後方一気のハナ差決着!
魚谷侑未、
わずかな勝機を逃さぬ
我慢と決断
文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2021年12月20日
Mリーガーが強い。
ここ1ヵ月ほどの間に、小林剛が自団体・麻将連合の最高タイトル「将王」を獲得し、瀬戸熊直樹が麻雀最強戦で初優勝、「最強位」となった。またMリーガーではないが、Mリーグ公式解説者の渋川難波が日本プロ麻雀協会の頂点「雀王」を獲得。もちろんMリーガー以外にも強い麻雀プロはたくさんいるのだが、やはり彼らが麻雀界でトップクラスの実力者であることは間違いない。
第16期女流桜花は魚谷侑未!!
9年振り3度目の頂点に立ちました!
優勝 魚谷侑未
2位 仲田加南
3位 川原舞子
4位 内田美乃里 pic.twitter.com/swkAlZkOQX— 日本プロ麻雀連盟 (@JPML0306) December 17, 2021
第1期鸞和戦優勝は魚谷侑未!!
女流桜花に続き3日間で2冠の快挙達成!!
優勝 魚谷侑未
2位 猿川真寿
3位 紺野真太郎
4位 柴田吉和 pic.twitter.com/VH73ZRFknE— 日本プロ麻雀連盟 (@JPML0306) December 19, 2021
そして先週に偉業を成したのが、大和証券Mリーグ・12月20日の第1試合に登場した魚谷侑未である。彼女は先週、日本プロ麻雀連盟の女性プロの最高峰「女流桜花」、今年新設された男女混合タイトル「鸞和戦(らんわせん)」と、2つのタイトル戦で立て続けに優勝した。勢いで配牌やツモが変わることはないはずだが、チームもここまで20戦連続ラスなしでプラス域まであと少し、この日対局する4選手のなかで、最も充実した状態で対局に臨めたのではないだろうか。
第1試合
東家:魚谷侑未(セガサミーフェニックス)
南家:堀慎吾(KADOKAWAサクラナイツ)
西家:石橋伸洋(U-NEXT Pirates)
北家:鈴木たろう(赤坂ドリブンズ)
序盤はたろうの小さなアガリで局が進み、迎えた東3局。堀が自風のに続いて、と立て続けにポンして役役ドラ赤の満貫をテンパイ。
リャンメン待ち手変わりを経て、・と立て続けに加カン。も山に残っており、役満よりも出現率が低い「三カンツ」の期待が高まった。もちろん、過去にMリーグでの出現はない。もちろん、堀としてはそれよりも目の前の満貫が欲しかったはずだが。
三カンツはならず、堀の一人テンパイで流局。ここから試合は、高打点飛び交う乱打戦へと変貌していく。
東4局は石橋がたろうの親リーチにドラ単騎で押し切ってホンイツドラドラの2000-4000。
南1局は堀の待ち、高目なら三色というリーチに対し、安全牌のない石橋がタンヤオで前に出てで飛び込み、8000を放銃。
南2局はたろうがフリテン待ちリーチをなんと一発でツモ、ピンフドラ赤裏で3000-6000。3者が満貫、ハネ満級のアガリを決めて、試合は終盤へと向かう。
派手なアガリが飛び交う中、魚谷はアガリも放銃もないまま、4番手に後退していた。アガれそうな手が入りながらも、相手に先手を取られて守備にまわらされる、我慢の展開。だが、その目は全く諦めていない。
南3局、打点の見える1シャンテン。門前で仕上がれば満貫・ハネ満も期待できるが、ここでの1000-2000ツモ、あるいは出アガリ5200も、次局に満貫ツモでの逆転トップ条件を残せる。
13巡目にチーしてテンパイ。このとき、魚谷はをフーロしたメンツで使わず、手の内に留めた。点数状況を見ると、魚谷は1000点のアガリでも石橋をかわして3番手でオーラスを迎えられる。安い仕掛けもあり得る局面だけに、あえて他者から打点を隠すことで、少しでもアガリやすさを高めた形か。ソーズをそこそこ切っていてホンイツもなさそう、ドラもオタ風の字牌で、タンヤオ仕掛けに打点があるケースは少々考えにくい。
そんな魚谷の手になんと3枚目の赤牌、が訪れ、打点が満貫になった。レアケースではあるが、他3者からすれば、ここへの放銃は激痛。
待ちのカンは山に残り1枚。それをつかんでしまったのが、タンヤオ三色をダマテンにしていた石橋だった。
魚谷はこのアガリで8000点を加点。これで堀との点差を700、たろうとの点差を8900まで詰めた。
オーラス、魚谷の手は比較的軽いが、タンヤオもドラもなく、打点は見えない。4巡目にカンを埋めると、三色の種になるを切ってアガリへと真っすぐ向かっていく。ピンフのみの1000点でも2番手に上がって試合を終えられるため、アガリそのものの価値が大きい。
11巡目に待ちのピンフテンパイとなるが、ダマテン。このままではリーチしてツモっても、もう2翻つけなければトップまでは届かない。そこでリスクを負うよりは目先の2着を確実に狙う方がいい。ドラやを引いての打点アップだってある。
そこへ、堀が追い付く。リーチ赤1、ツモって一発か裏が乗れば逆転トップ。だが、リーチ棒1000点を出せば、いったん3番手に後退する。
流局となればたろうがノーテン宣言でトップを確定させることが濃厚、そのときに魚谷がテンパイしていれば、そのまま3番手で試合が終わってしまう。巡目も深く、難しい判断が求められる。
堀の決断はリーチ。もちろん脇から出てもアガるだろうが、狙うはツモアガリでのトップだ。
2巡後、魚谷が引いたのはドラの。これで、魚谷がトップを狙う現実的な条件が整ったと言っていい。状況を整理しよう。
・自身の手がピンフのみからピンフドラ1にパワーアップ、リーチをかければ3900で、一発や裏が一つ絡むだけで打点が8000になる
・堀のリーチによって供託1000点がアガリに加わったことで、8900点差のたろうを逆転する条件が満貫ツモから満貫出アガリに緩和された
・リーチの堀は、アガリ牌以外は何でもツモ切る
・自身の待ちは堀のリーチに通っておらず、他者から切られやすい牌でもない
・放銃はもちろん、オリてもツモられても3着で試合終了、2着キープのためにはダマテンでも押し切るしかない