俺はこの舞台で
あなたに勝つ
松ヶ瀬隆弥、
多井隆晴との
戦いの序章
文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2020年10月14日
筆者は松ヶ瀬隆弥が優勝した「EX風林火山ドラフト会議指名選手オーディション」を長く取材し、松ヶ瀬本人にはオーディション優勝直後にも話を聞いた。
神様が『勝ってもいい』と言ってくれた気がした EX風林火山で、2連覇を成し遂げたい EX風林火山ドラフト会議指名選手オーディション決勝戦【松ヶ瀬隆弥インタビュー】
その中で、松ヶ瀬には自身が所属するプロ団体「RMU」の代表であり、麻雀界の第一線で活躍する多井隆晴との対戦について、このように語っている。
「試合をするのが一番楽しみ。RMUの多井隆晴じゃない、渋谷ABEMASの多井隆晴を感じてみたい」
松ヶ瀬にとっての大和証券Mリーグ5戦目。ついに、純白の卓で多井と相まみえるときがきた。彼らは自団体のリーグでは何度も戦っているが、やはりこの舞台での対戦には感じ入るものがあるだろう。松ヶ瀬も、そしておそらく多井も、いつかこんな日が来ることを待ち望んでいたはずだ。きっと、ずっと前から。
第2回戦
西家:石橋伸洋(U-NEXT Pirates)
北家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘俱楽部)
東1局、コーンロウのヘアスタイルで表れた松ヶ瀬は、第1打からど真ん中のを切り出していく。
直後にをポンして打。カンチャンとは言えいきなりど真ん中を外し、周りから見ればただごとには見えないだろう。
そんな松ヶ瀬に対し、多井は1枚浮いた中をおいそれとは切らない。異様な切り出しを考えれば、一色手はもちろん、大三元すら視野に入る。松ヶ瀬にをチーされてからは、徹底して松ヶ瀬に危険な牌を切らなかった。
松ヶ瀬はを引いて大三元の1シャンテンになるもそこまで。この局は石橋の1人テンパイで流局する。
その後は松ヶ瀬・石橋とアガり、迎えた東3局。松ヶ瀬は4巡目のカン待ちテンパイを迷うことなく外した。この時点でタンヤオドラ、リーチをかければ5200からのテンパイだが、この手はいろいろな手変わりが見える。たとえば234の三色、ソーズの一気通貫、ドラ引きや3メンチャンテンパイもある。それらの可能性は、先制という理由だけで消すにはあまりに惜しい。
2巡後にを引いて待ちテンパイ。はテンパイ外しの際に石橋に鳴かれているフリテンの牌だが、もちろんこれも織り込み済み、ツモでのハネ満、倍満まで目指したリーチをかける。結果は流局となったが、松ヶ瀬の意志が見えた一局だった。
東3局3本場。前局では石橋がテンパイでつないだ親番で満貫ツモを決め、トップに立っている。松ヶ瀬は第1ツモですでに十分形の1シャンテンとなり、打m。後の待ちの布石にもなりそうだ。
そして狙い通りの待ちテンパイでリーチ。少々時間はかかったものの、リャンカン形が先に埋まってのリーチは好感触だろう。
一方、多井もリーチ後にチートイツドラドラ赤をテンパイ。待ちのは松ヶ瀬の第1打のスジで、やや打たれやすく見える。
だが、次巡の引きで手が止まる。ABEMAプレミアムで見られる「対局の裏側」動画によると、多井はこのがかなり危険だと感じていたという。いわく「松ヶ瀬がよくやるので」。
さらに東4局では待ちで先制リーチ、親の寿人の追撃リーチを受けるもツモって1300-2600、石橋を追い上げていく。
迎えた南4局、松ヶ瀬はトップの石橋から5800点差の2番手。逆転は十分にあり得る点差だ。
だが、先制テンパイは石橋。苦しいカンチャンを引き入れてのピンフテンパイはもちろんダマテン、逃げ切りを図る。
しかし、石橋はなかなか最後の1牌を捉えられない。そうこうしているうちに、松ヶ瀬もを引き入れて広い1シャンテンに。石橋のロン牌も手に留まる形になった。
そこへ、親の寿人がリーチ。やはりこの男は黙ってはいない。
遅れて松ヶ瀬がテンパイし、打。ドラまたぎな上に寿人の無スジ、終盤だけに怖いところだが、ここは勝負してトップをつかみに行った。寿人がリーチしたことで、のどちらでアガっても石橋を逆転できるようになったのも大きい。
石橋と松ヶ瀬、待ちはどちらも。二人の命運を分ける牌は、リーチをかけた寿人の元に訪れた。アガリ牌ではないそれを、寿人は河へ放つことしかできない。