4選手の深い読みと甘えぬ選択、勇気の決断が 今シーズン屈指の名勝負を生んだ【Mリーグ2021観戦記1/7】担当記者:東川亮

4選手の深い読みと
甘えぬ選択
勇気の決断が
今シーズン屈指の
名勝負を生んだ

文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2022年1月7日

大和証券Mリーグ、1月6日の第2試合は、各者の持ち点25000が上下10000点と動かず推移する接戦となった。14局中流局5回、放銃がわずか2回という緊迫した試合は、4選手の深い思考から繰り出される一打によって、格別に面白いものとなった。

今回の観戦記では、選手たちの驚くような選択について触れていく。だいぶボリュームが多いが、ぜひ最後までお付き合いいただきたい。

第2回戦
東家:堀慎吾(KADOKAWAサクラナイツ)
南家:瑞原明奈U-NEXT Pirates
西家:黒沢咲TEAM雷電
北家:滝沢和典(KONAMI麻雀格闘倶楽部)

東1局2本場
【發】【中】トイツの配牌をもらった黒沢が、道中でさらに【白】【發】と引く。こうなると役満・大三元を見たくなるが、【中】はドラ表示牌に1枚めくれている。通常よりは達成しにくい状況ではあるものの、この時点で【白】は2枚、【中】は1枚山に残っていた。

同巡、トイツ手に向かっていた滝沢が【4ソウ】に続けて【西】を暗刻に。こちらは四暗刻が見える。

ただ、アガれるかどうか分からない四暗刻よりは、目の前のアガリが大事。【8ピン】をポンしてトイトイのテンパイを取る。

【8ピン】を切った堀が、直後にテンパイ。【3ピン】【6ピン】待ちではなく、ドラの【白】単騎でリーチをかけた。簡単に打たれる牌ではないが、アガれたときの打点がリーチピンフとリーチドラドラでは段違いだ。【白】は山に2枚。

そのうちの1枚が、黒沢の元に訪れた。【白】が1枚、【中】も1枚。つまり、黒沢が【白】を引ければ大三元まであるのだ。たとえそこまで行かずとも、アガれたときは小三元ドラドラのハネ満以上が確定する。

14巡目、【南】引き。リーチの堀の現物であり、大三元に向かうならまったくもって不要だが、ここで黒沢は手を止めた。このときの視点を平面図で見てみよう。

河の牌は白色が手出し、黄色がツモ切り。瑞原は堀の【6ピン】切りリーチに対して現物のトイツ落としをしており、かなり受け気味の進行。一方の滝沢は、堀のリーチ以降、【6ソウ】【8ソウ】【發】と、全く通っていない牌をツモ切り続けている。終盤に差し掛かろうかという巡目でこの打牌は、相当にテンパイしていそうだ。また、滝沢は【4マン】【5マン】のリャンメンターツを外した後に【8ピン】をポンしている。序盤の捨て牌からタンヤオでもなさそう、となると、手役はトイツ手がかなり想定される。となると、1枚切れの現物【南】とて滝沢には安全とは言えない。

黒沢の手は役満が見えるとはいえ2シャンテン。また、滝沢の押しから「ドラがトイツで入っているかもしれない」と思っていたという。

もしそうなら、この役満は成就しない。黒沢は【發】に手をかけ、役満を見切った。チームが苦しく、トップが欲しい状況とは言え、打てないと思えば甘えた打牌はしない。

甘えないのはこちらも同じ。【赤5ピン】まで押した滝沢だったが、ドラ【白】は止めた。ここまで押したから最後まで、というのは、リスクから目を背ける行為でしかない。この局は堀の一人テンパイで流局した。

東2局、黒沢の先制リーチが入る。【5ソウ】【8ソウ】【7ソウ】待ちの3メンチャン、打点もそこそこ。

直後、堀がテンパイ。瑞原が宣言牌【8マン】をポンしていて、一発は消えている。ドラ1リャンメン待ち、追っかけもありそうだったが・・・

さも当然といわんばかりの【9ピン】切り。【7ソウ】勝負による黒沢への放銃を回避する。

遅れて滝沢がテンパイ。ここで、赤【赤5ソウ】切りのリーチも考えたという。前巡、堀は少考から【北】切り。滝沢はこれをトイツ落としだと看破していた。つまり、もう1枚の【北】を一発で討ち取れる公算が高い、ということだ。

だが、そもそも【赤5ソウ】が黒沢に通る保証がないし、当たったときのダメージが大きい。ここは自重し、【北】を合わせた。

ここは親でドラ3の瑞原がソーズ【5ソウ】【7ソウ】【8ソウ】から【8ソウ】で放銃。黒沢が3900のアガリをものにする。

東4局、瑞原の配牌。孤立の【西】【中】はいずれも役牌、重ねるためにいったん【9マン】などから切る打ち手が多いかもしれない。

瑞原は【中】から切った。重ねて仕掛けるというより、【4マン】にドラ【3マン】をくっつけるなど、リーチを主眼に置いた一打に見える。

これが功を奏し、【9マン】を暗刻にしてリーチ。

ツモってリーチツモ三暗刻赤の2000-4000、失点をすぐに取り戻した。第1打の選択によって、結果が大きく変わりそうな1局だった。

瑞原は南1局でもリーチツモピンフ赤ドラ、連続での2000-4000のアガリを決め、一気にトップまで浮上。試合の主導権を握る。

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