恐怖を乗り越え、前を向こう
黒沢咲・殊勲の1勝
文・東川亮【月曜代打ライター】2025年4月28日

黒沢咲の悔恨。

朝日新聞Mリーグ2024-25セミファイナル、4月24日の第1試合。黒沢咲はテンパイするをツモ切った。過集中によりマンズを実際と違う形と思い込んでいたのが原因だという。
いわゆるヒューマンエラー、内容は違えど、長く麻雀を打っていれば誰もがやらかすようなことではある。
結果も、もしかしたら一緒だったかもしれない。
けれどもミスはミスであり、しかもチームがファイナル進出を争う正念場でやってしまった事実は、彼女に重くのしかかる。
どれだけファンがなぐさめ励まそうとも、それだけで心の痛みがなくなることはないだろう。

それを払拭できるのは、自分しかいない。
黒沢は再び、勝負の卓へと向かった。

第1試合
南家:高宮まり (KONAMI麻雀格闘倶楽部)
西家:醍醐大(セガサミーフェニックス)
■何があっても、黒沢咲は変わらない

前回対局時、黒沢のリーチ回数はわずか1回に終わっている。鳴きをあまり使わず門前進行の多い打ち手であり、リーチ回数はある意味で黒沢の調子のバロメーターと言えるかもしれない。
東2局、醍醐の先制リーチに対し、1シャンテンからワンチャンスのを押す。ドラ赤がかなり見えていて、自分はタンヤオ赤赤。比較的勝負には行きやすい。

こだわって残していたに
がくっ付いてテンパイ。
ダマテン5200、ツモって満貫だからとおとなしくしている打ち手ではない。リーチをかけて高打点でのアガリを狙う、黒沢らしいリーチ。

醍醐にツモられはしたが、リーチがぶつかって全勝はあり得ない。それよりも、黒沢がしっかりと卓に向き合って打てていることが大事。

東3局。
黒沢の手は1シャンテンとなり、先切りの3メンチャン固定などはせず、
を切って目いっぱいの形に。先切りは後に危険となる牌を切る、リーチ後の出アガリ率アップを狙うなどの効果があるが、黒沢の麻雀は「リーチしてツモる」のがベース。速度も1番手なら、ここはマックスに受ける。

を暗刻にしてテンパイ、
待ちはもちろんリーチ。

悠然とをツモって2000-4000。
打点は変わらないが、裏ドラも乗せている。
大丈夫、これがいつもの黒沢咲だ。

南1局には、1シャンテンからピンズを伸ばして3メンチャンのリーチ。

これが思いの他相手に持たれていて、山には安目のが残り1枚のみ。
それでも・・・

「ツモ」
1枚あれば、ツモれる。

リーチツモピンフ赤ドラ、そこに裏ドラを1枚乗せれば、打点も変わらない。
優雅に高打点の手をツモアガる、まさに「セレブ麻雀」と言えるアガリで、黒沢が一気にトップ目へと突きぬける。

終局まで、あと3局。
黒沢はちらりと、相手を見やった。
■高宮まりは最悪のなかで最善を目指す

視線の先には、高宮まり。
KONAMI麻雀格闘倶楽部にとって、雷電とトップラスを決められるのは考え得る最悪のシナリオである。