左利きの日、
我慢の東場を乗り越えて
近藤誠一の左腕が
手繰り寄せた勝利
文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2022年2月10日
一般社団法人 日本記念日協会によると、2月10日は「左利きグッズの日」だそうだ。以下は同協会のホームページより引用。
「社会生活で左利きの人が感じているさまざまな道具の使いづらさ。それを解消するための左利き用グッズの普及を目指し、左利きグッズを扱う神奈川県相模原市の菊屋浦上商事株式会社が制定。日付は2月10日を0210として「0(レ)2(フ)10(ト)」と読み、レフト=左の発想から」
https://twitter.com/SEGASAMMY_PNX/status/1491749076760608771
麻雀界でも数多くの左利きの打ち手が活躍しているが、その代表格と言えるのが、大和証券Mリーグ・セガサミーフェニックスの近藤誠一。「左利きグッズの日」だからかどうかは分からないが、この日の2戦目に登場した。
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第2回戦
東家:黒沢咲(TEAM雷電)
南家:勝又健志(EX風林火山)
西家:高宮まり(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
北家:近藤誠一(セガサミーフェニックス)
東場は女性プロ二人のぶつかり合いで進む。まずは黒沢、5巡目でを切っての1シャンテンには取らず、ターツを落とす選択。ドラドラあって打点は十分、愚形リーチも辞さずの打ち手が多そうだが、黒沢にとってはリーチツモタンヤオピンフドラドラの6000オールを引きに行くべき手なのだろう。
カン待ちテンパイを拒否し、たどり着いた待ちリーチは理想形の一つ。これを決めて、まずは大きくリードをしたいところだったが・・・
そこに追い付いたのが、自身3戦連続出場となった高宮。この日の初戦では6万点オーバーの大トップを決めており、赤赤のリャンメン待ちリーチにも、その勢いが感じられる。
ここは高宮の一発ツモで決着。裏ドラこそ乗らないものの、2000-4000のアガリで先手を取る。
しかし黒沢も東3局2本場、高宮のリーチに追っかけて一発ツモ、リーチ一発ツモピンフ赤の2000-4000。東1局のお返しとばかりに高宮に親かぶりをさせて、トップ目に浮上する。
東4局にはあわや役満の場面が。10巡目の勝又の手牌がツモり四暗刻の1シャンテンに。ただ、が既に2枚見えており、成就の可能性は目に見えて低い。
しかし勝又の選択は切り、四暗刻の可能性を残す。ここは本人いわく、「ソーズが近藤さんへの放銃候補になるので、間違いなく通るピンズで手堅くいった」という、攻撃よりも守備を考えた一打だったそうだ。
ちなみに、このときの近藤の手は、をカンチャンでチーして789三色の1シャンテン。はどちらも切っていて現物である。三色を見つつ「ダブを持っているように思わせられれば相手を対応させられるかも」という意図での仕掛け出しだったそうだ。
その選択が、役満テンパイへとつながった。はないが、は黒沢が数巡前に1枚切っているものの、もう1枚は残っている。
今シーズン初役満への期待が高まったが、最後の1枚は黒沢の元に訪れ、これをツモ切り。トイトイ三暗刻で8000の出アガリとなった。ここまでは、トップ目がめまぐるしく入れ替わる一戦となっている。
さて、東場は出番が来ず、4番手で南場を迎えた近藤。それでも、何もしていなかったわけではない。
東2局には、この配牌から第1打。チートイツかホンイツかトイトイか。
そこからソーズピンズの中張牌をバラバラと切っていく。守備的に構えながらマンズのホンイツなどの高打点だけは逃さないように、そして異様な捨て牌で相手にも圧をかけていこうという近藤らしい打ち回しだ。ただ、このような打ち方になるのは、手牌に恵まれていないからとも言える。
そんな近藤に、南1局でようやくそこそこの打点で先制できそうな手が入る。4巡目、1シャンテンで選択。
近藤はを切った。引きはイーペーコーが完成するが、それよりも序盤にして3枚切られているのそば、への感触が上回った。から落としてピンズのリャンメン変化を見切ったのも、を必ず使うという意志の表れである。
次巡にズバリのカン引き、待ちリャンメンテンパイは文句なしのリーチ。
ツモって裏ドラも乗り、リーチツモピンフ赤裏の2000-4000。近藤のこういうスカッとしたアガリは、久しぶりに見た気がする。
近藤は、いったんはトップ目に立ったものの、南3局の勝又への放銃で2番手に後退してオーラスの親番を迎える。しかしそこで、5巡目にドラを縦に重ねての満貫確定リーチ。これまでの苦戦の揺れ戻しが来ているかのような配牌とツモは、まさか「左利きグッズの日」だからということではあるまい。
近藤の左腕はこの待ちをしっかりとツモり、リーチツモドラドラ赤の4000オールは、勝負を決定付ける一撃となった。
近藤はこの試合が1月28日以来の出場。久しぶりに気持ちの良いトップが取れたからかインタビューでも上機嫌、アナウンサーの松本圭世さんをイジって自分で爆笑していた。特に2019シーズンには、こんなシーンをよく見ていた気がする。
熾烈を極める、終盤戦の順位争い。フェニックスとてまだまだ安心できる位置ではないが、大黒柱のこの笑顔が今後も見られるならば、チームも再び上位へと羽ばたいていけるはずだ。