熱論!Mリーグ【FS5日目】
チームの命運がかかる
決死の差し込み!
天才・茅森早香の土壇場力
文・山﨑和也【月曜担当ライター】2020年6月22日
いよいよMリーグも最終盤に入った。今回はファイナルシリーズ10試合目(22日の2試合目)の模様をお送りする。まずは上記の順位を見ていただきたい。フェニックスとABEMASとパイレーツがほぼ横並びの状況だ。もう残りは3試合しかなく、トップを取れば大きく優勝に近づく。この一戦の重要さがわかると思う。
ABEMASは多井が魂の連続登板。1試合目の奮闘の勢いそのままに優勝を狙う。パイレーツは朝倉が出陣。ファイナルシリーズで魅せた大三元のアガりが記憶に新しい。サクラナイツは大逆転を目指してドラフト1位の内川が出場した。
フェニックスはというと、エース魚谷……違う。頼れる男近藤……でもない。
茅森だ。
「おおっ」と思った。正直に書いてしまうと意外だった。
筆者はファイナルシリーズ1日目(15日の1試合目)の観戦記を担当したのだが、その試合でも茅森は出場していた。しかしパイレーツ小林の大トップ、多井の神守備からの倍満が目立って、茅森についてはほとんど触れていなかった。印象があまり残っていなかったのである。あまり実力が出せていないように感じたものだった。
ともあれ、対局が始まった。
東家 朝倉康心(U-NEXT Pirates)
南家 内川幸太郎(KADOKAWAサクラナイツ)
西家 茅森早香(セガサミーフェニックス)
東1局。茅森の手牌を見てみる。ドラが2枚あって索子のホンイツが見える手だ。これはなかなか楽しみが多い。
ゆったりと手を進めてこうなった。茅森はここで切りを選択。ホンイツは見切ってリーチを狙う構えをとった。手の中にドラが赤を含め4枚もあるので、ホンイツにこだわる必要がないと見ている。
その後、を暗槓し、狙い通りにリーチを放った。待ちの両面形に仕上がったのは手応えがあったに違いない。しかし山にはもう無かった。
とそこへ、多井に絶好のカンが埋まってテンパイに。
力強い手つきで追っかけリーチを放つ。待ちは。鉄壁の守備力を誇ることで有名な多井だが、なりふり構わずトップを狙いにいく別の顔もある。ファイナルシリーズならではの多井だ。筆者が同卓していたら漏らしてしまいそうな迫力がある。
筒子対決となった勝負はすぐに着いた。最初のツモで茅森の手にいたのは。
リーチ一発ピンフドラに加え、裏が2枚乗って12000点の放銃となった。
茅森……シーズンの最後までこんな苦しい目に遭うのか。
思わずぎゅっと瞼を閉じた。普段振り込んでもあまり顔に出ない茅森だが、この時ばかりは痛みを覚えたか。仕方がない結果ではあるが、優勝争いの最中でこれは痛い。
東3局1本場。親番で巻き返したい茅森だったが、迎え撃つ3者は猛者ばかり。内川にまずテンパイが入った。ここはを切ってリーチせず。をツモれば両面に変化するので、それを見たのだろう。
朝倉はすでにを鳴いており、三色で茅森の親を流しにかかる。
多井もタンヤオで参戦。をポンして打とした。トップ目とはいえ緩まずに攻めかかる。
これを見て内川は次巡でをツモ切りリーチ。手替わりをした際に萬子を打ってしまうのであれば、もうリーチに踏み切ったほうがいいという判断か。多井も前に出てきてくれたので放銃の可能性も上がっている。
出遅れていた茅森。是が非でも死守したい親番だったが、この手格好ではまだ向かいづらい。
テンパイの朝倉は通っていないを持ってきた。
すると「ここからいろんな推理が入るんすよ」と解説の渋川難波プロの声が弾む。
少考の末ツモ切り。
「これ押したじゃないすか。『でヤミテンにする人いる?』っていう推理なんですよ」(渋川プロ)
ははあ、なるほど。これは勉強になる考え方だ。