2900と1300だけでも
トップが取れる
恐るべき藤崎智の幻術
文・渡邊浩史郎【金曜担当ライター】2020年11月27日
Mリーグはまさに戦国時代!!
長く続いた赤坂ドリブンズ、EX風林火山の二強体制に渋谷ABEMASが大きく名乗りを上げたのがつい最近。下位4チームも5位から8位までの差はわずか35.9ポイント、いつどこが抜け出してもおかしくない。
そんな中行われた、本日の第一戦。村上、黒沢、沢崎と名だたる「武」の将軍が軒を連ねた卓上の戦場、紛れ込んだのは「忍者」藤崎。
第1試合
南家 沢崎誠(KADOKAWAサクラナイツ)
西家 藤崎智(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
高打点・鉄守備の猛者たちが集うこの戦場、麻雀忍者はどう立ち回るのか。見ていこう。
【東1局】
親の村上がポン。チーでこの形。
ここはを打っていく。を持っていても受け入れが広がらない形なので、安全度も兼ねて先打ちだ。
を打ってピンズを余らせたとなると、これから先何一つ鳴かせてもらえないというデメリットも存在するが、もとよりこのメンツ、そして村上ブランド。2副露の時点で何も出てこなくなることは容易に想像がつく。だったら他家により強く聴牌を意識させて降ろし、悠々と自分のツモで聴牌を目指そうという魂胆だ。
藤崎もここからあっさり打。ドラもピンズも浮いているリャンシャンテンでは到底勝負にならない。
次巡、引きで打6。あっさり両面ターツを壊す。村上の手がホンイツとは限らない。ドラを使った高打点の手に振らないよう、ここは忍んだ形だ。
忍んだ形だったが……
この聴牌、七対子ドラドラとなったら忍んではいられない!
村上は→と手出ししている。が四枚見えのこともあり、は両面でしか当たり得ない牌。カンチャン、シャンポン、単騎もあり得るよりかはこちらのほうが押しやすいという判断だろう。
とはいえ親のホンイツ模様の手への終盤プッシュ。忍者というにはあまりに忍べていないその押し方。
「藤崎さん、忍べてませんよ」
「今回は忍んだ気は毛頭ございませんよ。ニンニン」
そんな牌を通した会話が聞こえてくるかのような、村上の切り。大事な親番、ツモ番もまだ一回ある中で、聴牌をとることをあきらめて藤崎の現物を選んだ。どうせドラが打ち切れないなら聴牌を取れる形を残す必要がないという判断だ。
結局藤崎の一人聴牌で流局。
印象的だったのはこの時の沢崎。
藤崎が手牌を開く前から点箱を開ける=ノーテン罰符を支払う準備をしていた。
確かにダマとはいえ相当聴牌に見えるが、この辺りは沢崎の藤崎に対する打ち手としての信頼度が如実に出た場面であるように思えた。
【東2局1本場】では終盤、煮詰まった局面でのピンフのみ忍びダマ。黒沢のリーチの当たり牌を一発で掴んで降りと、場の状況を見据えた鋭い忍び術を発揮する。
【東3局2本場】では軽快に1枚目のからポン。
とチーしてここは目一杯に構えず打。瞬間の受けこそ失うが、後にシャンポン部分が両面変化したときなど、手出しが入ることでのシャンポン受けが見えづらくなる時がある。瞬間少し損をしてでも後の上がりやすくなる可能性を買った形だ。
これが黒沢から出アガリ。2900は本場と供託を足して5500の収入となった。
【東4局】
村上→沢崎への横移動があって親が流れた次局。藤崎が積極的に仕掛けていく。
村上の第一打のをポン。自風のが暗刻で安全度も高い、ホンイツが見える仕掛けだ。
「藤崎さん、あなた忍ぶ気あるんですの?」
そう言いたげに一瞥を交わす。そんな親の黒沢の手牌がこれだ。