それは勇気か、それとも無謀か
鈴木優の胸に刻まれた悔恨
文・東川亮【火曜担当ライター】2025年5月13日
朝日新聞Mリーグ2024-25ファイナル、5月13日の試合前。
初戦に臨むことが発表された鈴木優が、Xに一つのポストを投稿した。
どうしても勝ちたい時、どれだけ勝ちたい気持ちが大きくても無慈悲なのが麻雀だけど、今日だけは負けたらそのまま二度と牌を握れない覚悟で打ちます。
いただいた昨日のリベンジの機会を大切に先発行ってきます!Piratesが一番強い!! https://t.co/nxUpqipukz— 鈴木優 (@yu_suzuki_ABC) May 13, 2025
「二度と牌を握れない覚悟」
もちろん、麻雀はどんな強者でも必勝などあり得ないのは分かっている。その上で、優はこの一戦に懸ける思いを、あえて強い言葉で表現した。

第1試合
東家:鈴木優(U-NEXT Pirates)
西家:醍醐大(セガサミーフェニックス)

無論、覚悟を決めてこの試合に臨んでいるのは優だけではない。
南2局、醍醐は2枚切れのペン待ちでリーチに打って出た。通常、醍醐はいわゆる「一か八か」という打ち方をしないタイプで、このリーチ判断は意外に見える。

しかし同卓している3人には、醍醐の手の内は分からない。そして、その影響を最も受けるのが園田だ。
トップ目の親番で、チームは首位、リーチをしているのは眼下のライバル・フェニックスの醍醐。行きにくい条件はそろっている。

園田の手はカン待ち、そこに持って来た
は、字牌で当たるパターンが少ないとは言え、放銃したときはダブ
が濃厚、しかも一発も絡んで満貫からという大物手。

園田はを抜いて受けた。そもそも、醍醐のリーチ宣言牌
を鳴いての待ち変えもあったが、それをしていない。園田は徹底してリスクを回避する選択をした。

それは、醍醐の狙っていたことでもある。園田の手を曲げさせたことで、醍醐がつかんだも放銃にはならなかった。もちろんアガれるに越したことはないが、アガれなくとも失点を回避する、対人駆け引きも含めた超戦略的リーチ。醍醐はこれで、失点を回避すると共にテンパイ料をせしめることになる。

ただ、醍醐の加点は3000点ではなく1500点。優がギリギリで形式テンパイを取っていた。優もリーチに対応しながら、わずかな加点ルートを逃さない。何としてもこの試合でトップを取る、そんな決意が生んだ粘りだ。

南3局2本場では、優にツモり四暗刻の1シャンテンという大物手が入る。

とはいえ、1シャンテンとテンパイでは雲泥の差。萩原から切られたをポンしてテンパイ。

次巡に下家の園田がを引いており、鳴いていなければ四暗刻テンパイだったが・・・

それでもアガれたかどうかは分からないし、鳴いたルートの先でトイトイ三暗刻の満貫をツモで仕留める。

供託も回収し、優は園田と200点差まで迫って、オーラスを迎えた。

南4局、先手を取ったのは醍醐。トップまでハネ満ツモが必要な状況で、赤赤のチートイツテンパイが入る。ドラ待ちにすれば、ダマテンでもツモでトップ。

しかし醍醐の選択は、ドラを切っての待ちリーチだった。

場の状況を見ると、園田が早々にマンズの下を切っていて、優も複数は持っていなさそう、と考えると、確かに待ちは山に残っている可能性が高く見える。そしてトップが欲しい優と萩原からは、ドラであっても打たれる可能性が高い。

「ツモりにいくなら、出アガリなら
」
試合後の、醍醐の弁。そして醍醐が欲しいのは、ツモっての逆転トップ。
それが、ドラ切りリーチの真意だった。
そして、と
はいずれも2枚山に残っていたが、
は2枚とも脇に流れた。正しいかどうかではなく結果論だけで言えば、
よりも
待ちにした醍醐の選択は合っていた。
