瑞原明奈、笑顔の内に秘めたゴリラハートはヘラクレスをも退ける【Mリーグ2024-25観戦記 10/1】担当記者 #東川亮

瑞原明奈、笑顔の内に秘めたゴリラハートは

ヘラクレスをも退ける

文・東川亮【火曜担当ライター】2024年10月1日

第1試合

東家:瑞原明奈(U-NEXT Pirates)

南家:松ヶ瀬隆弥 (EX風林火山)

西家:浅井堂岐 (セガサミーフェニックス)

北家:松本吉弘(渋谷ABEMAS)

 

大和証券Mリーグ2024-25、月が変わって10月の初戦。

試合の中心となったのは、これが麻雀プロキャリアでも初対戦という、瑞原明奈浅井堂岐だった。

まずぶつかったのは東2局1本場。

堂岐が自風の【南】に続いて【中】をポン、手の内はまだバラバラだが、

ここからあえてマンズのターツを払っていく。

役牌を2つ仕掛けてカンチャンターツを嫌い、自身では1枚もピンズを切っていない。あえてホンイツを匂わせる捨て牌にすることで相手に真っすぐ打たせず、自分の手の形が整う時間を作る作戦だ。

だが、これに対して【白】を仕掛けてテンパイを入れていた瑞原が、ドラ【9ピン】まで押してアガリを取りに行く。堂岐はターツ払い以降、手出しは【發】を切っただけ。もちろんそこでテンパイした可能性はあるが、ピンズが余っていないということで、勇気を持って前に出た。

打点こそ300-500と小さいが、勝負と見れば日和らず押し切る、瑞原らしさの出た力強いアガリだ。

ただ、この男も黙ってはいない。浅井堂岐、二つ名は「逆襲のヘラクレス」。これは、彼がMリーグに至るまでのキャリアはもちろん、「後方から高い手を作って押し返す」と本人が語る麻雀のスタイルにもなぞらえたものだろう。

「これまでの選手たちが築いてきたセガサミーフェニックスに恥じないように」浅井堂岐

 

東3局は、そんな堂岐らしさが出た局となる。松本の先制リーチに対し、打点のない1シャンテンでは親といえども真っ向からは応戦せず、いったんは現物の雀頭【1マン】を抜いて受けにまわる。

しかし、そのあとに【發】を立て続けに2枚引き、鳴きも使える1シャンテンになると、ここはリーチ宣言牌のまたぎである【8ソウ】をプッシュ。

【6ソウ】も押すと、何と松本のリーチ後に【發】を暗刻にしてテンパイ、ここはリーチでしっかりとぶつけていく。なお、【3ソウ】ではなく【6ソウ】を切ったのは、【3ソウ】のほうが当たるパターンがわずかに多かったから、ということだ。

リーチ対決は、待ちが山から消えた松本が【6マン】をつかんで放銃。

そして裏裏。

後手からの押し返して見事に高打点を決めた堂岐が、一気にトップ目へと躍り出た。

その後、堂岐は放銃なく小さなアガリで局を進め、南4局をトップ目で迎えた。だが、0本場では親の松本がリーチをかけて一人テンパイの流局となり、供託を合わせると、瑞原は満貫をどこから出アガっても堂岐を逆転する。

満貫条件の瑞原、1巡目の段階では満貫など影も形も見えないが・・・

麻雀はツモさえ利けば・・・

どうにでもなる。赤やドラ周りを引き入れて、ドラのカン【3ソウ】待ちテンパイを入れ、ここはダマテンとする。

想像以上に手が育った形だが、瑞原はただ手なりで打っていたわけではない。4巡目、【6ピン】を引いたところで少考し、一応ターツになってはいる【8マン】切り。【5マン】【5マン】【6マン】の部分はメンツひとつとして計算、ピンフ形を作ることを意識した進行で、字牌を切らないのは相手への絞りや親の攻撃への備えなどの意味もあったか。つい目いっぱいに構えたくなる状況ではあるが、しっかりと条件を踏まえた最終形をイメージし、それにそぐわない部分をそぎ落とした一打に見えた。

そしてダマテンは、さらなる変化を見据えてのこと。そのなかでも、【8ソウ】引きはアガリ牌【3ソウ】の次にうれしい牌だ。【3ソウ】【6ソウ】【9ソウ】待ちで、【6ソウ】【9ソウ】ならピンフ赤赤に456三色がついて満貫、三色にならない【3ソウ】はドラなのでピンフドラ赤赤でこちらも満貫、いずれにしてもダマテンで条件クリアだ。このとき、親の松本にも【3ソウ】【6ソウ】待ちテンパイが入っていたが、瑞原のほうが格上。

最後は瑞原しかアガれない【9ソウ】が松本からツモ切られ、

瑞原が満貫を出アガリ、供託と本場で浅井をかわし、見事に逆転トップを獲得してみせた。

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