徐(しず)かなること
林の如く
リーチを使わず
勝利をもぎ取った松ヶ瀬隆弥
文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2022年2月7日
大和証券Mリーグ2021レギュラーシーズンは、全日程の4分の3を消化。首位争いはもちろんのこと、セミファイナル進出圏内の6位以内を巡る争いはいよいよ佳境を迎える。初戦だろうが90戦目だろうがポイントの価値自体は同じだが、1試合の結果の持つ意味は、ますます大きくなっていくだろう。個人タイトルの行方も含め、ここからの5週間、残り20試合は、個人的にはMリーグにおいて最も盛り上がる時期だと考えている。
第1試合
東家:岡田紗佳(KADOKAWAサクラナイツ)
南家:朝倉康心(U-NEXT Pirates)
西家:萩原聖人(TEAM雷電)
北家:松ヶ瀬隆弥(EX風林火山)
東1局1本場、最初にテンパイを入れたのは松ヶ瀬。一気通貫ドラ赤の役あり満貫をダマテンに構える。
そこに追い付いたのが親番の岡田。タンヤオチートイツドラドラ赤でダマテンでハネ満と、松ヶ瀬に増して打点が強烈である。
3番手は朝倉、は最もいい待ちだがリーチのみ、打点は現状最も低い。
直後の萩原。手牌は1シャンテンで、くっつき候補として残していたは朝倉の現物。しかし、これを切ると岡田に18000を打ち上げてしまう。
萩原が切ったのは通っていないだった。有効な浮き牌を残して反撃しようという、攻撃的な選択だろう。結果、ここでの放銃を回避する。
親の現物待ちで突っ張り続けた岡田だが、先につかんだのは。
ダマテンで押し切った松ヶ瀬が8000は8300を出アガリし、リードを奪う。
東3局1本場の松ヶ瀬。123の三色が見えるところでが暗刻に。
ここは三色を見切る切り。こちらであればタンヤオで動ける分、柔軟性は高い。
ドラを引いた直後のタイミングで、1シャンテンだった萩原から絶好のが打たれ、これを鳴いてテンパイ。
萩原のリーチの直後にをツモり、2000-4000は2100-4100。着実にリードを広げていく。
松ヶ瀬は南1局でもタンヤオドラ3を朝倉から出アガリ、8000点に岡田の朝倉のリーチ棒2000点分を回収。まだ気が早いとはいえ、現状首位のパイレーツ朝倉とトップラスという、松ヶ瀬と風林火山にとっては理想的な並びが生まれた。
その後は岡田が南2局にツモドラ3の2000-4000、
南3局1本場では朝倉からリーチイーペーコー赤の5200は5500を出アガリして加点をするが、
それでもなお松ヶ瀬と岡田の点差は13600。松ヶ瀬は岡田の満貫ツモ圏外というトップ目でオーラスの親番を迎えた。
松ヶ瀬の手は3巡目で赤赤、形もそれなりにまとまっている。基本的にはこの局で試合を終わらせるつもりなのでリーチをかけることはないが、もしダマテンで高くアガれるなら、一気に素点も稼ぎにいきたいところ。
岡田は1打目から真ん中の牌を河に並べ、逆転トップに必要なハネ満ツモ条件をジュンチャンや三色絡みで狙っていく。
だが、この男だって黙ってはいられない。ポイント状況的に雷電はトップが必須だが、たとえそれが難しくとも、ベターな結末を追う。
岡田をまくっての2着浮上に必要なのは倍満ツモ条件。チートイツドラドラが色濃く見える1シャンテンは、その成就の可能性を秘めている。さらに言えば、ここから四暗刻での逆転トップをも、おぼろげにイメージしていたかもしれない。
次巡、を重ねてリーチ。ツモって裏ドラを乗せれば逆転2着だ。
萩原は、これがこの試合5度目のリーチだった。4回はいずれも空振り、しかも東3局1本場、東4局のリーチは、1度もツモることなく他者のアガリでつぶされてしまっていた。
南3局では、ドラ表示牌で2枚見えのカン受けを外したところにを引くという、まさかの裏目。この局は待ちフリテンリーチを打つも空振り。ここまでの戦いは、本当に厳しかった。