圧倒せよ
鈴木優が切り開いた連覇への道筋
文・東川亮【木曜代打ライター】2025年5月15日
朝日新聞Mリーグ2024-25ファイナル。

5月13日の第1試合後、鈴木優は控え室で崩れ落ちていた。
表情は見えないが、悔しさを噛み殺しているのだろうか。
必勝を期した一戦を、回避できたかもしれない放銃で着を落として終わるという、およそ最悪に近い結末。

残り4戦。
逆転優勝を目指すパイレーツは、それでも優を試合に送り出した。
海賊船の切り込み隊長、戦闘民族として、戦って活路を切り開く。
自身を起用した意味は、痛いほど分かっているはずだ。

第1試合
東家:鈴木優(U-NEXT Pirates)
北家:竹内元太(セガサミーフェニックス)

麻雀では時として、突風が吹くことがある。
東1局、それは優の背中を強烈に後押しした。
456三色が見えるなかなかの手が・・・

中張牌のラッシュに赤赤まで捉え、タンヤオピンフ赤赤、高目三色というド級のテンパイとなってリーチ。
ちなみにド級の「ド」とは、イギリス海軍の大型戦艦「ドレッドノート」に由来する。

これぞまさに、大型戦艦の大砲が繰り出す一撃。
リーチツモタンヤオピンフ三色赤赤の8000オールは、パイレーツ奇跡の逆転優勝への号砲だ。

リードを得たのであれば、それを伸ばしたいのはもちろん、しっかりと守り切ることも大事。
東4局、ポンから打点を模索していた太が、ドラ
含みのカンチャンターツを払ってマンズのホンイツに向かう。

太が切ったドラを親の元太がポン。アガリにはまだまだ遠いが、他家から目に見えて満貫以上の打点が確定。

直後、優は手には不要そうに見えるを留め、ターツになっている
を切った。

太がチーして1シャンテンに。これは明らかに、太へのアシストの意識が強い一打だ。
ドラポンの親番元太と、ホンイツとは言え打点が見えない太であれば、太がアガったほうが平均打点も低いし、局も進むのではるかにマシ。そんな太は河からしてマンズのホンイツ模様ということで、手を崩さないまま鳴けそうな牌を切ったのだろう。

太がマンズを余らせたタイミングで、放銃まで面倒を見る筋合いはないとばかりに対応。自分の手が悪いときに、どうなれば自分にとって都合がいいのか。先のことまでしっかりと考えた、シビアな打ち筋だ。


だが、そう思うとおりにばかり進まないのも麻雀。この局は元太と太が満貫でのめくり合いとなり、太が元太に放銃となる。

優としては、優勝のためにはさらなる加点をしながら、ドリブンズとフェニックスの両方を沈めたい。そのチャンスが訪れたのが南場の親番だった。
南1局3本場、トイツでドラ赤のターツもある恵まれた配牌をもらい、速攻の満貫を決めて持ち点を6万点近くまで持っていく。

次局、優は4巡目にターツを壊す切りとした。マンズのカンチャンターツを使った手役は作りにくく、ここは思い切ってソーズに寄せ、打点を作りに行く選択。

テンパイ一番乗りは元太。チートイツの北待ちを、静かにダマテンとする。この局は打点よりも、優の親を蹴ることが重要。

そのを優がチー、いったん役なしテンパイの形にとりつつ、ここからアガリを模索。

を引いてテンパイを崩し、ホンイツの1シャンテンとする。

次巡、優の盲牌が深く、強くなった。明らかに何か感触のある牌を引いている。
