アガリの連射で
勝利をこの手に
苦境をはね除けた逆襲の
ヒットマン・松本吉弘
文・東川亮【月曜担当ライター】2020年10月19日
大和証券Mリーグ、2019シーズン。
レギュラーシーズンでは23戦を戦い、トップ3回、ラス9回。
「ヒットマン」と呼ばれる男が他家のアガリ牌を掴むたび、中継のコメント欄やSNSはファンの嘆きや面白おかしく取り上げる書き込みで埋め尽くされた。
そして迎えた2020シーズンも、松本は初戦から3着・3着と苦戦。
「今シーズンも同じなのか・・・」
そんな声を振り払うには、自らの麻雀で結果を出すしかない。
戦い続けなければ、そして勝たなければ、この舞台に残ることは許されないのだ。
第1回戦
東家:小林剛(U-NEXT Pirates)
東1局、村上のリーチに対し、松本も無スジのを切り飛ばし、追っかけリーチ。
待ち牌の数は松本の方が多かったが、大きく「ツモ」と発声したのは村上だった。
ツモ山にあった最後のアガリ牌で満貫を決め、リードを奪う。
迎えた親番では小林の先制リーチを受けてしまい、松本は直後にテンパイするも小林が一発ツモ。
裏ドラが2枚乗り、ハネ満を親かぶってしまう。
どうしようもないこととはいえ、展開の悪さに表情を曇らせる松本。
さらに次局も親の村上に満貫をツモられ、無放銃で1万点以上の失点を喫してしまった。
東3局1本場では、6巡目のタンヤオ平和ドラ1をリーチするも、不発。
入り目のカンは小林が直前にポンした牌であり、目に見えて最後の1枚だった。
麻雀をよく打つ方であれば、こういう牌が入ったときはアガリを確信するものだろう。
おそらく松本も相当な手応えがあったと思うが、これがアガれないのも麻雀である。
不運は続く。
流局で迎えた東4局2本場、2メンツに赤が2枚と、まとまりそうな上に打点も見える形。
前巡に、そしてと不要なターツを払っていく。
「ロン」
そこに、滝沢の渋い声が響いた。
開けられた七対子ドラドラ、9600は10200の失点。
唇を噛みしめる松本。
このときはさすがに「帰りたくなった」と心が折れかけたという。
しかし彼は、昨シーズンのファイナルでは似たような状況から逆転勝利を収めている。
その経験をしっかりと血肉にしていたのだろう、この日の松本はここからが強かった。
東4局5巡目、が重なった場面。
メンツ手を見るとして、どこを外すか。
松本の選択は打。
村上の第1打が、小林の第3打がということで、カンがいいと見ての判断か。
これがズバリとハマり、狙ったカン、そしてと立て続けに有効牌を引き入れてリーチ。