映像ハイライトには残らない、鈴木優の強烈な攻め【Mリーグ2026-27 観戦記 10/15 第1試合(麻雀ch)】担当記者 虫かご

映像ハイライトには残らない、鈴木優の強烈な攻め

文・虫かご【木曜担当ライター】2026年10月15日

日常生活において「バランス」はとても大切だ。

たとえば、食事。味が濃いものばかり食べていれば、生活習慣病まっしぐらだし、反対に節制しすぎても栄養失調で体調を崩してしまう。

麻雀も同じだろう。卓についた4名の選手はみな、常にバランスを取りながら戦っている。

目の前に並べられた13枚の牌、さらには卓上にだんだんと増えていく捨て牌の河をじっくりと観察しながら、攻撃に踏み込むのか、守りを固めるのか、自問自答を繰り返しながら手を進めている。

その様子は、いまにも崩れそうな岩場の上を歩んでいるようだ。

そして、Mリーグでしのぎを削るトッププロたち40名のなかでも、そのバランスメーターを限りなく「攻」に振り切る選手がいる。

名を、鈴木優という。

彼の持ち味は、二つ名を「戦闘民族」と称される鋭い切り込み。自身が劣勢に立たされている状況でも、相手のアガリになり得る1枚を一本槍のごとく突き出し、運命をこじ開けてきた。常人では引き下がってしまいそうな場面でも攻めを貫き通す姿勢は、同じ麻雀プロからも一目置かれている。

これは、そんな攻め屋が見せた、あまりにも強烈で爽快な逆転劇。

第1試合

東家:鈴木優(U-NEXT PIRATES)
南家:中田花奈(BEAST X)
西家:鈴木たろう(赤坂ドリブンズ)
北家:伊達朱里紗(KONAMI麻雀格闘倶楽部)

この日の優は、開局直後から大きなビハインドを背負うことになる。

東1局。なかなかテンパイにたどりつけない優を追い越し、中田が【白】単騎のチートイツで先制リーチをかける。

対する優は、一度テンパイを外したときに切っていた【3マン】を再びツモり、理想型ではないながらもカン【4マン】待ちで追いかけた。

ここに割って入ったのが、伊達だ。優のリーチが入った段階ではリャンシャンテンだったが、するするとツモが伸び、最終的にはラス牌の【1マン】を引き入れて【6ソウ】【9ソウ】待ちでリーチをかけた。

直後、無情にも優がツモってきたのは【9ソウ】。

裏も2枚乗り、優にとっては手痛い12000の放銃となった。

攻撃に強みを持つ優の武器を「一本槍」とするならば、伊達がその手に携えるは「弓矢」だろうか。基本的には守備に重きを置きながらも、相手との間合いを常にはかり、機を見極め、いざという場面で矢を放つ。常に場を俯瞰で捉えながら、踏み込みたい場面でリスクを最低限にとどめようとする手組みが、伊達の魅力だろう。

その後は中田の反撃もあり、東場を終えた段階では女性選手2人がリードする展開となった。

序盤の放銃が響き、トップ目の伊達まで21800点差の4着目となっていた優。粘って親番をつないだ南1局1本場で、彼の真骨頂とも言える「攻め」の姿勢が、見ている者に衝撃を与えた。

先手を打ったのはたろうだった。手牌を内側に寄せながら進行し、10巡目で【5ピン】【8ピン】【7ソウ】待ちのリーチにたどり着いた。これが山に1枚。

対する優。たろうの現物を打ってしのいでいたが、3段目にさしかかったところで【4ソウ】を引いてきた。たろうの河には【1ソウ】があり【1ソウ】【4ソウ】待ちは否定されているものの、【4ソウ】【7ソウ】には通っていない。ライバルであるたろうにアガられて親番を落とすと、トップはおろかラスが近づいてしまうこの状況で、優はどのような道を選ぶのか。

ひと呼吸置いて、優は静かに【4ソウ】を押した。

実況の日吉さんが「うーわ」、解説席の土田さんも「さすが」とこぼした明確なプッシュ。優本人はこのとき、たろうがリーチ前に手から切っていた【1ソウ】と【2ソウ】に着目していた。

4巡目に【1ソウ】を切ったあと、間を空けて連続で【1ソウ】【2ソウ】切り。対局後のインタビューでは、すでに【1ソウ】【2ソウ】【3ソウ】の面子が完成していたところから、新たに引いてきた牌と入れ替える「スライド」に見えたと振り返った。そう仮定するならば、優が持ってきた【4ソウ】はすでにたろうの手で面子に組み込まれており、当たり牌になる可能性は少ないと読んだのだ。

この一打で、たろうに堂々と宣戦布告した優。続けざまに持ってきた【9マン】も、素知らぬ素振りで河に並べる。

極めつけはその直後、【6ソウ】を引いてきた場面だ。リーチ後にたろうがツモ切りした【4マン】を切れば、安全にイーシャンテンを取れたが、優は無筋の【4ピン】切りを選択した。

この場面で優が注目していたのは、「受け入れ枚数」と「ドラ」だった。【4マン】を切ると、【5マン】【8マン】【5ピン】【8ピン】を受け入れられるイーシャンテンとなるが、すでに【5マン】【8マン】が優目線で5枚見えており、待ちにやや不安が残る。ならばと、【7マン】や【8ソウ】が暗刻になった場合でもテンパイを組める【4ピン】切りを選んだ。ドラの【西】がすべて切られていたことも手伝ったという。

こうして見ると、勝利への強烈な執着と、それを叶えるべく相手に立ち向かえる理由を常に探し続けていることが、優の攻撃力の礎であることが分かる。

結果的には、奮闘もむなしく、たろうのみのテンパイで親落ちとなったが、彼のスタイルが存分に表れた一局となった。

優のファイティングポーズに麻雀の神様が応えたのは、直後の南2局2本場だった。

ここでも先制したのはたろう。カン【5ソウ】待ちでリーチをかけたが、これが山に残っていない。

その【5ソウ】を、赤も含めて3枚手中におさめていた優は、リーチの直後に【東】を引いて暗刻とする。

完全な安牌がないなか、いっそ【4マン】【5マン】を落として四暗刻へ……、などという考えもよぎるが、優は【6ソウ】の対子に手をかけた。

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