熱論!Mリーグ【Mon】
プロの思考と凄味を
瞬時に体感させる
勝又健志の「例えば〜解説」
文・山﨑和也【月曜担当ライター】2019年12月2日
高野「あっ、編集長!仕事中に麻雀動画見てるんですか!」
遠山「わっ、新人の高野君か。見つかっちゃった。せっかくミュートで楽しんでいたのに」
高野「ミュートだと聞こえないし、つまらなくないですか?」
遠山「いやいや、十分楽しめるし、このほうが集中して見れるんだよね。この前そんなこと言ったらとある後輩にボコボコにされちゃったけど……」
高野「……」
以前、筆者は日吉辰哉プロの実況について書いたことがある。(詳しくはこちら)
実況には解説が付き物だ。一打一打目まぐるしく動く展開の中、選手たちの思考を読み解いていくのはかなり大変なことだと思う。それなのにあまりスポットが当たらないのは可哀想。今回は実況の続編で、解説者の凄さについて取り上げてみたい。
今回の主役はこの方。EX風林火山・勝又健志プロである。「麻雀IQ220」という異名はダテではない。広い視野で状況を把握し、瞬時に解説をする様は同じ人間とは思えないほど。実況は親の顔よりも見慣れた小林未沙アナ。
1戦目の模様をピックアップしてお送りする。
南家 石橋伸洋(U-NEXTパイレーツ)
西家 魚谷侑未(セガサミーフェニックス)
南1局。パイレーツ石橋の手に注目。
勝又プロ「石橋さんはダブトイツ。もしかしたらとかとかポンしていく手も考えられそうです。石橋さんだったらポンするんですかね」
小林アナ「チートイツを見る人もいそうですけど」
勝又プロ「もちろんいますよね」
3巡目にをポン。石橋はここで打とした。両面を外すので抵抗がある人もいるかもしれない。
を持ってきて打。
勝又プロ「両面払いを見せましたね」
小林アナ「対戦者としては怖いですか?」
勝又プロ「んー両面ターツがあるのにポンから入ったということは、やっぱりそのが面子として必要な形なのかと。じゃなくてが面子で必要ということは、まずドラが固まっている否定から入りますね。
小林アナ「が固まっていない」
勝又プロ「ドラが固まっているのであれば、をポンしてトイトイにいくよりも、両面を生かして4面子1雀頭を作りにいこうと考えたいじゃないですか。なのでをポンする必要がある、ホンイツだとか、トイトイだとか、チャンタだとかそういう手から考えますよね」
小林アナ「確かにドラいっぱい持っていたら両面生かしてリーチ打ちたいですもんね」
文字に起こしてみるとよりわかりやすい。Мリーガーたちは何気なく打っているようで瞬時にそういった思考をしているのである。地味ながら小林アナの返しも秀逸。解説者の話をかみ砕いてまとめている。
を鳴いて打。3フーロもしたのに手牌はバラバラ。果たして大丈夫なのか。
小林アナ「石橋さんは『黒いデジタル』なんて言われますけど今回も罠を張っていますか」
勝又プロ「そうですね。先切りがちょっとポイントで、相手からしたら、2巡目にを切って両面ターツを残したけど、やっぱりポンをしてホンイツに行くということは、ある程度整っているんじゃないかと。実際はを持っておきたいくらいの手なんですけど、読みを外している部分はあると思います」
なるほど。先切りという罠を張っていた。これによって周りは「テンパイかも」とイメージしてしまい、強く攻めることができないのである。
しかし、そう解説通りにすべていかないのが麻雀の面白いところである。4人もいるんだもの。考え方はそれぞれだ。親で上家の麻雀格闘倶楽部・前原はここで打。その前にはも切っていて、石橋をノーケアである。この強気な姿勢を見てか、サクラナイツ・沢崎がテンパイを外して回るという連鎖が起こる。
石橋は最終的に待ちのテンパイに仕上がった。
前原もを引いてテンパイ。ただしを切っているので、フリテンを嫌うならば打としなければならない。
前原の選択は打で待ちのフリテン三面張リーチ。フェニックス・魚谷と沢崎にとってはたまったもんじゃない。索子をケアしていたところに親からのリーチでは困った。
捕まったのは沢崎。を切ったのだが、これが石橋の跳満のアガりとなった。一体どうしてしまったのか。
勝又プロ「あーそうか親リーチの現物でいったんですね」
小林アナ「まさか石橋対策をしていたら前原がここまで押してくるとはと」
勝又プロ「そうですね。しかも前原さんが押したに石橋のチーやポンが入っていなかったんで、当たりづらいは当たりづらいですね」
解説を聞いてみると、放銃にもちゃんとした理由があったことがわかる。沢崎はほかに安牌がなかったのも痛かったようだ。
リーチがかかった瞬間、石橋も「おっ」と手応えを感じていただろう。心境を想像してみたいところだ。そういった視点ができると、Мリーグがさらに面白くなる。それを補助してくれるのが解説者なのだ。