4分の3をどう戦うか
白鳥翔、
勝利を手繰り寄せる
盤石のゲームメイク
文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2021年11月29日
麻雀を打つなら、アガって勝ちたいと思うのは誰しも同じだ。ただ、麻雀は4人で行うゲームであり、一人がアガれる確率は単純計算で25パーセント、流局も考えればもっと下回る。現に大和証券Mリーグにおいても、11月29日の時点でアガリ率が25パーセントに達しているのは、堀慎吾(KADOKAWAサクラナイツ)滝沢和典・伊達朱里紗(KONAMI麻雀格闘倶楽部)瑞原明奈(U-NEXT Pirates)の4名しかいない。
つまり、麻雀においては4分の3以上がアガれない局となる。そして強者は、アガリへの手順が巧みなのはもちろん、アガれない4分の3をどう立ち回るかで差をつけているのである。
第1試合
東家:白鳥翔(渋谷ABEMAS)
南家:松ヶ瀬隆弥(EX風林火山)
西家:瀬戸熊直樹(TEAM雷電)
北家:村上淳(赤坂ドリブンズ)
東1局2本場。
村上がをポンしてカン待ち、ホンイツのみのテンパイを入れている。
くっつきの1シャンテンに構えていた白鳥が、ツモで選択。もし村上がマンズの一色手であれば、今のうちにマンズを離してドラ受けの残るを持ちたいところではあった。
しかし白鳥の選択はツモ切り。試合後、が少なくて受けとしてあまり強くないこと、そして仕掛けで前に出て来ている瀬戸熊がドラを固めていると読んでいた、と語った。もしそうなら、ソーズ周りはテンパイしてもやや弱い待ちになる。
読み通り、瀬戸熊の手にはドラが暗刻。読みのピントはバッチリ合っていた。
残しの選択が見事にはまり、引きからリーチをかけてツモアガリ。リーチツモピンフ赤赤裏の6000は6200オール、大物手を決めて一気にリードを広げた。
大量リードを持った白鳥。ここからのゲームメイクが見事だった。
東2局、2番手松ヶ瀬の親番では、ペンターツを払ってまでや松ヶ瀬の現物を残す。都合良く手が進み、先手好形高打点にでもなれば別だろうが、基本は守備を重視した構えだ。
松ヶ瀬連荘で迎えた次局も、2巡目にできたペン受けターツをわざわざ崩す。1巡目に打たれたもポンしていない。先手を取ってアガりきれそうには見えないと判断したか、最初から守備を考えていることが伺える。
南1局、白鳥が切ったを瀬戸熊がポン。瀬戸熊は安い仕掛けをあまり使わない打ち手であり、ここもを切ってトイトイでの満貫を狙う。
白鳥が引いてきたは生牌、トイトイにしろホンイツにしろ、高打点の種になり得る牌である。だが、自身も親番でかなりまとまった形だ。どうする?
白鳥の選択は打、完全に手を崩した。この手は形こそいいが現状たどり着いてもリーチピンフ、それほど高い手にはならなさそう。対して瀬戸熊にもしやが鳴かれれば、8000点クラスの手とめくり合うことになりかねない。そこでもし放銃でもしてしまえば松ヶ瀬との点差が大きく詰まり、トップが危うくなってしまう。形を理由に打ってしまう打ち手も多そうだが、白鳥の見切りは非常にシビアだ。
決着はテンパイの松ヶ瀬が瀬戸熊のトイトイ赤、8000に放銃。2番手から3番手への点数移動で二人がほぼ並びになり、自身のリードは広がるという、白鳥にとって願ってもない展開になる。
勝負どころの南2局、松ヶ瀬の親番では自風がトイツの1シャンテンという僥倖。
すぐに鳴けてアガリ、あっという間に局を進める。
南3局、1シャンテンの白鳥は村上から打たれたをスルーした。鳴けば自風の後付けテンパイ、は既に1枚切れで引けば誰が引いても切りそう、チーならタンヤオと読み違えてくれそうでもある。そして守備としてもかなり優秀な牌になるので、鳴いても良さそうに見えた。だが、それ以上に白鳥はこの状況における守備を考えたのだろう。自分が安い手で前に出ずとも、競っている2番手の松ヶ瀬や大差の4着目とはいえラス親のある村上は、瀬戸熊の親を蹴る意味が白鳥以上に大きい。2人から攻め手が来ることを考えた、守備重視の構えである。
先制リーチは村上、待ち。白鳥としては歓迎すべきものだ。
だが、そこに瀬戸熊も待ちで追いついてリーチ。
2軒リーチになった一発目、二人の現物なら字牌のがあったが、白鳥はドラをツモ切った。こちらも確かに現物ではある。
これに松ヶ瀬が手を止め・・・
出来メンツからチー。明らかな一発消しである。
松ヶ瀬の鳴きで、瀬戸熊はを「つかまされた」。村上への5200放縦。これも理想的な結果となり、白鳥はそのまま勝利を手にした。
https://twitter.com/shibuya_Abemas/status/1465289850991833088