アガリの花よ、咲き誇れ
黒沢咲の『セレブ麻雀』が
サンダーロードを
明るく照らす
文・東川亮【木曜担当ライター】2022年10月6日
大和証券Mリーグ2022-23シーズン。TEAM雷電にとっては過去4年間の、とりわけ1256.1ptものマイナスを記録した昨シーズンの屈辱を晴らすための、勝負の1年となる。
だが、スタートは振るわない。開幕戦、萩原聖人渾身の四暗刻テンパイは実らず。
逆に本田朋広は、伊達朱里紗の四暗刻を親かぶり、4着に沈んだ。
10月6日の第1試合。瀬戸熊直樹は高打点飛び交う乱戦のなかで、満貫2回を含む4度のアガリを決めるも3着に終わった。展開も雷電に味方しない。
迎えた第2試合。卓に向かうのは、この日誕生日を迎えた「強気のヴィーナス」黒沢咲。雷電を応援する「ユニバース」は知っている。停滞するチームの雰囲気を変えるのは、明るく激しく、華やかで力強い、黒沢の麻雀であることを。
さあ、アガリの花よ、咲き誇れ。
第2試合
東家:村上淳(赤坂ドリブンズ)
南家:高宮まり(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
西家:二階堂瑠美(EX風林火山)
北家:黒沢咲(TEAM雷電)
相手の読みを狂わせる「黒沢ブランド」
東2局。ここまでは村上、高宮とアガリを決めているが打点は低く、まだまだ勝負はこれからというところ。この局は、高宮のダブ東ポンから状況が動き出す。
を切った黒沢の元に、2枚目のドラが訪れる。なお、高宮が5巡目に切った自風は当然のようにスルーしている。軽い仕掛けを使わず手を高く育てるところは、まさに「セレブ麻雀」。
最初にテンパイしたのは高宮。を引き入れてダブ東赤赤、打点も12000と強烈。
現状は中ぶくれのシャンポン待ちだが、好形変化する牌は多い。
村上もポンで追いつく。の3メンチャンだが、現状山に残るアガリ牌はのみ。
高宮がを引いて打、待ちに変化。
1シャンテンだった瑠美は、通っていないを引いて現物を合わせ、一歩引いた。
村上対高宮、2人の勝負に思えたところに、第3勢力が現れる。
「ポン」
2枚目の自風をポン。これだけなら、麻雀ではごくごくありふれた事象だ。だが、頭に「黒沢が」とつくだけで、話は大きく変わる。黒沢と言えば、昨シーズンのフーロ率が約8パーセントと、全32選手中最も低い打ち手である。その黒沢が鳴くなら、それは鳴くに見合う手ということ。
安い鳴き、かわし手を駆使するタイプではなく、実際にドラドラ赤で満貫の1シャンテン。ただ、テンパイではない。
対応していた瑠美がをつかむ。この日解説を務めていたKADOKAWAサクラナイツ・内川幸太郎は「になりますよ」と言った。高宮の現物で、タンヤオ模様の村上にもかなり通りそうな牌。
だが、瑠美はをツモ切り。
高宮への12000放銃となった。
このときの全体牌図(※黄色がツモ切り、白が手だし)
高宮は手出しの後に村上の切ったには声をかけず、その後を手出し、カンチャン落としを見せている。もし手の内にターツがあるなら、は鳴いていそう。つまりが鳴ける形ではない、だからも当たるパターンが少ないと読んだか。ただ、それでも高宮・村上だけを見るならを切ればよく、暗刻のも通る牌で、切りで無用なリスクを負う必要はなかった。
https://twitter.com/EX_Furinkazan/status/1578065833817182211
試合後、瑠美は「黒沢にビビってしまった。の形(待ち)があると思った」と痛恨の放銃を振り返っている。黒沢が安い仕掛けをするわけがないという前提の上での発言だ。
そして切られたは、黒沢に対しての現物だった。
これは、鳴きを使わず高打点を追う「黒沢ブランド」の副次的効果と言えるだろう。本人はこれを意図してやってはいないのだが。