朝倉康心と本田朋広、苦戦する二人のターニングポイント【Mリーグ2021観戦記11/25】担当記者:東川亮

朝倉康心本田朋広
苦戦する二人の
ターニングポイント

文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2021年11月25日

大和証券Mリーグは、全日程の1/3を消化した。序盤・中盤・終盤と大きく3分割するなら、各チームは11月25日・26日の試合から中盤戦に差し掛かる。

戦いのなかでは、勝者と敗者のコントラストが生まれる。11月25日の第1試合では、伊達朱里紗が個人3連勝を達成。個人表彰3部門全てで首位に立つという快挙を果たした。伊達の活躍もあり、KONAMI麻雀格闘倶楽部は大きくプラスした2位で中盤戦に突入。勝又健志松ヶ瀬隆弥の活躍で首位に立つEX風林火山と共に、リーグを引っ張っている。

一方で、伊達が積み重ねている勝利から、長く遠ざかっている者もいる。この日の第2試合に出場した朝倉康心本田朋広は、11月に入って勝利がない。朝倉は直近3連続4着の大苦戦で序盤に稼いだポイントを溶かし、本田も11月は4戦全て3着。チームも大きくマイナスしているだけに、勝ちたい気持ちはいつも以上に強いだろう。

第2回戦
東家:朝倉康心(U-NEXT Pirates)
南家:本田朋広TEAM雷電
西家:鈴木たろう赤坂ドリブンズ
北家:高宮まりKONAMI麻雀格闘倶楽部

東1局7巡目、本田は1枚目の【白】をスルーした。鳴けば1シャンテンだが2つある愚形ターツのどちらかを切る選択を迫られそう。それに、鳴けばだいたい1000点か2000点になる。それならば・・・

【白】のトイツ落とし。アガリまでは遠回りになるが、ツモに合わせて対応していけるし、うまく門前でまとまれば満貫クラスの打点も狙える。

次巡、本田の思いに呼応するかのような【赤5ソウ】引き。ここまでは理想的な進行だった。

しかしそこから手が進まず、最終盤にチーしてテンパイを入れるのがやっと。序盤に気持ち良くリードを奪うような展開には至らない。

東3局、朝倉は4巡目に打たれた1枚目の【白】にポンの声をかけた。本田とは対照的な軽い仕掛けだが、たとえ1000点でも自分がアガれば親を流せるし、相手の高打点になりそうな手を潰せる。

ただ、それはすぐにアガれた場合だ。今回の朝倉は、2つ仕掛けて早々にテンパイするもアガリまでが遠く、そうしている内に本田、そして親のたろうからリーチを受けてしまう。こうなると、手牌7枚ではオリきるのも難しい。

朝倉がツモ切った【9ピン】は、本田への放銃。ただ、たろうへの一発放銃の牌でもあった。本田の頭ハネ、1300の失点は、むしろラッキーだったと言っていい。

この後、朝倉と本田には一度ずつ、大きなターニングポイントがあった。東4局、朝倉は前局に続き、たろうと本田の2軒リーチを受ける。前に出ようとしていたところでのリーチ、しかも二人の捨て牌が強く、共通の安全牌がなくなった。ここから何を切るか。

ソーズは本田に【4ソウ】が通っているだけ、マンズは【3マン】二人の無スジで【赤5マン】が本田の中スジ、たろうの片スジだが当たれば高い。ピンズも持っている牌はいずれも通っていない。無理やり2人共に通りそうな牌を探すとするなら、【4ピン】のワンチャンス【2ピン】などは候補になったかもしれない。

朝倉は生牌【中】を切った。たろうが【7ピン】トイツ落としリーチでチートイツではなく、リャンメン待ちとすれば【中】は当たらない。また本田もシャンポン待ちや単騎待ちでの追っかけリーチはしないだろう、という読みだろうか。

【中】が通り、次は本田の現物ながらたろうに片スジの【4ソウ】切り。これも通る。

結果は、先制リーチのたろうが追っかけリーチの本田に放銃。待ちは【2ピン】【5ピン】だった。リーチタンヤオピンフ裏の8000、朝倉は、この局面を無失点でしのいだことが大きかった。

南1局
本田は10巡目に【西】を引き、トイツの【6ピン】を切って手牌を2シャンテンに戻した。【西】は直前に切られて誰も声をかけていない安全牌候補、目いっぱいに受けるよりは守備を考えつつピンズの横伸びを狙った形だ。さすがに【4マン】【7マン】受けが埋まっての【6ピン】【9ピン】シャンポン待ちはいい待ちとは言えないし、そこから変化を見ても、最終手出し【6ピン】周りは警戒対象になりそう。そして、マックスで567の三色も見える。

だが、次巡にまさかの【6ピン】引き、【4マン】【7マン】待ちリーチドラ1のテンパイを逃す。

もし真っすぐアガリに向かっていたなら、この【4マン】でツモアガリだった。もちろん、本田の選択が功を奏することもあるわけで、これをミスだと言ってしまうのは結果論でしかない。よりアガリの確率を高め、失点の確率を減らそうとした選択が最悪の結果になってしまうのは、麻雀ではよくあることではある。とはいえ、キツいものはキツい。

全員テンパイで迎えた南1局1本場では、親番を連荘した朝倉がリーチツモ【東】裏の満貫ツモで本田を逆転。その後も巧みなゲームメイクで逃げ切り、久しぶりのトップを獲得した。

本田は2着でこの試合を終えたが、南1局【6ピン】を残していれば、朝倉の親での満貫ツモは本田の親を落とす1000-2000のアガリにしかなっておらず、本田が勝っていた可能性が高い。「あの局をやり直したい」、本田の言葉には、悲痛な響きがあった。

一方の朝倉は、勝ったにもかかわらず甘い打牌があったとし、勝利者インタビューでは反省しきりだった。とは言え、勝って反省できるのはいいことだ。厳しい戦いが続いているパイレーツだが、苦境を脱するにはこの男のさらなる活躍が必要だ。次回はより、すっきりした勝利者インタビューを聞かせてほしいものである。

 

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