プレミアムナイト主役の一人
堀慎吾が手牌を伏せた理由
文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2022年3月31日
3月31日、「Mリーグ2021プレミアムナイト」が開催された。およそ2年ぶりとなる。大規模会場でのパブリックビューイングは、各チームのファンが集まって選手たちを熱く応援する、「見る雀」の究極の形とも言えるイベントだ。また、試合がないチームの選手も会場に来てファンサービスやトークを行ってくれるので、どのチームのファンでも楽しめるものとなっている。
新型コロナウイルス感染症の流行によって、大人数が集まることが難しい時期が2年以上続いている。今回も感染症対策を徹底しての開催となったが、早くコロナ禍が終息し、かつてのように大きな声を出して選手の打牌に熱狂できる日々が戻ってくることを、願ってやまない。
多くの人たちの注目が集まる特別な舞台で、自分の麻雀で観衆・視聴者を驚かせ、うならせ、喜ばせ、そして勝ちたい。それはMリーガーにとって、ごく自然な感情。猛者がそろったプレミアムナイト第2試合の闘牌を、会場の様子を交えてお届けする。
第2回戦
東家:茅森早香(セガサミーフェニックス)
南家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
西家:堀慎吾(KADOKAWAサクラナイツ)
北家:多井隆晴(渋谷ABEMAS)
冒頭、いつも以上にゆっくりと、気合いの表情で入場してきた多井隆晴。この男がまず魅せる。
東1局、2巡目で早くもを切り出し、一気にホンイツへと寄せる。
ポン、チーと仕掛けてテンパイ。カン待ちか、とのシャンポン待ちか。
多井の選択はカン待ち。ドラを残すことで満貫が確定する、後の変化が期待できる、現状のアガリやすさでもが出ないならカン待ちの方が優秀と、さまざまな条件がそろった。
きっちりツモって2000-4000。こういうところを、多井は本当に間違えない。
東2局、寿人がチーから動き出す。こちらもホンイツ模様、とにかくダブがほしい。
そこへ多井がを引いてくる。目いっぱいに受けるならツモ切りだが、愚形3つ残りは不満も不満。切らずにターツを壊す。
その後、寿人がとのシャンポン待ちテンパイを入れるものの、多井が最後のを回収。1枚目が一番左にあるところに、絶対に切らないという意志が垣間見える。この局はアガリが生まれず、寿人の1人テンパイで流局。
この日、プレミアムナイトの会場では、実況・日吉辰哉、解説・土田浩翔に加え、試合のない4チームの選手1名ずつがプレイヤー解説を担当。第2試合は、本田朋広(TEAM雷電)、村上淳(赤坂ドリブンズ)、二階堂瑠美(EX風林火山)、小林剛(U-NEXT Pirates)がステージで解説を行った。
その小林と土田が称賛していたのが、東2局2本場、多井の3巡目切り。受けは消えるが、を引いたところでそれほど魅力ある手にならないということから、先切りして安全度の高い字牌を残す丁寧な進行だ。
その後、寿人、
そして茅森からリーチが入るが、
多井は安全牌を消費しながら3メンチャンテンパイを入れる。もし下手に受け入れを広げていたら、ここで茅森のリーチドラドラにが捕まる未来もあり得た。
打点こそタンヤオのみの300-500。しかし、2軒リーチに押し返せるようしっかりと手を組み、アガリきれるのが多井隆晴の強さだ。
試合は多井リードのまま、南3局まで進む。ここで親番の堀にドラドラ赤のチャンス手が入る。役はピンフがあるので出アガリでき、打点は十分ということで、ここはダマテン。
そこへ、茅森からリーチがかかる。
直後、堀はを事もなげにツモ切り。しかしこれは、茅森には通っていない。
これを見て、密かにチートイツのテンパイを入れていた多井は撤退。
リーチに押し返していた堀が、終盤に無スジので止まる。
しかしこれも押す。自身の目からドラと赤が全て見えており、牌の切れ具合から三色や一気通貫などの手役も否定されている。仮に茅森に放銃したとしてもおそらく安く、オーラスに現実的なトップ条件を残せると考えたか。
堀は、最終手番で茅森のロン牌を吸収してテンパイを取りきった。もし道中で決め手にしようと追っかけリーチをかけていたら、こので放銃だった。このテンパイノーテンで、多井を逆転する。
さらに次局、うまく親番をつないだ堀が「先手・良形・高打点」の三拍子がそろったピンフ三色確定のリーチをかけ、茅森の追っかけリーチの宣言牌を捉えて12000は12300。堀は次局も加点し、この試合の勝利を決定的なものとした。
南3局3本場、寿人の先制リーチに対し、堀も終盤にピンフドラ赤のテンパイで追い付く。もちろん放銃だけは避けたいので、ここはダマテン。