地獄から天国
渋川難波、勝利をつかんだ
決意の愚形リーチ
文・東川亮【代打ライター】2022年11月7日
大和証券Mリーグ2022-23、11月7日の第1試合。
渋川難波は、敗れた。
ボロクソに。
メタメタに。
コテンパンに。
フルボッコに。
完膚なきまでに。
Mリーグの歴史で一番、負けた。
にも関わらず、彼は試合後のインタビューで、笑顔だった。彼は敗北という結果よりも、自分の中で良い麻雀を打てているという感触を見つめていた。これでデビューから7戦トップなし、しかも麻雀人生初とも言える大敗を喫し、悔しくないはずがない。しかし決して落ち込むことなく、ポジティブにインタビューへと臨む姿は、Mリーガーとして本当に立派な姿だったと思う。
サクラナイツの控え室に戻った渋川に対し、森井巧監督は開口一番、「一つだけ聞きましょう」と切り出した。
「この後、連闘していいと言ったら、したいですか?」
本来、この日の2戦目は岡田紗佳が出る予定だったという。だが、チームは急きょオーダーを変更、渋川を送り出すことを決断した。ただ、もちろん最終判断は本人に委ねられる。
「行きたいですか!? 行きたくないですか!?」
岡田の、檄のような問いかけが飛ぶ。
「行きたいですよ、もう1回!」
およそ3時間半の歴代最長ゲーム、歴史的敗戦の直後でも、渋川の心は折れていなかった。
第2試合
東家:丸山奏子(赤坂ドリブンズ)
南家:瀬戸熊直樹(TEAM雷電)
西家:仲林圭(U-NEXT Pirates)
北家:渋川難波(KADOKAWAサクラナイツ)
渋川よ、今回もダメなのか
東2局
渋川は好配牌に恵まれた。ドラのがトイツ、赤も使える、高打点が約束されたかのような牌姿。しばらくは自分の手だけを考えて進めて行きたい・・・と思いたいところだが、親の瀬戸熊がいきなりを鳴いているのが不穏ではある。
それでも、急所のがいきなり埋まったならばまごうことなき勝負手。ドラポンはもちろん、456三色になれば倍満クラスも狙える。
ポンしてテンパイでもそれはそれでOK。初戦で辛酸をなめ尽くした渋川が、ついにここから反撃かと思われたが、
役なし待ちをダマテンにしていた仲林にあっさりとツモられ、渋川の勝負手は幻と消えた。
渋川曰く、「このときの気分は最悪だった」。やはり、今日の渋川はダメなのだろうか。
それでも渋川は、自ら勝利をつかみ取りに行く
続く東3局は、丸山の配牌に赤が3枚とも入った。
この時点で、渋川の手はドラとがトイツではあるものの、まだメンツはない。もう、全然追いついていない。
だが、ここからの引きがすごかった。まずはドラのを暗刻に。
仲林が切ったを仕掛けての後付けに向かうルートもあったがスルー、すると自力で引き入れて1シャンテン。
次巡にテンパイ、迷わずに即リーチをかけた。待ちはカン。
渋川は初戦で、対局者のなかで2番目に多い、6度のリーチをかけていた(それでも12回リーチをかけた黒沢咲の半分だが)。つまり、門前でテンパイまではいけていた。だが、アガれなければ意味がないし、リーチ後にロン牌をつかむことも多々あった。先にを切っている丸山のポンに打点や速度を感じていたそうで、ともすれば頭でリーチすべきと分かっていても、躊躇が生まれていたかもしれない。