなのも味方し無筋を猛プッシュ。しかしラス牌のを掴んでしまう。ここは当然プッシュか……
降りだ。本郷のツモ番は後2回。場には全体的にソウズが高く、3人にそれぞれ持たれていそうなことを考えると決していい待ちではない。一方、は矢野のリーチの宣言牌に関連する残った唯一の筋だ。自分の親番が二回あることも視野に入れただろうか、ここは降りに回った。この局は本郷の読みが冴えわたるも、矢野の一人聴牌で流局する。
東4局3本場
これまで発声をすることなく、静かに息をひそめていたモトが1枚目のにポンテンを入れる。
そのままツモアガリ。300/500の三本場、供託一本と東1局の親被りを返済するアガリだ。局が進み、2着争いがより熾烈になるこのアガリは加藤にとっては僥倖である。
南1局
モトの親リーチが飛んでくる
高め親マンの勝負手だ。これを受けて困ったのが加藤。
手詰まりである。モトの河が強いこともあり、切れる牌がなくなってしまった。これを受けて加藤の選択が……
打!宣言牌の筋であるでは通っても1巡しか粘れないし、危険度も無筋と大差ない。しかし単騎・両面にしか当たらないを通せば三巡凌ぐことができ、更にタンヤオなどで復活する未来もある。お手本のような手詰まりの降り手順である。
この局は終盤で本郷、加藤が聴牌を入れ三人聴牌で流局。ここまで矢野はなかなか見せ場がない状況になってしまっている。
南1局1本場
モトがツモ切りリーチ。
宣言牌の筋になってしまうを切ってのリーチを避け、一巡だけ手替わり・空切りできる牌を待ったが、自分の河の強さもあり、押さえつけも兼ねてリーチといったのだろう。
本郷の追っかけリーチがかかるもこれをツモ!
裏ドラも乗っけて4000オール!一気に二着争いから抜け出した。
続く南1局2本場でモトは12000のダマテンを入れ、本郷へのホンイツへの放銃を回避する選択をするも流局。
この聴牌料で加藤を捲ってトップにまで立った。
続く3本場でも早い巡目に場風ドラドラの7700は8600を矢野から出アガリ。
矢野には辛い展開が続く。
4本場ではもう勘弁してくれと言わんばかりの加藤のタンピンツモで局が回る。
南2局
ここが矢野の正念場である。
役牌対子が二組に片方はドラ!すぐにが出てこれをポンし……
ここは打とした。一般的にはマンズのどちらかのペンチャンを落とす5ブロックか、打として両面を固定しつつ両方のペンチャンチーに備える6ブロックにするかであろうか。しかし矢野は場況が不明なマンズを現段階で固定することを嫌い、かつ打点が必要な展望状況であることから、自らの二つ名である“暗刻の女神”を信じてドラが暗刻になった時に聴牌逃しになりにくい形に取ったのだと私は思う。
その後先に萬子のペンチャンが埋まりとのシャンポンの聴牌。
ここで事件が起こる。
本郷のリーチを受けてモトが一向聴から打。
……?
そう、矢野の当たり牌である。
打った瞬間つぶやく「ドラか……」