泰然自若・黒沢咲のセレブ麻雀は 正念場でこそ輝きを放つ【Mリーグ2022-23観戦記3/9】担当記者:東川亮

泰然自若
黒沢咲のセレブ麻雀は
正念場でこそ輝きを放つ

文・東川亮【木曜担当ライター】2023年3月9日

大和証券Mリーグ2022-233月9日初戦を取ったのは、6位・TEAM雷電本田朋広だった。一方、7位・赤坂ドリブンズ鈴木たろうは痛恨の箱ラス。

ドリブンズにとっては、残り試合が少なくなるなかで現状のターゲットである雷電との差を一気に広げられる、非常に痛い結果となった。この日を終えると、両チームの直接対決は3月13日を残すのみとなる。

セミファイナル進出へ、数少ない機会を生かさねばならない。
ドリブンズが2戦目に送り出したのは、エース・園田賢

雷電からは、黒沢咲が出場。過去のMリーグにおいて、彼女は3月に、数多くの劇的な、あるいは奇跡的な勝利を収めてきている。

つながるのは、ドリブンズの可能性か、雷電の勝利の連鎖か、それとも。
短くも濃密だった、第2試合の幕が開いた。

第2試合
東家:園田賢(赤坂ドリブンズ) 
南家:多井隆晴渋谷ABEMAS
西家:鈴木優U-NEXT Pirates
北家:黒沢咲(TEAM雷電)

泰然自若のセレブ麻雀

泰然自若。
緊迫した状況であっても常に落ち着き払っていて冷静な様子を指す言葉だ。
思えば、この人が慌てたり焦ったりしている姿はあまり想像できない。

とはいえ、このレギュラーシーズン最終盤においては、一つのアガリ、一つの着順アップ、そして一つの勝利が何よりも欲しい。そんな状況で東2局、黒沢の手は早々に、赤とドラを手の内で使った1シャンテンとなった。ただ、園田と優が既に仕掛けを入れている。

自風の【西】をポンすれば3900点のリャンメン待ちテンパイ。Mリーガーを含め、ほとんどの打ち手が鳴いてテンパイを取るだろう。

それでも、黒沢は鳴かない。彼女は、満貫・ハネ満が見える手を早々に鳴いて安くするようなことはしないのだ。Mリーグを長く見ている人にとってはもはや当たり前に思うだろうが、やはりこの麻雀は異質であり、異端である。

そして、Mリーグを長く見ているならば、この光景にも既視感を覚えるはずだ。仕掛けて3900のテンパイをスルーした先にあった、ドラ3内蔵のリャンメン待ちリーチ。

ツモって裏1、3000-6000。

「安い手はみなさんでお好きにどうぞ、私はきれいで高い手をアガる、そして勝つ」
そうなのだ。黒沢咲は、この麻雀で勝ち続けてきたのだ。
雷電のチームメートも、そして応援するユニバースも、【西】を鳴かない黒沢に頼もしさすら感じていただろう。

東4局1本場の親番、黒沢はわずか3巡目でピンフ高目三色のリーチをかける。高目ツモなら6000オールスタートだったが、ツモったのは安目。アガリの宣言には少しだけ渋々感がうかがえたが、

裏ドラが乗るならまあ良しとしましょう。会心、とまではいかずとも強烈な4000オールで、黒沢が相手3者を一気に突き放した。

恐れを知り、なおも踏み込む戦闘民族の勇気と気概

この試合、鈴木優の目は、いつも以上に鋭く、戦意に満ちていた。

黒沢がハネ満をツモった東2局、優も役役ホンイツ満貫をテンパイしていた。そこに引いてきた無スジの【3ピン】

これは、【5ピン】切りリーチの黒沢はもちろん、【6ソウ】チー打【4ピン】が最終手出しの園田にも、テンパイであればかなり当たりそうな牌である。自身の手牌の価値が高いとはいえ、あまりに危険。もちろん、優にそれが分からないはずがない。

それでも、戦闘民族は攻めることを選んだ。点数を失うならば、取り返せばいい。黒沢咲というMリーグきっての打点派を相手に回しても、優の闘志は揺るがなかった。

優は先述の東4局1本場でも、いったんは黒沢のリーチに迂回をしつつ、勝負できる形になりそうなところでは無スジをビシッと押している。

もちろん、やみくもに押しているわけではない。自分の手にドラが複数あって打点が担保されており、押してアガれたときの見返りが大きいのが理由としてあるからなのだが、それでも安易に現物や字牌の暗刻落としなどに頼らないところは、さすがの戦闘民族と言ったところ。

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